38 十次郎 なれる
少し前の話、
以前、頼んだ庭に植える、植物の苗と種が届いた。
爺 「これが、南蛮胡椒(唐辛子)ですかな?」
十次郎「苗で、送ってくるとはのう」
爺 「こちらは、なんでございましょう」
十次郎「西瓜の種じゃ」
爺 「これが、西国の瓜ですか」
十次郎「甘いと良いがのう」
爺 「では早速、植えてみますか?
十次郎「西瓜は、種植えの時期が過ぎておる」
爺 「では、来年までお預けでございますな」
僕は庭に、唐辛子の苗を植えた。
十次郎「立て札を、書いて置かないとな」
立て札はシンプルに{猛毒 危険 盗れば殺す}と書いた
爺 「毒なのでございますか?」
十次郎「ただの脅しじゃ」
爺 「いつ頃、実りましょうか」
十次郎「二ヶ月ぐらい先じゃそうじゃ」
ここで、普段の僕の一日を説明しよう。
6時 起きる。城の周りを走る。
7時 自室で朝ご飯を食べる(牛乳付き)
8時から12時 爺と勉強する。ときどき、商談する。
13時 庭で農作業
14時から17時 武芸の稽古、終わったら夏は水浴び、冬は蒸し風呂にはいる。
18時 自室で夕ご飯(まれに兄弟と食べる)
19時から眠くなるまで、考え事をする。
ちゃんと、武家の子供らしい事しているよ。
九月、唐辛子の実が生った。
十次郎「収穫するかのう」
爺 「真っ赤に実っておりますな」
十次郎「血のようじゃろう」
爺 「味見をしとうございます」
十次郎「年寄りには毒じゃ」
爺 「それは、残念で御座います」
さて、何に使おうか?
漬物は嫌いだし、豆腐はご馳走扱いで使いにくい。
肉炒めにでも使うか。麻婆豆腐は、いずれ作ろう。
僕は、台所に向かった。
十次郎「南蛮胡椒が採れたから、料理に使え」
料理頭「何に入れて、お使いすればよろしいのでしょうか?」
十次郎「肉炒めに使え」
料理頭「肉炒め?とは何でございましょう?」
あれ、知らないのかな?そういえばまだ食べたこと無い。
明智家で肉は、鳥(鶏ではない)と猪しか食べない。
しかも毎日は出ない。普段は、魚と野菜ばかりである。
他の家では、馬・牛・犬を食べる所も有るらしいが、出てこない。
犬、食べるの?(注:食料が無い時だけです)
十次郎「作るから見ておれ」
まだ、使っていなかったフライパンを、部屋から持ってきた。
だって、料理する暇が無かったから。
料理頭「変わった鍋ですな」
十次郎「今後、ここに置くから、料理に使ってみよ」
料理頭「よろしいのですか?」
十次郎「いつも迷惑をかけているからのう。
褒美として、受け取るが良い」
料理頭「勿体無き、お言葉で御座います」
十次郎「さて作るかのう」
材料になるのは、雉肉、卵(鶏卵ではない)、山菜、米、川魚か。
よし、チャーハンにしよう。(川魚はいらない)
十次郎「米は、炊けてあるか」
料理頭「もうすぐ、炊けあがりございます」
十次郎「鶏肉と山菜を、小さく切り分けよ」
料理頭「かしこまりました」
さて、今のうちにフライパンを熱して、油をひく。
料理頭「切り終りましてございます」
十次郎「では炒めるぞ」
フライパンからジャワ~と音が鳴る。
箸だと混ぜるのに使いにくいな。
十次郎「なにか混ぜやすくする物はないか?」
料理頭「杓子をお使いになられますか?」
渡された、木のおたまで炒めてみた。
使えなくは無いかな。
十次郎「よく炒めたら、次に卵、最後にご飯を入れる」
フライパンを振り、ご飯を高く舞わせる。
料理頭「そんなに振って、よく散らばりませぬな」
十次郎「どうじゃ上手いであろう」
僕の作れる料理の種類は、そんなに多くはない。
十次郎「後は味付けに、南蛮胡椒を少し入れて完成じゃ」
料理頭「これが、肉炒めでございますか?」
十次郎「違うぞ、唐土(中国)の言葉で、チャーハンと言う料理じゃ」
少し違うけど、まあいいか。
料理人達と食べてみた。
料理頭「これは、辛うございます」
十次郎「そうかのう、ちょうど良いとは思うが」
料理頭「南蛮胡椒が、これほど辛いとは」
十次郎「そういうものじゃ」
結構、美味く出来た。
十次郎「料理の味付けに、使えるじゃろう」
料理頭「上方料理の味付けとは、違いすぎまする」
明智家の料理は、京風で薄味である。
十次郎「上方料理(京料理)の味だけでは、他の武家から
公家もどきと言われるぞ」
料理頭「しかし、殿の勘気に触れましょう」
たしかに、怒られそうだ。
十次郎「わしの料理だけに使うから、問題あるまい」
その後、唐辛子が様々な事件を巻き起こすのだが、
それは後の話である。




