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小さな流氷の上で

作者: キジ

 ここは海の上。南極近くの、とても寒い寒い海の上です。


 その冷たい海の上に、一つの大きな氷が浮いていました。


 南極から流れてきた、とても大きな氷です。


 その上に、大きなしろくまと、中くらいのあざらしと、小さなぺんぎんが乗っていました。


 「なあ、しろくま君。ぼくたち、この流氷にどれくらいだったかな?」


 そう聞くのはしろくま君と仲のいいぺんぎん君です。


 「もう1週間になるよ、ぺんぎん君。おなかはすっかりぺこぺこ。お日様もあつくてクタクタさ」


 答えたのは物知りのあざらし君です。


 あざらし君は言葉通りに辛そうに息をしています。厚い脂肪をもつあざらし君には、この氷塊を照らすお日様は暑すぎるのでした。


 ですが、それよりもずっと苦しそうに息をしているのはしろくま君でした。


 あざらしくんよりも大きな体をもって、とっても丈夫な毛で覆われているしろくまくんには、まるでオーブンの中に入れられているほどの暑さなのです。


 「ふぅ……ふぅ……とても暑いねぇ。南はとても暑いねぇ」


 かわいそうなしろくまくんは、起き上がる事も出きません。南へ下るにつれ、どんどん小さくなる氷の上にくっついて、ようやく体を冷やしているのです。


 氷はさらに南へ進みます。


 「ああ、どうしよう。ぺんぎんくん。しろくまくん。らもうこんなにも氷が小さくなってしまったよ」


 あざらし君の言う通り、氷はとても小さくなっていました。気づけば、三匹がようやく乗れる程度しかありません。


 「うーん。大変だ。このままでは、ぼくたち全員溺れてしまうぞ」


 ぺんきん君は目を丸くしました。


 そういう内にも、氷はみるみる溶けていきます。


 「うーん。仕方がない。ぼくは一足先にトリトンの都へ帰ろう。では元気で!」


 そういうや否や、あざらし君はざんぶと海に飛び込みました。いかにも暖かそうな水面に、あざらし君は二度と姿を現しません。


 それを知ったぺんぎん君はおいおいと泣きました。泣いて泣いて、気がつけば、また一週間が経ちました。


 二人はすっかりひもじくなってしまいました。


 周りはすっかり暑そうに、ぺんぎん君は今にも倒れそうです。


 「ああ、あつい。それにおなかが減ったなぁ」


 かわいそうなしろくま君は、もう目を開ける事も出きません。


 体もすっかり細くなって!弱っています。


 ぺんぎん君はそんなしろくまく 君を哀れに思って。


 「仕方がない。しろくまくん。ぼくも一足先にトリトンの都へ帰るよ。では元気で!」


 そういうや否や!ぺんぎん君はしろくまくんのお口の中に飛び込みました。


 しろくま君の大きなお口の中から、もう二度とぺんぎんくんの声は聞こえません。


 しろくまくんはそれに気がつきますと、おいおいと泣きました。


 泣いて泣いて、気がつくと……


 もう、氷は少しも残っていませんでした。


 しろくま君もトリトンの都へ帰ったのでした。

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