72 光泰 すべる
僕と一緒に、本能寺に向かうメンバーは、
浪士組の 五人、
坂本城の留守居役 五十人、
元服前の侍の子供 十人、
農民や商人の子供 三十人、
動ける年寄り 十二人、
合計 百八人。
坂本城には、
城代代理の 妻木範熈、
女衆のまとめ役の恋人♡ 初菊(お飾り)、
初菊の補佐 森お茂(指示役)、
坂本城に住む侍の奥さん 約 百人(全員ではない)、
小さい子供、 約五十人、
長期に家を留守に出来ない人は、交代で城に泊まりこむそうだ。
坂本城は任せても大丈夫だろう。
問題は本能寺メンバーだが、浪士組は僕のそばに置き、先頭を任せる。
その次に子供達が続き、一番後ろに大人達が続く。
僕は新愛馬、脚路風に乗っている。
他の者達はみんな歩きだ。なんだか僕だけ楽して申し訳ない。
装備品は飾りの無い兜 (銘、地獄滅頭)、
沢山練習したクロスボウ (銘、十次郎の十字弓)、
迷彩柄の胴服(陣羽織) (銘、免采羽織)
スコップ型の盾(銘、守弧風)は、重たいので置いてきた。
ちなみに、これら一式をまとめて、光秀の野望withパワーダウンキットと呼ぶ。
(注:誰にも教えていない)
光泰 「歩く速度は、子供達に合わせてゆっくりに」
柳田 「急がなくてよろしいので?」
光泰 「問題ない、急いでも無意味じゃ」
佐野 「我々は何をすれば宜しいのでしょうか?」
光泰 「まずは、京の明智屋敷に着いてからじゃ。
手妻に使うはずじゃった旗が置いて有る故、それを利用する」
柳田 「旗で御座いますか?」
光泰 「目印に使う予定じゃったのだがのう」
勿論、嘘である。旗は事前に、焼き物屋店主に頼んでおいた物である。
今までに、様々な作戦を実行している。
作戦は全部で六つ。
第一の謀略は名付けて、羽柴秀吉超早くない作戦。
権兵衛君に届けるように渡した、小豆袋を見れば
織田信長が危ないと気づくはずだ。
羽柴軍がもう来ていれば、謀反は失敗。
僕は明智光秀に、降伏するよう説得に行く。
上手くいけば、明智光秀は許され元通りに成るかもしれない。
松永久秀が、三回も裏切っているのだから、二回までは許されるはずだ。
羽柴秀吉から事情を知っている僕へ、問い合わせの連絡が来ていないので、
まだ信長の元へ来ていないのだろう。
権兵衛君、もしかして失敗したのかな。途中で食べてないよな。・・・たぶん。
第二の謀略は、織田信長もう逃げたよ作戦。
こちらは茂兵衛に任せたが、八時間後には僕も出立したので心配は要らない。
出来るだけ早く逃げてくれれば、両方に交渉しやすい。
僕を織田信長へ人質に差し出せば、謀反を諦めてくれるだろう。・・・・たぶん。
第三の謀略は、明智光泰なんで居るの作戦。
他の二つの作戦が失敗していても、僕が説得すれば謀反を止めるかも知れない。
・・・・・・たぶん大丈夫。
第四の謀略は、京に付いてから実行する。その為に連れてきた兵だ。
旗はここで使う。届いているよな・・・たぶん問題ないだろう。
第五、第六の作戦は、失敗した時の保険なので、僕が逃げてから行う。
元服前の十才から十四才の子供達は遠足やピクニックに行く様にはしゃいでいる。
子供A「わし、京に行くのは初めてじゃ」
子供B「馬鹿を言え、戦じゃぞ。何が起こるか解らぬぞ」
一部、緊張している者もいるか。
少しリラックスさせ、統一感を持たせるか。
鎧も旗も持ってきていないので、これでは同じ軍隊に見えない。
光泰 「歩きながら聞け!!これからわしが歌をうたう。
おぬしらも同じ様に歌うのじゃ」
光泰 「囲め、囲め」
子供達「かこめ、かこめ」
光泰 「籠の中の鳥は」
子供達「かーごのなーかのとーりーはー」
光泰 「何時、何時、出やる」
子供達「いーつ、いーつ、でーやーる」
光泰 「夜明けの晩に」
子供達「よーあけの、ばんにー」
光泰 「鶴と亀が滑った」
子供達「つーるとかーめがすーべったー」
光泰 「後ろの正面、だーあれ」
子供達「うしろのしょうめん、だーあーれー」
かごめかごめの歌を、輪唱にして歌わせた。
光泰 「都に付いたらこの歌を広める故、良く覚える様に」
子供C「変な唄じゃのう」
子供B「シーッ、下手な事言うと怒られるぞ」
文句は作詞者に言って下さい。知らないけど。
子供D「あけち三兄弟の唄を流行らせたのは、十次郎様らしいぞ」
子供E「たしか、皆に優しい次男じゃったのう」
子供C「なら、大丈夫じゃろう」
子供達が、僕の顔を見ている。
光泰 「無事に帰ったら、新しい手妻の玩具の作り型を教えるてやるぞ」
子供A「噂は本当のようじゃ」
子供D「兄(光慶)とは大違いじゃのう」
子供E「次男(光泰)は殺されたのではないのか?」
子供B「十次郎は三男なのでは?」
光泰 「わしは次男じゃぞ。悪い噂は全部嘘じゃ。
信じるでない」
子供B「では、本当の話はどれなのですか?」
光泰 「兄上はまだ、頼りない子供じゃ。
優しく、清廉なお人柄じゃぞ。
なぜ、妙な噂が広まったかよく解らぬ」
ちょっと褒め過ぎたかな。
子供E「雷を作れるのは嘘じゃったのか」
光泰 「雷か・・・そうじゃ、都の者達に明智の指示に従わなければ、
雷を落とすと言いふるめるかのう。
その方がやりやすいかも知れぬ」
子供A「信じるかのう」
光泰 「なに、ちょっとした悪戯じゃ。
気取っておる都の者達を、驚かせてやろうぞ」
子供D「若様、悪い事考えておる」
僕達は悪巧みをしながら、京へ足取りを進めた。
途中一回休み、到着したのは日も暮れた八時ぐらいになっていた。
かごめの歌は少し変えています。
坂本から京まで七時間で計算しています。
勿論、検証していません。重要ではないから。
無理があるようでしたら変えます。
そんなにかからないのなら変えません。
寒くてキーボードが打ちにくいので少しお休みしています。




