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プロローグ②
数年前、私はこの家から近い堤防沿いに捨てられていた子犬だった。茶色い北海道犬の雑種だった私を、弘明さん――浩一のお父さん――と一緒に散歩していた浩一に拾われた。飼うことに渋っていた佳子さんだったが、浩一と弘明さんに押しきられた格好で私はここの家族になった。だから私は佳子さんには気を使っているが、たぶん本人には伝わってはいない。
彼らにわかっていないことは実はまだ、ある。ここだけの話、何故か私は人間の言葉が理解できるのだ。だが、発声は無理だ。身体の仕組みはよくわからないが、人間の発声はできない。まあ、する気もないし、それを彼らに知らせるつもりもない。