初めての魔物討伐
-王都ヴィル・サジェス近辺・シェルシェール平原-
「およそ遠しとされしもの。下等で奇怪。見慣れた動植物とはまるで違うと思しきもの達。それら異形の一群を、人は古くから畏れを含み、いつしか総じて「魔物」と呼んだ。ちゃららららら~ん♪」
「……誰か来る。って何言わせんだ」
「1話だね」
やってきました。王都ヴィル・サジェスから東に徒歩45分。シェルシェール平原。ここは魔素が他より豊富で魔物が集まってくるらしい。ここで定期的に駆除を行わないと餌を求めて人里に下りてきてしまうらしい。
「もう疲れたんだけど」
「まだ何もしてねえじゃねえか……」
フソウちゃんに呆れられてしまうのも無理は無いかもしれないが、道なき道を徒歩で45分。現代人の僕にはかなりきつい。ハイキングコースだってもう少し整備されてる。
「魔物どころか動物もいないね。どうしようか。お昼寝でもする?」
新緑の葉がそよ風に揺られ、麗らかな春光が心地よい。息を胸いっぱいに吸い込むと草の香りが身体に染みこむ様。次はお弁当を持ってこよう。
「バカ言ってんじゃねえよ。さっさと変身して依頼とやらを終わらせるぞ」
「あれすごく恥ずかしいんだけど」
「さっさとしろ!」
うな垂れて囁くように言う。もうどうにでもなぁれ。
「リリ狩る。マジ狩る。哀矜懲創……」
ぱあっと光に包まれる。変身バンクといわれるやつだ。やーめーてー!魔法少女の……もうぶっちゃけちゃうとヤンキースタイルの赤髪赤眼に変わる。
「じゃ、魔物おびき寄せるか」
だるそうに鉄パイプで肩をとんとんしながらフソウちゃんが言う。ちょっと待って。
「あれ!?決め台詞は!?決めポーズは!?」
「あんなんいちいちやってられっか。こっ恥ずかしい」
えっなにそれずるい。ただでさえ魔法使いとしては異端なんだから、せめてお約束はちゃんとしようよ!
「で、魔物呼び出していいか?」
「さっきはスルーしちゃったけどそんなことできるの?」
「朝飯前だ」
すぅーっと大きく息を吸い込む。
「アタシは魔法使いのフソウだ!!タイマンで勝負しろ!!スライム出て来いやぁ!!!」
スルーもツッコミだと思う。
「早くしろコラ!それでも男かオラァ!!」
…。……。………。
出てきてくれませんね。わかってたけど。