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物語が産まれる話

 雄雄しく、猛猛しく、世界を繋ぐ。言葉を繋ぐ。物語が産まれる瞬間の話。

 一瞬の火花と共に、幾千もの太陽が同時に呼応するように光を放つ。

 思念というには余りにも拙い、日常と様々な想いとが入り混じる。

 経験が血肉となって踊る。この人生の中で、あの経験の数々はこのためにあったのだ。

 全神経は、五感を支配しながら、ときどきシックスセンスという名の六つめの感覚を展開する。

 韻を踏み、音を作る。時には、それすらもわざと壊す。

 収まり切らなかった思念の欠片が溢れ墜ちると、世界は洪水のように流れ去り金色の大地が洗われる。

 大地は植物に満ち溢れ、とりわけ森は木々で覆われる。草花が水々しく潤い。生き物達は軽やかに動き回る。

 大空には鳥達が自由と平和を想い描いて、水の中では魚達が華やかに、静寂を切り開く。

 バランスを考えるのは、今じゃない。今、物語は進行しているのだから。 言葉に命を吹き込んで、あるはずのない表情を造り出す。

 膨張する世界の輝きと増長する感情の揺れ動き。

 それでも書きたい事の半分も書けやしない。制約が多すぎる、表現が足りない、何もかもが不足している。

 才能の限界。表現の限界。自分では書けない。書けなくて当たり前だ。

それでも物語は産みだされていく。


 物語は作られている。今、この何もない部屋で窓を閉めきって、埃っぽい床の上を、七色の風が走っていく。

 気持ちの良い位に清々しく、そして穏やかに腕が舞って言葉が増殖している。

 そして、美しい旋律の調べの中で、ピリオドが小気味良く音を起てる。

 完成だ。傑作といえるだろう。素晴らしい。

文句がつけようもない。こんなに素晴らしい物語を書けるなんて俺は天才じゃないだろうか……。


 ガバッ。布団を捲り上げる音がする。カーテンの向こうから朝の光が漏れだしている。カビ臭い布団の匂いが現実感を引き戻す。

 俺は飛び上がり、今さっきできたばかりの作品を……

「って夢かよ!!」

 作家、片山鯖一朗の闘いは今日も終わらない。一番の敵は〆切と睡眠である……。

ユメオチとベタなストーリー、こういうのはダメですか?

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