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最強伝説!乙女心はかくせません!!

閑話(?)その2。前回『ストーリーは進みません』って書いたけれど、そもそもストーリーなんか無かったことに気がつきました。ライブ感って大事だよね?

 風呂はいいね。ヒトが生み出した文化の極みだよ。そうは思わないかい?

 大猪フォレ・ロワ討伐から3日。つまり筋肉痛との闘いから2日目。身体の不快感が限界にやってきた。


「フソウちゃんフソウちゃん」


 フソウちゃんに呼びかける。


「なんだよ」

「ちょっと変身してお風呂屋さんに行ってきてくれないかい?」


 そうなのだ。僕が動けないならフソウちゃんに動いてもらえばいいのだ。なんていったってフソウちゃんには痛覚遮断があるんだから!


「はぁ!?何でアタシが」

「フソウちゃんは自称・僕の能力でしょ?僕に有益な事はやってくれるんじゃないのかなーって。それともやっぱり一人の女の子だってことを認めるのかな?」


 すこし……いや、かなりひどいことを言っている自覚はある。けれどこれもフソウちゃんのためなのだ!僕の能力ではなく、一人の女の子としてのフソウちゃんになるために!けっして汗や血、獣の臭いが不快でお風呂に入りたいだけではないのだ!


「それはまぁ。でもそれとこれとは……」


 ぶつぶつ言ってはいるが明確な否定はしていない。意地っ張りめ。ここは攻勢あるのみ!


「じゃあ早速準備して!ほら!リリ狩る。マジ狩る。哀矜懲創!」

「だあ!もうわかったっての!」


 自棄になったフソウちゃんの声と共に僕の身体は光に包まれる。……ベッドでうつ伏せになったまま変身した魔法少女ってのも前代未聞かもしれない。



-ギルド裏大衆浴場-


「これはちょっと」


 脱衣所で胸から下半身にかけて大き目のタオルで隠しているフソウちゃんの声には恥ずかしさが混じっている。


「男は胸なんか隠さないよ。ほら。早く湯船に行こう」


 変身では性別が変わらない。当然男湯だ。


「ええい!女は度胸だ!」


 脱衣所の扉を開け湯船へと向かう。


「こら、だから胸を隠さない。ただでさえ中性的な容姿なのに、変身して女の子っぽくなってるから仕草までそうだと……」


 フソウちゃんが入っていった瞬間『何で男湯に女の子が?』といったような驚きをあらわにして固まる先客たち。ごめんなさい。身体は男の子なんです。


「っ!……!!??」


 それはまさに鉄だった。雄雄しく猛々しいそれは天へと向かう尖塔。バベル……いやソドムの塔だ。その持ち主は顔を明後日のほうに向けてはいるが、ソドムの塔は天を突かんと上を向いている。

 ソドムの塔を目撃したフソウちゃんは悲鳴すら出せないらしく、涙目で回れ右をして脱衣所に戻った。


「ここまで来てくれてありがと。後は僕がやるから変身解くね?」

「……うん」


 隅っこに行って変身を解く。脱衣籠の中にドッグタグを置き、服で目隠ししてあげる。

 筋肉痛で痛む身体と闘いながらお風呂に入る。他のお客さんの視線が気になった。



-宿屋『オオワシの留鳥亭』-


「なんて事をさせやがる!」


 宿に着くや否やフソウちゃんが怒鳴る。


「お風呂なんだから当たり前でしょー。想像できなかったわけじゃあるまいし」


 嘯く。


「ぐっ!そうだけどよ……」

「女の子にやらせるようなことじゃない?でもそれって認めることにならないかな?」

「わかった!この話はここまでだ!くそ!」


 少しでもフソウちゃんが"自分"を認めてあげられたなら満足だ。……少なくとも僕は身体がさっぱりして満足している。お風呂はやっぱり最高だぜ!

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