78 光泰 かりる
二条城が慌ただしくなった。
蘭丸「上様がお呼びで御座います」
光泰「なにが、起きたので御座いますか?」
蘭丸「それは、光泰殿が良くご存知かと」
あ~あ、明智光秀が来ちゃったのね。
僕は信長の居る応接間に入った。
信長「人質をどうするかのう」
えーいきなり、それを言うか。
とぼけてみて様子を見るか。
光泰「人質とは、何方の事で御座いましょうか?」
信長「光泰が、連れてきた兵に決まっておろう」
ん?しまった!
茂兵衛はともかく、何も知らない坂本の人達を人質にされてしまう。
プリンはスルーしよう。
光泰「あの者達に、人質の価値はありませぬよ」
信長「解らぬか?光秀の人質なら、おぬしだけで事足りる。
アレは光泰の人質じゃ」
失敗だ・・連れて来た人達を、
僕が裏切らない為の人質にされてしまった。
光泰「残念ながら、あの者達は昨日集めた者達ばかり、
人質の価値の有るのは、我が寵臣のこの茂兵衛のみで御座います」
茂兵衛「そこまで仰るとは拙者、感無量で御座います」
違うけどね。何も知らない人達を巻き込まない為だからね。
光泰「人質には、茂兵衛を差し出しますので、
他の者には、御慈悲を賜りとう御座います」
茂兵衛「へ?人質とは?」
光泰 「よく聞いて居らなかったのか?
上様が、おぬしを人質にするそうじゃ」
茂兵衛「何故に?」
信長 「なんじゃ、まだ話しておらぬのか」
光泰 「茂兵衛、落ち着いてよく聞け。
上様の御命を狙う賊は、父上じゃ」
茂兵衛「なにを仰られまする、御冗談を」
光泰 「冗談で言えると思うか?」
茂兵衛「真で御座いますか?」
光泰 「困ったのう、まさか父上だったとは、
明智家はもう終わりじゃ」
茂兵衛「アワヮアワワワヮ」
茂兵衛は混乱している。
光泰 「すまぬのう、おぬしだけを人質にすると、
上様に約束してしまった」
信長 「諦めよ(約束しておらぬぞ)」
茂兵衛「逃げましょう」
逃げたいけど、もう無理なんだよ。
光泰 「上様が、早く逃げてくれれば、
こんな事にはならなかったのじゃが、
恨むなら謀反を起こした父上を恨め。
けして、わしを恨むでないぞ」
信長 「わしも恨むでないぞ(無礼な事を言っているが目を瞑るか)」
しかし何故、信長は急いで逃げようとしないのか。
考えられるのは、武田家を滅ぼした事による慢心、
根拠のない自信があるのか?
そういえば、半年前と比べると少し太ったか?
動作も鈍い気がするし・・
もしかして謀反など起こさなくても死期は近いのではないか?
だとしたら、光秀が数年くらい我慢すれば・・・
いや、考えるのはよそう。僕には時間がない。
光泰 「外にいる兵達を、城内に入れても宜しいでしょうか」
信長 「構わぬ」
坂本の人達は、まだ真実を知らずに城外に居る。
今から説明をしなければ成らない。
二条城の中庭に、坂本の人達を囲むように織田の兵が並んでいる。
光泰 「皆に残念な話がある。
我が父である明智光秀が謀反を起こした」
家臣達「「「ザワザワ」」」
光泰 「我々は此れより、父上と袂を分かち、
上様の御身を御守りし、明智家の存続を図る」
子供A「どういう事じゃ?」
子供B「殿様と戦うそうじゃぞ」
子供C「話が違うでは無いか!」
子供D「わし等は若様に騙されたのか?」
子供E「ねぇ手妻は?」
子供F「どうする、逃げるか?」
信長 「だ・・
光泰 「黙れ小童!!(真田丸のセリフ言ってみたかった©室賀)」
ん?信長が何か言いそうだったが無視しよう。
信長 「・・・(おぬしも小童であろう)」
光泰 「これより騒げば、上様に磔、股裂き、水攻め、焼殺され、
髑髏は盃にされると心得よ。
おぬし達は、上様の恐ろしさを良く知っておるであろう」
信長 「・・・(わしの評判悪くないか?)」
光泰 「死んで恨むなら父上を恨め。
くれぐれも、わしを恨むでないぞ」
皆、おとなしくなった。
光泰 「何を落ち込んでおる。
そうじゃ前に教えた歌でも歌っておれ。
気が紛れるであろう」
子供達は皆思った、こんな状況で唄えるかと。
信長 「・・・(唄?後で唄わせるか)」
光泰 「安心致せ、この後わしが父上に説得しに参る。
その間までの心房じゃ」
家臣 「それって、わし等は人質では?」
光泰 「黙れ小童!!」
家臣 「・・・(わしは齢五十を越えているのじゃが)」
光泰 「心配するでない、父上の謀反を止められれば、
明智家は残る、ですよね~上様」
信長 「そうじゃのう考えておこう(こやつ、わしを脅しておるのか?)」
現在、坂本の人と織田信長の兵は、同じくらいだ。
今、僕を敵に回したらどうなるか解っているよね。
光泰 「上様はお優しい人じゃ。失敗しても
皆殺しにはせぬ、せいぜい見せしめの為に
茂兵衛が磔にされるだけじゃ、安心致せ」
家臣 「若様が人質になるのでは、無いのですか?」
光泰 「それでも別に構わぬが、父上の説得しに参れる者が、
他にいるのならのう、おぬしが行くか?」
家臣 「滅相も御座いませぬ」
坂本の人達はおとなしくなった。そして茂兵衛を哀れんだ。
物見兵「御報告!!」
信長 「簡単に申せ」
物見兵「明智兵、本能寺に陣を貼り、此方へ攻め込む準備をしておりまする」
二条城に明智の軍勢が迫っていた。
信長 「是非も無し」
信長は彌助から、弓を受け取った。
秀吉は間に合いそうにない。
もはや、時間の問題だった。
信長と僕の軍勢を併せても、二百人ぐらいしかいない。
とても勝ち目が無い。
茂兵衛「ボス、これからどうなるのでしょう」
茂兵衛は不安そうにしている。
光泰 「大丈夫じゃ」
この手は、使いたく無かったがしかたがない。
光泰 「上様のマントを、お貸しください」
信長 「どうするつもりじゃ」
光泰 「最後の手段に使います」
信長は理解したようだ。
信長 「持ってゆけ」
マントをはおり、僕は明智光秀の居る本能寺に向かった。




