これ系
地下3階はビルのメンテナンスに関する設備がメインになっている。
テナントのフロアとは違い、色々な区画に仕切られておりメンテの人間以外は入れなくなっている。
テナントの人間は店員用エレベーターを降りて正面の出納室かその隣にあるオルタの営業の事務所しか馴染みがない。
その他にはエレベーターや照明、空調などを制御する中央監視室。クリーンスタッフや警備員の控え室などだ。
出納室に備え付けてあるテナント用の貸金庫に本日分の売り上げを入れて今日一日の業務は終了となる。大所帯のテナントだとこの後にミーティングをしたりするが大体のテナントがこのまま業務終了だ。
売り上げ金を預けたジュリアとカヨは出納室を出た。
「あ!神田さぁん本返して下さいよ~」
ドスドスと重たい足音を響かせながら寺田が寄って来た。
「だーかーらー。店で本名呼ぶんじゃねーよ!ダセェだろ!本、返さねぇぞ!」
「うぶぶ…」
寺田はシュンとした表情を一瞬見せたがカヨを見つけると
「あ、加藤さん。今月も『丸』お願いしていいですか?」
嬉々とした表情で話しかけた。
「大丈夫ですよ。毎月の事ですから発売日には入荷しますよ。寺田さん」
「カ~ヨ~。ワタシの時とは随分対応に差があるわね~」
「は?な、ナニいってるの」
カヨは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「ところでテラっち。カヨになに頼んだ?」
「あぁ、軍事に関する専門誌ですよ」
「まぁアンタがみて面白い雑誌では無いわね」
ニタニタしながらカヨはジュリアに話しかける。
「ルセーな。私みたいなヤツが見ちゃイケねーって法律でもあんのかよ。なぁテラっち他にもこれ系の本貸してくれよ。なんかハマっちまって」
「うー。そういえばカワサキのバイク乗ってましたよね?じゃ~あ」
「え?なになにバイクとかある系?」
ジュリアのはしゃぎっぷりを横目に寺田は腕組みをして少し困ったような感じで言った。
「いえ、ええと、カワサキって昔戦闘機作ってたんでそっちの方がとっつきやすいかな?と思って」
腑に落ちない表情をするジュリアをよそにカヨは寺田の意見に賛同するようにウンウンと軽くうなづく。
「なぁ、テラっち。そーゆのメカに強くねーと見てもわかんねーんじゃね?」
「あー。基本的に航空機の技術が自動車やバイクにフィールドバックされてるからゼロからのスタートでは無いと思いますよ。」
「そーよー、寺田さんはちゃーんとあんたの事考えてンだから」
「なんだよカヨさっきからやたらテラっちの肩持ってンじゃねーか」
ジュリアはいやらしい目線をカヨに送る。彼女は我関せずを決め込んではいるが内心まんざらでもなさそうな感じだ。
「ま、いっかぁ。じゃあなんかお勧め貸してくれよなテラっち」