ハンター合宿大作戦!
-城塞都市フロン・ブリュム・ドゥ・シャルール火山の麓-
「では、次のニュースです。――本日、城塞都市近郊、ブリュム・ドゥ・シャルール火山で大規模なファイアー・ドレイク討伐作戦が実行される模様です。ただいま中継がつながっております。現場のヤマシロちゃ~ん」
「はい。こちら現場のヤマシロです。私は今、討伐隊キャンプ、ブリュム・ドゥ・シャルール火山の麓に来ております。さっそくお話を聞いてみましょう。どちらからお越しでしょうか?」
「……なあ。これ付き合わなきゃダメか?」
おっと。今回もフソウちゃんのお気には召さなかったようだ。付き合ってくれたの1回しかないけれど。
「どちらからお越しでしょうか?」
「おい。聞けよ」
「ど・ち・ら・か・ら!お越しでしょうか?」
ヤマシロちゃん強い!まったく手を緩めない!すごく面倒くさい娘だ!
「……あっち」
「あっちですか~。今日は何しにこんな辺鄙なところまで?」
「聞くまでもねえだろうが。討伐隊キャンプでバーベキューでもすると思ってんのか?」
「ですよねー。キャンプといえばカレーですよねー」
「そのキャンプじゃねえよ。なんでレジャーなんだよ。どっちかつったらレンジャーだよ」
「はい。親父ギャグいただきました。ではスタジオにお返しします」
「くっ!」
スタジオに返されても困る。ヤマシロちゃんはやりきった感出してるけど、ぶっちゃけ落し所が分からない。
「フソウちゃん……面白かったよ?」
「だまれっ!」
フォローは失敗したようだ。
「おおい!お前らいつまで遊んでんだー?斥侯の報告入ったぞー!」
「すみませーん!今行きますー」
なんでアタシまでこいつらと一緒にされなきゃいけねえんだ、とフソウちゃんがぶつくさ言っている。そうだよね。フソウちゃんは遊んでたんじゃなくて遊ばれてただけだよね。
ジャックさんに呼ばれてそそくさと暁班に合流する。
「斥侯の方はなんと?」
「ああ。ファイアー・ドレイク以外に問題になりそうな魔物はいねえとよ。無論、妖魔軍も接触してねぇ。計画通り山狩りだ」
「さあ、山狩りの時間だ!」
「ひゃっはー!汚物は消毒だぁ!」
意味も無く騒ぐ僕とヤマシロちゃん。
「バカふたりはほっといていつ出発だ?」
心は灼熱、頭は絶対零度。我らが頼れる姉貴分、フソウちゃん超クール。
「今から1時間後、配置場所は魔術師連中の護衛だ。準備しといてくれ」
「だとよ、ヤマト。忘れもんはねえな?」
「大丈夫だよ。持ち物って言っても食料と水を1日分と回復薬ぐらいだからね」
「お弁当は……うん。ハンカチ、ティッシュ持った?タオルは大丈夫?」
ヤマシロちゃんは少し、頭冷やそうか。ここボケていい場面じゃないからね。僕が言えた義理じゃないけど。ジャックさんも苦笑いだ。
「ならアタシ達はこのままここで待機させてもらう。そっちの準備が整ったら呼んでくれ」
「わかった。じゃあ俺は準備に向かうとするわ」
そう言って席を立つジャックさんを僕らは見送る。
「一時間かぁ。んー。一応こっちでも斥侯出しとく?今からなら十分燃料持つし。偶発的な衝突でT字不利にはなりたくないでしょ?」
「?よくわかんないけど打てる手は打っておこう」
「りょうかーい。変身よろ」
「ういうーい。闘争・財福・冥府。尸林に住みて、血肉を喰らう。今宵も虎徹は血に餓えている」
「んじゃさっそく。ポチッとな」
『弩弓召喚』
『シュートベント・彩雲』
すごく気になってたんだけど何で同じこと2回言うの?大事なことなの?
ヤマシロちゃんの手に和弓が握られる。矢を番え、天へと放つ。すると矢が直線的で細長い胴体と大径プロペラ、長い主脚が特徴のスマートな航空機へと変化した。
「アクセス」
そう呟いて片目に手をやる。
「うん。視界確保おっけー。哨戒頼むねー」
というヤマシロちゃんの声に答え、彩雲はバンクを振った。




