元旦那様side
次の更新は23日です。
私は王女を娶るため伯爵の爵位を授けられた。王城での舞踏会に出かけた時、元妻の話を聞いた。沢山の求婚者がいるらしい。
堂々たるメンバーで私では太刀打ちできない位の地位と権力を持った男達が群がっていると元妻の兄が言ってきた。治癒の事を知ったこの国の貴族や他国の王族や貴族が自分の正妻にと、沢山の打診が来ているようだ。
「ラウネス伯爵、貴方のお蔭で妹は素敵な出会いができ、父や叔母や叔父が相手を選ぶのに苦労しているらしいですよ。」
私と離婚して良かったのだと嫌味を私に言ってきた。私は知らなかったが元妻は魔法が使えおまけに治癒まで使えると、この事は内緒だと別の人に聞いたのだ。情報が何処からか流れてきて誰もが知っている。
「伯爵は損をしましたね。貴方の元奥様は治癒の使い手だと言うではありませんか。王女などより余程この国の為になる人物を他国にださなけばならないなんて、間違いだと思いたいですよ。」
貴族連中が次々文句を言ってくる。治癒を使えるなんてついさっき聞いたばかりだ!
「伯爵、貴方の責任ですよ。治癒を使える事がどれほど凄い事か、知らないでは済まされないはずです。」
勝ってな事を言うな!私に離婚するように言った人間が今更なにを言う!
「そうですよ、国の損失がどれだけになるか!美しいだけの王女など比べ物にならない!」
そんな事を言われてもどうすることもできないぞ。
「貴方が王女に手を出さなければ、我が国に有利な政策がひけたのだが全く頭が痛くなるよ。」
外務大臣が文句を言っている。私好みだったのだ仕方ないだろう。向こうが言い寄ってくるのだから。
「あんなに素晴らしい妻を娶りながら、ないがしろにするから損をする事になる。」
宰相でさえ離婚を勧めた本人の癖に、治癒を使えると知ると手の平を返したように文句を言ってくる。皆、勝手なことばかりにうんざりする。私の趣味ではない妻を娶らせられたので興味がなくて当たり前なのだ。
だから私が悪い訳ではないはずだ。私を責める彼等が間違っているのだ。
「私達は伯爵のお陰で大損ですよ。悔しくてならない。」
勝手な事ばかりを言う連中だ!元妻が治癒を使えるなら、もう一度私の言う事を聞かせればいい。どれほど地位が高かろうが権力者だろうが私を好きなはずだ。あの我が儘王女と別れる事もできそうだ。利用したい貴族連中も、文句など言わなくなるだろう。
「アルバート!何処を見ているの!またよその令嬢に視線を向けるなんて浮気者!許さないわ!貴方は私だけを見ていたらいいのよ!余所見するなど間違っているわ!」
もっと大人な対応ができる女性だと思っていたが大間違いだ。我が儘で扱い難い。
「見てなどいないさ。信じて欲しい。」
騙されてくれるといいのだが、疲れる女だな。自分がちやほやされるのは許せても、私に女性が近付くのは許せないらしい。
「分かりましたわ、信じます。でも、忘れないで私は王女なのよ!身分の下の者に貴方を取られたなんて国元で恥になるわ。美しい私は崇められて当然なのよ!」
結婚後分かったが、今の妻である王女は凄い我儘な女で嫉妬深い。少しでも視線を他の女性に向けると、鬼のような顔で嫌味を山のように言ってくる、百年の恋も冷めると言うものだ。非常に面倒臭い女だった。私好みは身体だけで性格は悪いようだ。
私の知り合いの女性に対する態度はとても淑女とは言えない。普通の付き合いの女性にも敬遠されつつある。幾ら元王女でもやり過ぎだ。もう愛する思いの欠片も残っていない。
元妻は私のする事に文句一つ言わない、物静かで 控えめな女性だった。今考えればいい女だったのかもしれない。
逃がした魚は大きかったが取り戻せば問題ないな。待っているといい!捕まえるのはきっと私だ。他の者達を羨ましがらせてやるだけだ、文句を言った者達にも謝らせてやる。美しさしか取り柄がない王女を捨てる日も近いかもしれない。