65 光泰 見張る
武田家が滅びて数日後、祝勝会として
織田信長と徳川家康の食事会がもうすぐ行われる。
有名な逸話では、この食事会で、明智光秀が人前で怒られて、
恥をかいて恨みをもつだったよな。
だが本当にそうだろうか?
明智光秀は、もう頭を怪我している。
もしかしたら、わざと腐った魚を出して織田信長怒らせて
謀反の大義名分を、作ったのではないか。
または何者かが、織田信長が心証を悪くして、
明智家を滅亡させようと画策していると
明智光秀に思わせているのかもしれない。
ならば阻止して、この策略は無い事に、するべきではないか。
もし間違いでも、損はしない。失敗しても歴史が変わらないだけだ。
明智光秀が坂本城にやって来た。
家臣達の話では、織田信長の命令で、
明智光秀が徳川家康の饗応役を任されたそうだ。
これが食事会なのかな?作戦開始だ。
五月十日
光泰 「父上、私めを台所の目付け役に、お申し付けくださいませ」
明智光秀「目付け役は、他におる」
光泰 「父上のお役に立ちたいので御座います」
明智光秀「他の役目でもよいでは無いのか」
光泰 「この大事な会合を成功させる為、
細心の注意をせねばなりませぬ」
光泰 「私めが監視すればおかしな事をする者を
少しでも減らせましょう」
明智光秀「台所の目付け役か・・・まあ良かろう」
明智光秀は、少し考えた後に、許可を出した。
五月十五日
正確には、明智光秀は徳川家康の泊まる大宝坊という、屋敷での接待係だった。
光泰 「庄兵衛殿(溝尾茂朝)ご指導よろしくお頼み申す」
溝尾茂朝「では、若様には台所の出入りを見張って貰いましょう」
光泰 「待て・・・・良し」
光泰 「これは・・・・良し」
光泰 「そこの者・・・・良し」
食材、器具、人、すべて念入りにチェックした。
料理人α「明智の若様はお厳しいのう」
料理人β「まだ若いから張り切っておるのじゃろう」
料理人θ「やりにくくて仕方がないのう」
かなり迷惑をかけたが明智家の為、我慢してくれ。
五月十八日
僕は信長や家康と会わず、三日間の仕事は無事終わった。
予定より早く終わったぞ。
光泰 「二週間ほど、役目が続くはずでは無かったのか?」
溝尾茂朝「新たに、上様から毛利攻めに迎えと、
下知が下ったそうで御座います」
光泰 「毛利は羽柴殿が、攻めていたのであろう。
決戦が近いのか?」
溝尾茂朝「毛利の領地の半分を、切り取ったそうで御座います。
敵が戦準備を整える前に、大軍で一気に攻め落とすので
御座いましょう」
現在、北東の上杉に柴田軍が攻めていて、
南東の北条を滝川軍が睨みをきかし、
西の毛利を羽柴軍が戦っている。
明智家は信長の護衛、もしくは予備兵力として存在している。
光泰 「毛利の次は、長宗我部を北から攻めるつもりか?」
溝尾茂朝「長宗我部との関係が、悪くなっている事を
何処で御知りになったのですか?」
しまった。知っていては、おかしい情報だったか。
この後、長宗我部は勢力を土佐一国のみになり、
大阪の陣の頃には、滅亡している。
土佐には山内容堂の先祖が治める事になるはずだ。
坂本龍馬の主君は、長宗我部ではない。
光泰 「長宗我部は、喉元の棘じゃ。上様が、放っとく訳がなかろう」
溝尾茂朝「喉元の棘で御座いますか。
交渉していた我々は面目ありませぬが」
光泰 「内蔵助(斎藤利三)殿の妹が嫁いでおったのう」
溝尾茂朝「斎藤殿が嘆いておりました」
長宗我部元親の正室は斎藤利三の義理の妹が嫁いでいた。
(注:兄の養子先、石谷家の妹)
この人、相変わらずややこしい家系図である。
光泰 「気に病む事では無い。長宗我部は大きく成りすぎたのじゃ。
大国を治めるには、戦に強いだけでは無理じゃ」
溝尾茂朝「若様の御考えでは、国を治めるにはどの様にするべきだと
御考えでございますか?」
むつがしい事を聴くな!!現代と戦国時代では、政治権力が違いすぎる。
光泰 「子供を人質として差し出し、忠義を証明せねばならぬ」
現在、織田家は明確な人質を取る事をしていない。
大抵は、親や娘を人質にしているが、明智家の娘は全員嫁いでいる。
明智家の人質と言えるのは、長岡家の珠子姉さんと津田家の京子姉さんだ。
溝尾茂朝「これ以上、人質を出さねばならぬのですか?」
光泰 「戦国の世を終わらせるには、野心なき者を大名にして、
才覚ある者を、重臣にせねばならぬ」
溝尾茂朝「若様は、大名になる気は御座いませぬか?」
光泰 「無い!面倒なのは嫌じゃ。玩具や菓子を作っていた方が良い」
溝尾茂朝「では、名物などをお作りになり、
財政を支えなさるので御座いますか?」
光泰 「そうじゃのう、わしは武人ではなく、
様々な産業を起こして、銭を儲けるほうが良い」
溝尾茂朝「それで寒天やヨーヨーをお作りになられたのですか」
全然、違うけどね。
光泰 「そう言えば、父上はプリンを知っていたのではないか?」
織田信長に黒蜜プリンを献上した時、驚かなかった。
恐らく、ヨーロッパ人に食べさせてもらったのだろう。
プリンは、英語だとプディングだから、似たような名前の可能性が高い。
溝尾茂朝「私は存じませぬが、殿はあまり変わった物を献上するのは
如何なものかと考えたので御座いましょう」
光泰 「ならば教えてくれても良いではないか」
溝尾茂朝「若様の才能を、潰したく無いので御座いましょう」
なんだか、上手く言いくるめようとしている気がする。
光泰 「ほう・・では、益々張り切りねばならぬのう」
溝尾茂朝「ご期待しておりまする」
期待して待ってくれ。とんでもない〇〇を見せてやるから。
現在、新しいお菓子の開発を勧めている。
本当は、この食事会に間に合わせたかったのだが、
上手くいかなかった。
新しいお菓子は、どうしても型がひつようだからだ。
徳川家康の好物を模したお菓子を食べて貰いたかった。
関係を良くしておきたかったのに、すごく残念だ。
本能寺の変まで後、十三日か。
本能寺の編スタートです。




