第三十二話
次回更新は9月1日です。
久し振りにダンスを踊りましたわ。もう四年以上も踊ってませんから不安でしたけど、カーディナル殿下がとてもダンスが上手いのに驚きましたわ。流石皇太子ですわね。凶悪顔でなければ完璧ですけど気の毒ですわね。
「カーディナル殿下は、ダンスがお上手ですわね。」
ダンスを忘れがちな私を、さり気なくリードしてくださいましたわ。
「え?そうですか?自分では分かりませんが、喜んでもらえたなら嬉しいですね。」
あ、凶悪さが増しましたわ。笑顔ですわね。見た目は凄い顔ですけど。
「ええ、とても踊りやすかったですわ。でも、久し振りに踊ると疲れますわね。」
もう、踊りたくないですわ。一度で満足ですから後はゆっくりしたいですわね。
「少し休憩しましょう。テラスの方に行きませんか?」
カーディナル殿下は、私の気持ちが分かるのかしら?楽でいられますわ。
「そうですわね。少しゆっくりしたいですわ。」
気が利く男の人は素敵ですわね。前を見ると旅の途中で会った、ストーカー男のフリード様がいました。思わず、カーディナル殿下の後ろに隠れてしまったほどです。
「シリスティア!どうしてここに?」
カーディナル殿下を、盾にしながら話しましたわ。
「フリード様こそ何故いらっしゃるのですか?」
会いたくなかったのに最悪ですわ。旅での嫌な記憶が頭によみがえりましたわ。
「私はこの国の皇太子だからだ!」
ファンディー国の皇太子!だからいつも上から目線だったのですね。それに、何を怒っているのかしら?変な人だわ。
「え?殿下ですか?」
信じたくないですわ、叔母様の嫁いだ国の皇太子なのですか?国は大丈夫なのかしら?
「シリスティア嬢、彼は間違いなくこの国の皇太子ですが、知り合いですか?」
親しい人だと勘違いはされたくありませんわね。ストーカーは嫌いです。
「知り合いと言うより、旅の途中人助けをした時に会った人ですけど、この国の皇太子とは知りませんでしたわ。」
全く知りませんでしたし、親しくもないのに何時も呼び捨てにされて嫌な気分になりますわ。
「では、フリード殿下は親しい知り合いですか?」
カーディナル殿下に聞かれましたけど全く、一ミリほども親しくしたくないですわ。
「ええ、違いますわ。」
スッパリ言い切らせてもらいます。
「フリード殿下、シリスティア嬢を呼び捨てにするのは辞めてもらおうか!親しくもないくせに、呼び捨てとは酷いと思うが違うだろうか。」
カーディナル様は、私が嫌だと思っているのだと直ぐお分かりになりますのね。
「すまない、シリスティア嬢。私はこの国の皇太子フリード・ファンディールです。」
聞きたくない事実ですわね。面倒臭いですわ。
「いいえ、気になさらないでください。」
私に関わらないでくれたら、それでかまいませんわ。
「シリスティア嬢、向こうに行きましょうか。」
カーディナル殿下タイミングバッチリですわね。
「ええ、そうですわね。カーディナル殿下。」
フリード様から逃げられましたわ。良かったですわ。
向こうに行きかけた時、後ろから声をかけられました。
「シリスティア嬢!ここにいらしたのですね。捜しました。」
キース王弟殿下ですわ。後ろから口の悪い王子が付いて来ていますわ。
「叔父上!ここに…あ、薄情女!」
薄情など人聞きの悪いこと言うなんて、ダメな所は直っていませんのね。思わず声が低くなってしまいましたわ。
「キース王弟殿下、何か御用でしょうか?」
この厄介な王子を連れて向こうに行ってくれないかしら?それに謹慎は解けたのかしら?
「いえ、この間のお詫びを言おうかと思いまして捜していました。」
お詫びはもういいから、関わらないでくれないかしら?迷惑ですわ。
「シリスティア嬢、キース王弟殿下と知り合いですか」
叔母様の知り合いで私の知り合いではないですわ。
「叔母様の知り合いですわ」
もう、知らない人と言った方が正しいのかもしれませんね。立ち止まった間に、フリード様も近くにまた来ています。
「キース王弟殿下、フリード殿下、シリスティア嬢は疲れております。休ませたいので失礼します。」
この二人に付きまとわれるのは嫌だわ、カーディナル殿下は分かってくださるのね。助かるわ。