第九十話
次回更新は2月13日朝です。今日は遅くなってごめんなさい。
魔族姉妹の登場に舞踏会は混乱の極みです。隅に寄って皆ぶるぶる震えています。会場がぐしゃぐしゃになりました。横を見るとカーディナル殿下の顔が凶悪から大凶悪顔に変わっています。それを見た人達が声もなく固まってます。
「…君達は、私に恨みでもあるのか!」
「「「ひっっ!」」」
カーディナル殿下の怒号が響きました。流石に、カーディナル殿下の様子を見た魔族姉妹が真っ青になり、ぶるぶる震えながら抱き合って怯えています。こんな事しなければ良かったのに。
「何をしにここに来た!私の婚約発表を台無しにした責任を取って貰おうか。」
普段は凶悪顔を恐れられている為、余り怒りを顕にした事のないカーディナル殿下が怒り狂ってます。その姿を見た人達も、二度と逆らうまいと思う位の怒り方です。今にも魔族のお姉さんを殺しそうな顔をしています。
いいえ、殺る気満々な様です。剣をブンブン振ってあちこち切れ味を確かめてますわ。テーブルとか壁にある大理石が粉々です。婚約発表をある意味一番楽しみにしていた人ですからね。それを台無しにされて怒りが頂点に達して周りが見えなくなってますわ。
「お姉ちゃん、殿下が恐いよ。僕継承諦める。」
「そうね、ごめんなさいお姉ちゃんでも無理だわ。」
破壊されていく会場を見て、魔法使いの二人の諦めの声が聞こえました。今の姿は誰が見ても恐いですからそう考えても仕方ないですね。
「ひっ、き、きゃああああああーっ!」
剣で床に穴が開いています。魔族姉妹の一人が紙一重で避けたようですが、髪の毛を切られてしまいました。
「ぎゃあああああああーっ!やめてーっ!」
妹二人がそれを見て逃げましたが、健闘虚しく河童の様な頭にされてしまったようです。
「ごめんなさーい!助けてーっ!」
髪を切られ恐怖に駆られた三人は、飛べる事も忘れて脱兎のごとく走って逃げ回っています。その後ろから笑いながら追いかけ回しているカーディナル殿下を見ていた人達は、悪夢だとかこれは夢に違いないと囁きながら、下手に動くと自分達もあぶないので、この場から逃げられない自分達の境遇を嘆いています。
「あっはははははははーっ!待て!微塵切りにしてやる!」
魔族姉妹が果敢に逃げ回ってますが、服もあちこち切られ傷だらけになり。涙を流しながら謝ってますが、カーディナル殿下には全然聞こえていません。
「ぐすっ、ごめんなざーい!ゆるじでー!」
涙と鼻水でグチャグチャで上手く喋れないようです。真っ青になった魔族姉妹がぼろぼろにされながらも体力があるだけに何時まで続く追いかけっこ。
「ぎゃあああああああーっ死んじゃう!」
「ぎゃあああああああーっもうじまぜん!びゃあああー!」
許して貰おうにも、止める人がいませんから大変です。
「可哀想なお兄様、やっと見つかったお嫁さんを披露して幸せでしたのに。怒り狂うのは当然ですわ。」
ファインシー姫がカーディナル殿下を見て気の毒そうにしています。
「殿下楽しみにしていたからな。窓から部屋を覗いたら、何時もの様に独り言盛大に言ってたぞ。」
「フライ!また覗き見してたんですか?」
「ガイ、殿下の独り言はいつ聞いても面白いぞ!昨日は、天にも登る気持ちだ。私は幸せで死にそうだ!これでいいのか?とか、お嬢様の両親に挨拶する時、顔が凶悪に見えない様にするにはどうすればいいか?悩んでいたぞ。」
「カーディナルは、そんなにもシリスティア嬢が好きなのですね。」
話を聞いて、息子である殿下を思い王妃様が涙ぐんでいます。
「それをぶち壊されたのだ。滅多に怒らないカーディナルが切れるのもしょうがないか。」
陛下が荒れる殿下は仕方ないと諦めました。
「殿下が切れるとこうなるのか、良く今迄この国の人達は助かっていたな。」
「ライ、それは当然ですよ。殿下は優しい人です、しかしこのままだとお嬢様に迷惑になりそうですね。」
「ガイ!ライ!魔族の姉妹は俺に任せろ!捕まえてくるぜ!」
「俺は殿下を止めるよ。ガイ、ファインシー姫の護衛は任せるぞ。」
青ざめている陛下や王妃様が可愛そうに感じたライ達が動いてくれるようです。このままにして置けないので、私からもライ達に頼む事にします。
「ライ、フライ、四人の喧嘩を止めてここに連れて来て頂戴。」
「「はい、お嬢様任せてください!」」
ライ達に任せれば大丈夫です。正気に戻ったカーディナル殿下と魔族姉妹と、お、は、な、し、です。覚悟してくださいね。