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ジュリア-改-  作者: リノキ ユキガヒ
ナニコレ?
2/28

オープン!!

 オルタの朝は遅い。一般的に商業施設は朝10時に開店だがオルタは11時オープンだ。

 但し地下だけは地下鉄とビルが直結している都合上、朝8時にビルの中から地上に出れるように部分的に開放しているがテナントは営業していない。

 11時のオープンに合わせて各ショップの店員が大体9時位からぼちぼち出勤してくる。

 大部分の店員が電車通勤なのでオルタの地下にある入り口を経由して一旦地上に出てビルの裏側にある通用口に姿を表す。そこで入館証を警備員に提示して入館していく。

 一応複合的な商業施設なのでセキュリティは防犯の都合上してある。

 なので開店するまでオルタの入口はここしかない。客用のガラスドアと一緒で観音開きになっていて、このドアの奥に警備員が立哨して店員の入館証をチェックしている。


 新宿・靖国通り。大体10時を過ぎた頃。朝の納品や通勤の騒ぎが一段落して少し凪いだ感じがしている。

 平日のせいもあるが人影はまばらだ。夕方になるまでこのような感じだろう。

 そこを一台のバイクが爆音を響かせながら車列を縫うように走って来る。

 車種はカワサキ・Dトラッカー。250ccのスリムな車体は渋滞をものともしない。

 スーパーモタードという何でもありのレースの為に作られたバイクだ。都内を走るのにこれ程都合のよいバイクは無いだろう。

 アチェルビスの4眼ヘッドライトにショッキングピンクのバーハンドル。マフラーは定番のスーパートラップ。数々のドレスアップパーツが組まれていて派手なバイクに仕上がっている。

 ライダーの姿もバイクに負けず劣らず派手な格好だ。

 シティライダーの定番。無数のステッカーを貼ってるハーフキャップのダックテールヘルメット。クラッシックな飛行機用のゴーグル。すっと通った鼻すじから薄い唇。その薄い唇の左端にはピアス。革製のライダースジャケット。太いベルトをアクセントにショートパンツ。そこから黒いストッキングに包まれたスラリと伸びた足。その先はゴツめのブーツを履いている。恐らく女性だろう。

 その派手なバイクとライダーは靖国通りから一本裏路地に入った。

 そのまま真っ直ぐ行くと丁度オルタの裏口に当たる。

 裏路地に建ち並ぶ雑居ビルに排気音の爆音が響き渡る。その音はオルタの通用口の中まで聞こえるようだ。

「おい!寺田ぁ!今日こそは突破されるなよ!!解ってるなぁ!!」

 年配の警備員が警備室から叫んでいる。

「そんな事言っても相手はバイクなんですから」

 通用口で立哨している寺田と呼ばれた警備員は巨漢をユサユサと揺らしながら様子を伺う為ガラス戸へ手をかけた。手元から視線を路地に向けた瞬間、こちらに突っ込んで来るバイクが視界一杯にひろがった。そして激しいブレーキ音を鳴らしながら寺田のいるガラス戸に迫って来て直前で急停止。ここぞとばかりにフルスロットルのレーシングをお見舞いした。

「ドドパン!!」

 目の前で炸裂する単気筒特有の歯切れよい排気音はまるで何かに殴れた様な感覚だ。驚いた寺田は思わずその場に尻もちを付いてしまった。

 ライダーは軽やかにバイクから降りると入館証を見せながら寺田をヒョイとまたぎいとも簡単に通用口を突破してしまった。

「もぉ~、ここにバイク止めちゃいけないって何回言えばわかるぅんですか~ぁ」

 寺田はお尻をさすりながら立ち上がりライダーに注意を促した。

「悪ィ、テラっち。バイク見といて~。後で動かすからぁ!」

 するとその騒ぎに気付いた一人の女性店員が赤い髪のツインテールをなびかせながらライダーの元へ足早に駆け寄っていった。

「ジュリアさ~ん。LINE飛ばしたのに既読になってないッスよ~」

「バイク乗ってる時は無理だってーの!てかオメーまだ一人でオープンできねーのかよ!」

 二人はそのままの勢いで通用口のエレベーターに飛び乗った。

 慣れた手つきで5階のボタンを押すとライダーはヘルメットとゴーグルを外した。

 女性らしい切れ長でメイクを決めた目元が露わになる。細いアゴと相まったミディアムショートの髪を手ぐしで乱暴に整え「ふうっ」と軽く息を吐いた。

 ほど無くするとエレベーターは5階に止まり二人を吐き出す。

 ヘルメットとゴーグルを肩に担ぎながら共有部の廊下を二人で闊歩する。

 オルタの5階、大体真ん中らへんに彼女達が受け持つテナント区画はある。店の名は

impdensインピダンス

「ほいじゃ今日も一発かましますか!!ジュリアさん!!」

「ったくマキィ。オメーはいつも調子いいなぁ」

 今日も慌ただしくオルタの一日は幕を開けた。


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