14
十一の月
それから
──昨日、僕は○のうとした。
否、正確には、それをしても○なないことが、解っていた。
しかし、手を伸ばさずにはいられなかった──薬袋に。
ただ、今までと違うのは、そうした衝動の時に手を伸ばすと、「生きていていい」という言葉が頭に、そして心に響くようになったことだ。
昨日もまた、心に響く、あたたかな言葉。
とある物語の、とあるページの情景だ。
──○ねなくなる。必然、生に向かう。
思考と思考がぶつかり合って、視野がチカチカする。
自然と、手は電話を握り、対策を訊いていた。
昨日は普段の薬と頓服薬を早めに飲んで、眠ってしまうことになった。
衝動から逃げることは大切だ。
それで急場は命を守ることができる。
僕はそれを、身をもって知っていた。
布団の中で深呼吸しながら、睡魔が早く来てくれることを願った昨日──それからの、今日。
今日は、不思議と落ち着いていた。
○んでしまいたい気持ちなら、毎日ある。
しかし、生きたい気持ちもまた、毎日あるのだ。
「生きていていい」
何度も、語りかけてくる優しい声のような文字。
ふ、と瞳から光が消えて、大量の薬に手を伸ばせば、その文字が頭に流れ込む。
そして頭から、心にすとんと落ちる。
染み込んで、生きてゆくためのひとしずくになる。
落ち着いてから思い出すのは、大切な人たちの笑顔、友人たちの存在──他にも、様々なこと。
生きていなきゃならない、理由も。
「生きていていい──」
──ああ、だから僕は。
今日は、病院を退院してから毎週来てくれている訪問看護の方の手を借りて、外へ買い物に出た。
澄んだ空気が僕を癒してくれた。
きっと僕には好きなものがたくさんあって。
今はまだ、全て思い出せていないだけかもしれない。
夕方少し過食してしまったが、まあ生きるほうに向いたので良しとしよう。
明日は気をつけよう……。
生と死に揺られる毎日に、いつか終止符を打ちたい。
もちろん、生の方向をラストに。
さあ、今日が終われば明日が来る。
どんな一日になるかは、僕次第だ。




