迷彩
そろそろ陽が傾き始めオルタが賑やかになる時間が来る。平日のコアタイムはやはり夕方から閉店までだ。それまでは比較的暇な時間が流れる。お店によってはバックヤードの整理をしたり事務処理をしたりする。やる事がなければ客が来るまで動待機といって展示商品を整えたりしながら来客をひたすら待つ。
「いらっしゃいませ~」
と、言いながら店内をウロウロしているあれだ。
「店長帰っちゃいましたね~。」
動待機しているマキはレジカウンターでうつむいているジュリアに話しかける。
「ああ。」
と、そっけない返事。さっき寺田から強引に借りた本を見ているようだ。
「なんか、どこのお店もまだヒマそうですね~」
マキの厚底ブーツがカポカポと音をたてる。
「んあ。」
またまたそっけない返事。
「あの~これ~」
「んー」
「チョット!ジュリアさん!お客さん!!お客さん!!」
慌ててマキがレジカウンターに駆け寄る。
「え!?あっ!イラッシャイマセー」
突然の来客にジュリアは珍しく動揺してしまいまるで新米の店員のようなぎこちない接客になってしまった。
呆れ顔でマキが
「もー、ジュリアさんなんかその本見てかららしくないっスよ。」
「いやーこれオモロイわー。カモフラの柄ってちゃんと意味があるんだな。森林用や都市用に砂漠用。季節に応じても種類を変えるみてー。で、結構古くて第二次世界大戦の頃に出来たんだな。当時の技術であの柄つくるのムズかしかったみて~よ。パネェなドイツって国」
「そ、そうっすか」