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ジュリア-改-  作者: リノキ ユキガヒ
パネェな!!
8/28

ナニモンだよ!!

 本屋の向かいにあるハンバーガーショップでジュリアは手早く食事を済ますとさっき買った本をコーヒーをすすりながら手に取った。

 実を言うとジュリアは雑誌以外の本を買うのは小学生以来の出来事である。

「どれどれ…」

 不安と期待が入り混じる微妙な気持ちで1ページ目を見た。

 筆者の挨拶である「はじめに」を読んで

「戦争で沈んでもう無いのか…」

 撃沈という普段聞き慣れない言葉でちょっと複雑な気持ちがしたが

 構わず読み進めた。

 次のページは目次で大和に関する様々な謎が書き連ねてあった。

「ん~…ココだけ見てもサッパリだわ。こいつはちょっとヤバかも…」

 目次は数ページに渡ってありジュリアは目を通していった。

 その中に幾つか興味をそそられるものもあった。

「え!船の中に洗濯屋あんの!?ラムネ製造所?なんでンなもんがあるの?回るレストラン?ん~!!なんか気になるから先に読んでしまおう」

 ペラペラとページをめくりお目当ての部分に辿り付くと読み始めた。

「はぁ~。この船って2000人以上乗ってるのか。そりゃ洗濯屋がいねーとヤバそうだな。つーかそれだけの人数さばく洗濯機ってどんだけだ。」

 やはりアパレル関係の仕事をしているからだろうか?この項目が1番先に目に付いたらしい。そして興奮気味にページをめくり

「ラムネってあの炭酸のヤツだよな~。なんで船のなかでンなモン作るんだ?」

 と、素朴な疑問を持ちつつ読んでいった。

「なーる程。本当は火事が起きた時の為にある設備なんだな。水じゃダメなんてドンだけヤベーもん積んだよ。てかラムネも2000人分作るのか?」

 一息付きコーヒーを煽ると

「えー!?ニューオータニの展望レストランって大和の主砲と一緒の重さ!?主砲ってドンだけ重いんだよ!てか主砲ってナニよ!?」

 新たな興味の対象が沸いて来てジュリアは興奮気味に主砲に関する項目を探しはじめた。

「あった。え~と…46センチ45口径、最大射程距離42キロメートル、距離を例えるなら東京駅から戸塚ぁ!?しかもそれを90秒で行っちゃうの!?ハァ!?ドンだけブッ飛ばしてンだよ!秒速780メーター!?弾丸の重さが1,4トン!?何だそりゃ!!そんなモン積んでる戦艦大和ってナニモンだよ!!」

 次から次へと大和に関する疑問が沸いてくる。「戦艦大和・99の謎」を改めて始めから貪る様にジュリアは読み続けた。気が付くと陽が傾き始め夕陽が店内に差し込んでいた。

「はぁー、もうこんな時間か…。夢中ななり過ぎた。ボチボチ帰らねーと…」

 ジュリアは席を立つと昼間、本屋で見た雑誌の事を思いだした。

「ヤベェ!何書いてるか超気になる!」

 血相を変えて先ほどの本屋に駆け込むと

「カヨー!!カヨー!!まだいるかー!!さっきの本!さっきの本!」

「ちょっとやめなさいよ!みっともない!」

 まだ店内で業務に当たっていたカヨは大声で騒ぎ立てるジュリアを慌てて静止させると

「さっきの本ってなによ。返品ならレシート出しなさいよ」

 カヨは手を差し出すとジュリアは乱れた呼吸を整えながらカヨの肩を両手でつかんだ。

「ハァハァ…ちげぇよ。雑誌の方だよ、まだある?」

「なんだ、返品じゃないの?じぁ自分でミリタリーのコーナー見て来なよ」

「お、おう」

 カヨの冷めた反応にジュリアはいくらか冷静さを取り戻しつつミリタリーのコーナーに向かった。

 無かった場合のショックを考えるとキツいので恐る恐る本棚に近づた。

 バイクのコーナーを過ぎてそろそろあるかどうかが解る場所へと足を運ぶ、ブーツのゴツゴツという足音が自分の鼓動とリンクしているような気がして緊張感は否が応でも増して行く。

 いよいよ頭を下げるだけで雑誌の有無がハッキリとする所まで来た。意を決して本棚へ目線を移そうとした

「ねぇちょっと、アンタが探している雑誌ってこれ?」

 その瞬間いきなりカヨが後ろから雑誌の束を持って現れた。

「ウオッ!ビックリした!いきなり話しかけるなよ!」

「ったく。お化けを見たような顔してるんじゃないわよ。今その棚に『丸』がないからバックヤードから持って来たの。」

 カヨは手にしている雑誌の束を本棚に陳列するとジュリアは

「あー!!コレコレ!」

 と言って雑誌を手に取った。

「いやーやっぱ戦艦大和が表紙の時は売り上げが違うわね」

 カヨは本屋としての戦艦大和の凄さをジュリアに言ったつもりだがジュリアの心は既に戦艦大和の記事に夢中になっていた。

「カヨ!これ買って帰るわ。さっきの本に載ってない事が載ってる!」

「あーそう。ありがとねー…ってアンタその雑誌の書いてる事わかんの!?」

 驚くカヨをよそにジュリアは

「ところでこの雑誌名前なんてーの?」

 と、なんとも間の抜けた質問をしてしてきた。空いた口がふさがらないとは正にこの事かと内心思ったが

「アンタ、それが丸よ」

「は?まる?何だそりゃ」

 まだピンと来ないジュリアに業をにやしたカヨはジュリアの手にしている雑誌「丸」を引ったくり表紙の左上に赤い字で書かれているレタリングの「丸」を指差し

「だから!雑誌『丸』!老舗軍事雑誌『丸』よ!!」

 と大声でどなった。





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