16 十次郎 なだめる
七月、大事件が起きた。
長女、倫子姉さんが帰ってきた。
倫子姉さんの居る部屋を兄弟達で眺めていた。
十次郎「急に帰ってきたのは、どうしてですか」
十五郎「荒木家が裏切ったそうじゃ」
十次郎「離縁されたのですね」
十五郎「どうしたものかのう」
珠子 「誰が最初に話します?」
十五郎「姉上にお願いします」
珠子 「私はだめですよ」
十五郎「同じ女子ではありませぬか」
珠子 「私はもうすぐ結婚しますので、
離縁された姉上の逆鱗に触れましょう」
十次郎「兄上が行かれては」
十五郎「何を話せば良いのじゃ」
十次郎「慰めればよいのでは」
十五郎「ならばお主がやればよい」
いつの間にか、珠子姉さんはいなくなっていた。
十次郎「仕方ありません。乙寿丸、一緒にいきますぞ」
乙寿丸を連れ倫子姉さんに会いに行った。
十次郎「姉上おかえりなさいませ」
倫子 「十次郎、大きくなりましたね」
倫子姉さんは思ったより若かった。
十次郎「乙寿丸、姉上ですよ」
乙寿丸「あねうえ?」
倫子 「こっちにおいで」
倫子姉さんは乙寿丸を膝の上にのせた。
さてこれからどうしよう。
十次郎「このたびは、お辛いでしょうが
今後は、十次郎がお助けいたします」
うまく言えていないな。
倫子 「十次郎、聞いてくれますか」
倫子姉さんは愚痴を言い始めた。
倫子 「側室ばかり相手して酷いでしょ」
十次郎「それは酷い」
倫子 「スケベな顔した茶器狂いが~(以下略)」
十次郎「無事でよかった」
倫子 「姑のクソババアが~(以下略)」
十次郎「うん、うん」
僕は相槌をうちながら頷きつづけた。
荒木家の悪口を長々と話した後スッキリしたのか
なんだか晴れやかな顔をしている。
倫子 「あら、寝てしまいましたね」
乙寿丸は膝の上で寝ていた。
倫子 「当分、結婚はいいわ」
話を聞いた後、僕は退席した。
十五郎「どうだった」
十次郎「うまくいきました」
十五郎は入れ替わるように倫姉さんに挨拶をしている。
倫子 「アナタは跡取りとしてしっかりせねば~(以下略)」
倫子姉さんは話が長いようだ。今度は説教をしている。
十五郎はうなだれている。
その後、倫子姉さんは、乙寿丸の面倒をよくみるようになった。
十五郎「どうしてこうなった!」
十次郎「先に行かないからです」
倫子の名前は綸の可能性もあります
倫の意味で決めました
荒木村重の謀反は10月ですが、
7月に戦線離脱をした後、明智光秀が使者として
おもむいた時、返されたと考えております。
正確な日付は不明ですので、七月後半以降だと解釈して下さい。




