ヤマシロちゃん大活躍!? 盛り上げよう!はじめての集団戦
「何故、山に登るのか。それはそこに山があるからさ」
「ファイアー・ドレイク討伐のためだろがボケ」
がしゃがしゃと音を鳴らしながら道なき道を進む。そろそろ頂上が見えるころだ。気を引き締めなおさねば、と気合を入れていると軽快な音楽が鳴り響く。
「あ、彩雲から電文だ。はいはーい」
「なんて?」
「えーっとね、ぴーとんぴー、ぴーぴーぴー……平文かぁ。暗号でこられても困るけど。ちょっと待ってね」
ジャックさんに声をかけて小休止に入ってもらう。
「ワレ、カイテキセリ。えーっとテッキソウスウナナ、センジュツテキテッタイス、ワレニオイツクテッキナシ……ってやばっ!」
慌ててヤマシロちゃんが叫ぶ。
「右翼からおそらくファイアー・ドレイク7匹来る!防御固めてっ!このままじゃT字不利になる!」
その言葉を聞き、T字不利って何だ?と首を傾げつつもジャックさんが素早く指示を出す。
「魚鱗陣!中央は魔術師、ヒーラー!両翼に弓!先頭は俺とヤマシロが着く!守れぇっ!」
その声に各々が動き出す。
「先頭に立たせちまって悪いな。んで敵との距離はどれくらいだ?」
「まあ情報持ってるの私だけだし仕方ないけどね。んと700くらいかな?迎撃隊飛ばしといていい?」
「むしろお願いしたいくらいだ」
ジャックさんが肩をすくめる。はーい、という返事の後さっそく端末を操作する。
『弩弓召喚』
『シュートベント・烈風』
「んでもういっこ!」
『シュートベント・破滅と災厄の紅蓮弓』
紅蓮弓に烈風の矢を番えて溜める。そして放つ。1本の矢が5本に分裂し、さらに航空機へと変化する。
「とりあえず5機編隊で3部隊……でっ!」
3本目の矢を放つ。
「まあこれで少しは時間稼げるでしょ。この後は?」
「あ、ああ。こっちはとりあえずこれで大丈夫だ。余裕がありゃあでいいが前の様子が気になる。頼めるか」
「まっかせてー。彩雲にアクセス。んー……あ、こっちに向かってきてるファイアー・ドレイク3匹になってる。距離400くらい。もう視認できるかな?……前はぐちゃぐちゃねー。右崩れてる。そこから抜けてきたのかな?ファイアー・ドレイク以外になんかでっかいトカゲいるわ。たぶんア○ムトルムよあれ」
アカ○トルムいるの!?
「急いだ方がいいかも知れねえな」
ジャックさんは苦い顔で眉根を寄せる。
そうこうしている内にファイアー・ドレイクとの距離が詰まる。
「弓兵!俺の合図で一斉に撃て!相手はまがいなりにも竜種だ!矢を弾く!引き付けてから翼を狙えっ!番えぇえぇぇっ!」
左右からシャッっという音が聞こえる。
距離300……200……100……烈風は全て消え、邪魔するものはいない。空を移動いているからか、想像以上に速く感じる。まだ、まだなのか。焦りとも似た雰囲気が場を支配する。
65……50……35。ファイアー・ドレイクが攻撃の構えに入る。そして30。弓の殺傷距離だ。
「今だっ!放てぇえぇぇえ!!」
左右から矢が放たれる。1匹、2匹と落ちる。3匹目は……翼を複数本の矢に貫かれながらもこちらに向かってくる。
「だぁあぁ!」
裂帛の声。ぶぉっという空気を切り裂く、いや殴ったような音がする。同時にずちゅんという濡れた音。
「ふう。これで全部か?ちょっくら向こうのにもトドメ差してくるわ」
そう言って大刀を担ぐジャックさんとそれを見て、刀を上段に構えたままわなわな震えるヤマシロちゃん。ヤマシロちゃんはこれが初陣だ。恐怖しても仕方がない……。
「オイシイところ取られたぁ!私がここまでお膳立てしたのに!ずるいっ!やーりーなーおーせーっ!」
「……せっかく出したんだから紅蓮弓使えばよかったのに」
「えー?弱点属性も肉質もわかんないのにぃ?それにあれ爆発するのよ?リアルで汚い花火見たいの?肉片のシャワー浴びたい?」
「それはちょっと勘弁願いたいなぁ」
「でっしょー?」
目の前で真っ二つになったの見てもうっ!てなったのに血の雨浴びるとかたぶん吐く。
まだ覚悟が足りないのか、単純に慣れていないだけなのか。とにもかくにもがんばろう。




