20
師走
向き合う
先刻、心の中のタールと向き合った。
一人では危ないということで、見守りがある中で、安全策を立ててから行った。
広さは、湖ほどある。
そのどろどろの中心に、僕は居た。
ただ、叫ぶ。
出てこいと思いながら、思いきり。
言葉にならない、声だけで。
そうして、僕は再び邂逅した。
「殺してやる」
「助けて」
二つの、声がした。
ひとつは、男性の声。
もうひとつは、子供の声のようだ。
それだけ聞いた時点でタイムアウトになり、僕は帰ってきた──この、世界に。
そうして、二つの言葉を解釈して──
僕は、思っていたより様々な感情が僕の中で入り交じって、紆余曲折を経て僕自身に向いていたことを確認した。
言葉や意思の伝わらなさ、分かちあえなさ、諸々。
そうした感情さえも、混じっていた。
短いのに、長い時間が経過したように感じた。
──タールはまだ、しん、と心の中にある。
呼び起こした時は煮え立っていたが、今は不気味に静かだ。
長い時間がかかるのか、一瞬で開けるのかは、解らない。
解らないけれど、これからも、対話してゆくのだと思う。
自分の中の──鬼のようなものと。
僕はこれらの光景を再びタールの中に戻そうとした。
しかし、タールはそれを許さなかった。
そして、僕自身の心の芯もまた。
だから、今、これを書いている。
──ともあれ。
日々、穏やかで、穏やかでありたいものだ。




