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師走

はじめごろ



げほげほっ、と、今日何回目かの咳をする。

慌てて飲み物を飲むからだ。

僕は物を書く時の気分転換に飲料を摂る。

久しぶりに、毎回慌てて飲んでしまった。

溢れたインクを戻そうとするかのように。


何度も書いては何度も消した。

今日は何故だか、文章がしっくりこない。

そんな時もある、と諦めてしまえばいいのだが、何故かそれが出来ずにいた。


冬は、僕の一つのトラウマと対面する時期──昔、亡き母が大量服薬して昏睡した(その後無事目を覚ましました)時期でもあり、それを思い出すことで、自分自身の大量服薬(体調は崩したが無事)の記憶とも向き合う時期でもある。

母は大量服薬した日、全くそのそぶりを見せなかった。朝から夕方は楽しそうにしていて、夜にいきなり薬を飲んだんだ。

気付いてはいた、母のつらさも、やりきれなさも。だけど、この日まで、気付かないふりをして──

だめだ、これ以上は、語れないや。自伝を読んでみてね(あの時は書けたんだ)。

──そして、僕自身の大量服薬の時だけど、僕は3日3晩飲まず食わずの状態にした後、這うようにして薬を飲んだ。脱水状態のまま飲んだから、身体にも影響が残ったのかもしれない。

飲んだ後眠くなって苦しくなって、ああこれじゃだめだ、と思って救急車を呼んで、這って玄関の扉を開けた。

僕も大量服薬の少し前までは、普通に振る舞っていたよ。


……心って、なんであるんだろう、って、その時思った。

何も感じなければ、良かったのに、って。

だけど、違うんだ。そうじゃないんだ。

心があるから、最後の最後で抑止になったかもしれないし、他の確実な手段じゃなくて大量服薬にしたのかもしれない、最後の最後で電話がかけられたかもしれない。


──冬は、寒いし人恋しくなるね。

あったかい光景を目にすればするほど、心はちくちく痛む。

でも僕は、知っている。

いつかそれが、ちくちくじゃなく、じんわりになることを。

時間は、そうやって人を包むことを。


僕は、毎朝晩、くも膜下で逝った母に、そっと手を合わせている。

「あの時は何も出来なくてごめん」の気持ちも

「大好きだよ」の気持ちも

すべてをこめて。


──僕は、生きるよ。




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