どうなっちゃうの!?ヤマトのはちゃめちゃシンデレラストーリー!?
ハンターの朝は早い。
「まぁ好きではじめた仕事ですから」
最近は筋肉痛がとれないと口をこぼした。まず、身体の入念なチェックから始まる。
「やっぱり一番うれしいのは依頼主さんからの感謝の手紙ね。この仕事やっててよかったなと」
「毎日毎日依頼が違う。ハンターでなければ出来ない」
今日は大猪フォレ・ロワ討伐の事後処理。僕はドッグタグを首にかけ、ギルドへと向かった。
基本的な話は決まっているが、僕の事情に合わせ、臨機応変に話をつけなければいけないのが辛いところ、と僕は語る。
「やっぱ討伐の依頼はキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ」
「でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてないよ」
「この前振りはダメだ。ほら、フソウちゃんがノッってきてくれない」
僕にかかれば、態度だけで出来不出来が分かってしまう。
「そろそろ満足か?」
「うん。そもそも自分で選んだ道でも好きで始めた仕事でもなかったよね。電車乗ってたら拉致られたんだし」
「問題はそこじゃねえけど」
「あ、依頼主さんからの手紙ももらったこと無かったね」
「それどころか正式な依頼は一件も達成してねえしな。……そういう事じゃねんだよ」
下らない話をしながらギルドの門をくぐると一斉に僕へと視線が刺さる。居心地の悪さを感じつつもカウンターに向かう。もしかして聞かれてた?
「すみません。フォレ・ロワの件でお伺いしたのですが……」
「ああ!ヤマト様ですね。2階の応接室でお話をお伺いさせていただきます。ご案内いたしますので少々お待ちください」
受付さんはそう言ってロビーのほうに回ってきた。カルガモの親子の如くひょこひょこ着いていく。応接室に着いたのだろう、受付さんは立ち止まって扉を開く。
「ではこちらでお待ちください」
僕が中に入ると受付さんは一礼して下がっていく。扉が閉まったのを確認して部屋を見渡す。一見して質素だが上等な品だということがわかる。落ち着いた雰囲気で豪華というよりは瀟洒な部屋だ。つい見とれてしまう。
いつまでそうしていただろうか、ノックの音に現実に引き戻される。
「失礼する。私は当ギルドの長を勤めているアルセーヌ=デュランと申す。此度は足労を願って申し訳ない」
そう言って老紳士然とした隙の無いスーツ姿の男性とその秘書官らしき女性が入室する。まさかギルド長自ら出てくるとは思わなかった。そこまで大きな事柄じゃないよね?
「いえ、私はヤマト=フソウ。そして……使い魔のフソウです」
ドッグタグを掲げる。使い魔だなんて言いたくないけれど他に良い言葉が浮かばなかった。パートナー?
「フソウだ……です」
握手を交わすと席を促されたので着席する。
「お噂はかねがね。そういえばヤマト氏は特殊技能持ちだったね」
「はい」
「みなまでは聞きますまい。早速で悪いけれど本題に入らせていただきたい」
「構いません」
「とは言っても大体は聞いているね?スライム討伐の依頼破棄、Cランク昇級、そして緊急依頼の受注・達成についてだ」
僕は首肯し、肯定の意思を示す。
「ではこちらが報酬の詳細だ」
ギルド長はそう言って1枚のプリントを差し出してくる。
「まず依頼達成料がリュニヴェルスィ金貨70枚、そして買い取り料で金貨250枚。そこから違約金と雑費で金貨20枚引かせてもらう。いいかな?」
雑費に日本円換算で20万円も取られるのはどうかと思い、手元のプリントを見る。解体や特例処置の手間賃、保存場所の確保など。それだけ見れば割高だが、ある種賄賂のようなものだと思えば安いほうか。
「ええ。構いません」
「よかった。ではそのようにいたしましょう。このあと1階の報酬カウンターでお受け取りください」
「わかりました」
ギルド長は一息つくようにお茶に口をつける。つられて僕も口をつける。
「実は他にお願いしたいことがありましてね」
やはり。ここからが本番と、僕は気を引き締め直した。




