42 十次郎 負ける
亀山城に、変な子供がきた。
家臣 「若様を、退治してやると、しつこく叫んでおりまする」
光慶 「迷惑な子じゃ」
道場破りかな?
十次郎「どこの者じゃ?」
家臣 「大和訛り(奈良弁)を喋っておりますので、
筒井家の家臣の子かと、思われます」
(注:わかりづらいので標準語で話しています)
光慶 「筒井家か、面倒じゃのう」
筒井家は、明智家の与力。
戦場では、部下として味方になってくれるが、家臣ではない。
仲が悪くなれば、色々と問題が出る。
十次郎「一人で、来たのか?」
家臣 「お供の者は、おりませぬ」
光慶 「筒井家に、使いを出すか」
十次郎「大人しくしておるのか?」
家臣 「勝負せぬなら、”明智家など腰抜けじゃと触れ回るぞ”
と叫んでおります」
暑苦しく、面倒くさい子供だな。
光慶 「おぬしに任せる」
十次郎「兄上に、勝負を挑んで来たのですぞ」
光慶 「元は、おぬしのせいであろう」
部屋には、小さい子供が座っている。
歳は、僕より若そうだ。(八歳ぐらい)
子供 「おぬしが、悪鬼十兵衞か!!」
家臣 「無礼で有るぞ」
十次郎「まだ子供じゃ。わしが許す」
正義のヒーロにでも、憧れているのか?
悪鬼十兵衞てなに?
明智十兵衞とかけてるの?
子供 「いざ、尋常に勝負を致せ!!」
嫌だよ、武術は上手くないし。
十次郎「おぬしの名は、なんと申す?」
子供 「柳生新左衛門!!」
十次郎「父の名は?」
子供 「柳生新次郎宗厳!!」
柳生といえば、柳生新陰流だよな。
一番有名なのは、柳生十兵衞だな。
柳生十兵衞は片目の剣豪で、徳川家光の家来だったはずだ。
年齢は、徳川家光と同じくらい?江戸時代の生まれか?
この子供は、柳生十兵衞の父親、もしくは親戚か?
すこし、かましてみるか。
十次郎「おぬしの流派は、新陰流であろう」
子供 「何故わかった!!」
十次郎「明智十兵衞を、侮るではない」
こいつの親戚?も、十兵衞を名乗るのか。
偶然だよな。
十次郎「その方、わしに勝ったとして、
城から無事に、出られると思うておるのか?」
子供 「どういう意味じゃ!!」
十次郎「例えおぬしが勝ったとして、わしの家臣達が
黙って置くわけなかろう」
子供 「卑怯な!!」
十次郎「まだまだ、未熟じゃのう」
でも、ここで勝負をして、僕が負ければ、
光慶の悪評が治まるかも知れない。
この子供も、名声を得られる。
WIN-WINではないか。
それに、こんな遠くまで一人で来て、可哀想だし。
十次郎「おぬしの勇気に免じて、勝負をしてやろう」
子供 「二言はないな!!」
十次郎「負ければ、わしの言う事を、きくのじゃぞ」
子供 「わかった!!」
武芸の稽古をしている庭で、勝負することになった。
対決方法は、木刀で行う剣術である。
絶対、勝てるわけがない。
光慶 「兄上、負けるな(笑)」
乙寿丸「負けるな」
いつの間にか、見物人が集まって来た。
光慶は、弟のふりをしている。
こいつら、面白がってるな。
初菊 「お怪我を、なさらぬよう致しませ」
初菊だけは、優しいな。
十次郎「かかって来い」
子供 「舐めるな!!」
勝負は一瞬で決まった。
十次郎「痛えー」
子供 「弱すぎじゃ!!」
十次郎「いやー参った、参った
流石、剣豪で有名な、柳生の者じゃ」
光慶 「知っておるか?」
家臣 「存じませぬ」
余計な事を言うな。
煽てて、とっとと帰らせようとしているのに。
門番 「柳生の者が、もう一人やって来たのですが、
いかが致しましょう」
光慶 「迎えに来たかのか、通せ」
門番 「かしこまりました」
柳生?「このたびは、申し訳ござらぬ!!」
子供 「兄上、どうしてここに!!」
柳生?「このたわけ!!」
柳生新左衛門は、思い切り殴られた。
十次郎「構わぬから、早う連れて帰れ」
子供 「わしが勝ったのです!!
殴られる、謂れはございませぬ!!」
柳生?「まだ、解っておらぬのか!!」
柳生新左衛門は、もう一回殴られた。
しょうがないな、褒美でもやるか。
十次郎「褒美に、南蛮胡椒(唐辛子)を食うか?
それとも、玩具をやろうか?」
子供 「嫌じゃ!!」
柳生?「どうか、お許しを!!」
十次郎「そうか、良い物じゃがのう」
なんでだろう。みんな、ドン引きしている。
光慶 「おぬしも兄弟に、苦労するのう」
柳生?「全くでございます!!」
それ、僕の事かな?
暑苦しい野牛じゃなかった、柳生の兄弟は帰っていった。
十次郎「初菊、手当をしてくれぬかのう」
初菊 「お怪我を、なされましたか」
十次郎「痣ができているであろう」
初菊 「直し方が解りませぬが」
十次郎「擦りながら、”痛いの痛いの飛んでけー”と、
おまじないを言うのじゃ」
初菊 「いたいのいたいのとんでけー」
初菊の手は柔らかいな。
あ!すごく近い。
光慶 「腰抜けじゃのう」
乙寿丸「みかけだおしです」
ちょっと酷いぞ。あと誰だ、乙寿丸に変な言葉を教えるのは。
十次郎「初菊、酷い事を言われた。慰めてくれるか」
初菊 「よわいのよわいのとんでけー」
初菊は、十次郎のあしらい方を覚えた。
柳生十兵衛を出したかっただけです。
子供は、柳生宗矩、柳生十兵衛の父親です
柳生?は、柳生宗章です。
柳生宗厳のこの時期の頃は、よくわかりませんでした。




