22 十次郎 街に出る
ようやく、坂本城の周辺も安定してきたので、外出の許可がおりた。
ただし、城下町までだが。
爺 「準備は整いましたかな」
十次郎「うむ、出かけるぞ」
付き添いは爺と、案内役で地元出身の磯谷さん。
爺 「磯谷殿よろしく頼みましたぞ」
本当は一人の方が良かったが。
磯谷 「若様、磯谷彦三郎と申します」
若様だと、お忍びの雰囲気がでないな。
十次郎「城の若様では、面倒な事が起きるやも知れぬ」
爺 「どう致しましょうか」
十次郎「爺の孫で良いじゃろう」
設定は傅役森茂兵衛の孫、(”も”が多いな)
名前も変えなくてはいけないよな。
幕末の志士からとるか。
十次郎「爺は、わしのことを、龍馬と呼ぶのじゃ」
爺 「りょう丸様ですな」
十次郎「様はいらぬ(”る”も余計だな)」
磯谷 「どこから参りましょうか」
十次郎「まずは、店じゃな」
さて、町に出て何をするか。
現代の知識を活かした領地改革をしたい所だが、
そんなことをすれば、明智光秀の力が増すばかりで、何もメリットがない。
では、足を引っ張るのはどうか。
ダメだ、今度は明智光秀に怒られて、監視がつき身動きができなくなる。
何が正解か。
答えは、戦に役立たない物を作り、小銭稼ぎをする。
なんて、消極的な発想だろう。出る杭は打たれるからな。
磯谷 「まずは魚屋から」
魚は詳しく無いからパスする。
十次郎「次じゃ」
魚屋を、早々に立ち去った。
磯谷 「つぎは焼き物屋ですな」
爺 「りょう丸、美濃の物が沢山ありますな」
僕は、木で出来たお椀を手にした。
十次郎「これを作ったのは誰じゃ」
店主 「冬に、百姓が作ったものですが」
これを作れるなら、アレが出来ないか。
十次郎「大きさは、子供の手で掴めるくらいで
中身をくり抜かず、真ん中に木軸の穴を開けて
二個、同じ物を作れるか?」
店主 「はあ、可能でございます」
十次郎「あとで、使いの者を寄越すのでよろしく頼むぞ」
店主 「はい承りました」
爺 「りょう丸は、なにをお作りになるのですかな」
十次郎「乙寿丸の玩具じゃ」
子供の頃に流行ったアレが作れるはず。
十次郎「あとは糸が欲しいのう」
磯谷 「では反物屋ですかな」
反物屋に入り、店主に糸を見せて貰った。
絹、木綿、麻どれにするか。
十次郎「木綿を貰おう」
他にも色々な店を回った。
十次郎「(竹とんぼは自分でも作れるかな?)」
十次郎「(けん玉は難しいかも)」
十次郎「(ペーパクラフトは作れるが・・・・・)」
坂本城の城下町は大きくは無い。
一時間で見て回れた。
爺 「どうでしたかな」
十次郎「大収穫じゃ」
磯谷 「それは、良う御座いました」
城に帰り、急いで玩具の絵を書き、届け差した。
一週間後
店主 「注文の品はこちらでよろしいでしょうか」
僕は早速、組み立ててみた。
片方の穴に木軸を差し込み、もう一つを合わせて、
木綿の糸を、木軸に挟んでクルクルねじる。
最後に指を入れる輪っかを作った。
十次郎「これで完成じゃ」
店主 「新しい独楽でしょうか?」
十次郎「まあ見ておれ」
シュルシュルと音を出しながら、その玩具を上下に動かした。
店主は驚いている。
店主 「これは、一体なんでしょうか」
十次郎「これはな”ヨーヨー”じゃ」
本当なら簡単に作れません
内政チートは致しません




