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×Tough/Sense×  作者: グレイ
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第三話 「レイニー・ブルー・リヴァー」


第三話「レイニー・ブルー・リヴァー」



俺は、なんでこんなところに居るんだろう。


灼熱の太陽に焼かれながら、そんなことばかり考えていた。

雨でも降れば頭もさえるだろうに、空には雲一つ見当たらない。


真っ青の天頂へ向けて、大げさなほどの溜息を吐いた。


拭えない不安には、もう慣れてしまった。もしかしたら頭もイカれているかもしれん。

左側後方には、あの女……俺の母親を惨殺したつららがいて、そんな女に左手首を拘束されている。


全身くまなく汗がひどい。気持ちが悪いので額だけでも拭いたいが、右腕は死んでるのでつかいものにならない。


蒸散していく汗の熱気が、頭の中身を蒸していく。


ベルモットでも頭からかぶった気分だ、馬鹿野郎。




現在、時刻は午前11時半。

太陽光線はさらに強まり、温度はさらに上昇の一途をたどっている。


そんな中を、俺とつららは当てもなく彷徨っていた。

この行き場のない現状を作った元凶は、まぎれもなくつららだ。俺は恨みを込めた視線を、左後方へ向ける。


例の殺人鬼は、俺の半歩後ろを足音もたてずについてきていた。

白いワンピースの可憐な少女。流れる汗さえ涼しげな眼鏡の少女。花で例えるならコスモスのような少女。

それでいて、人一人殺すことを何とも思わない鬼畜な化け物。


名を、つららと名乗った殺人鬼。


その表情は、一貫して無表情だった。


「まだ……殺さないのか。」


「殺さない。」


「……なんでだよ。」


「……。」



俺はまた、溜息をついた。ここ二日、溜息が俺の生活から消えたためしはない。

身よりはなくなり、目の前に生命の危機。逃げることも戦うことも許されず、俺はただ恐怖の隣人の顔色をうかがいながら、街中でキョドるしかない。


できる会話といえば、こんな味気もぎこちもない問答ぐらい。


あぁ、なんて愚かだろう。なんてみじめで価値のない時間だろう。


まだここでぶっ殺されるほうがマシだと思えてくる。こんなイライラする時間に延々と閉じ込められているより、そのほうがはるかにマシだろう。

そう思えてくるほどに、俺はこの女が嫌いだ。


何が一番頭に来るかって、傍目からはカップルとして見られていることだ。


誰もこの状況を不審がらない。むしろ、たまにすれ違うサラリーマンが、うざったそうな目で俺のほうを見る。

なんでこんな美少女の横にいるのがこんな野郎なんだ。


そんな声が聞こえてくるようだ。


俺はそんな視線を感じるたびに、被害妄想とわかっていても押えきれない怒りを覚える。


俺はこんな女と関係を噂されるだけでも御免なんだ。

この女は母さんを殺した女だ。そんな女と熱愛疑惑だと? ふざけんな、そんなシナリオを考えたやつは全員まとめて殺してやる。

憎い、恨めしい、殺してやりたい、ウザい、消えろ、なくなってしまえ。


そんな言葉ばかりが、俺の脳裏を埋めている。



それでも結局、抵抗を許されない俺は、溜息をついて現実に肥えるしかない。

上空を舞うカラスが、うらやましく思えた。



「さて、こっからどうするかな……。」


俺は絶望に嘆くのをやめて、今後の行くあてに考えを巡らせることにした。


ここへ来た当初の目的はとうに潰えてしまっている。

電車に乗る前につららと出くわしてしまったからな。腕を拘束されている以上、撒くとか逃げるとかそういう次元の話ではない。


家に帰るわけにもいかない。家には結奈と先輩がいる。

彼女らにこんな奴を近づけると思うと、まだ死んだ方がマシと思えた。


警察にこの女を突き出す……という手も考えたが、すぐに却下させてもらった。

途中で抵抗されたらどうなるか、容易に想像できたからな。


この右腕じゃあゲーセンに行っても何もできない。

右腕の治療をしようにも、俺は病院の位置を知らない。

右腕も左腕も埋まっているから携帯で調べものすらできない。


八方ふさがり、さぁどうする。


そんな調子で考えあぐねていると、つららが突然後ろから問いかけてきた。


心配そうな口調だった。


「……ねぇ、モトクロス?」


「なんだ?」


「なんで腕、腫れてるの?」


「……は?」


つららの的外れな問いに、俺は思わず聞き返してしまった。


「なんでって……お前のせいだろ?」


「私……?」


振り向いてみると、つららは無表情のままきょとんと首をかしげていた。



「電車に乗るときだよ……多分もう少しあのままだったら今頃右腕とオサラバしてたとこだ。」


「……ごめん……なさい。」


つららはきょとんとした顔のままで謝意を述べた。

まるで故意ではなかったとでもいいたげな表情である。

……いや、俺からすればむしろそっちの方が恐ろしいぞ、つらら。


「早く治療しないと……。」


「え?」


つららはそう言うと、あたりをきょろきょろと見回した後、少し離れた建築現場の、鉄パイプが置いてある資材置き場まで駆けて行った。


「おい、お前、それで何を―――」


―――する気だ?

と、言い終える間もなく、俺は目の前で起きた現象に絶句することとなった。


バキンという音がしたと思うと、次の瞬間には、鉄パイプが真ん中から縦に真っ二つに分割されてきれいな半円状に加工されていたのだ。

どうやったのかはわからないが、動きは若干大振りの手刀を一撃くらわせたようにしか見えなかった。


いや、むしろそれ以外の何物でもないかもしれない。この女は、力だけで鉄パイプを叩き割ってしまったのだ。


「……これじゃ長いかな。」


つららは叩き割ったその鉄パイプの片方を、さらに手軽な大きさまでたたき折る。


「あとは……」


最後につららは、どこからか取り出した反りのない両刃のナイフで、自分のワンピースの裾を迷いなく切断した。


「これでよし……っと。」


どこか満足げな無表情のつららは、ものの1分でこしらえたそれらの材料を携えてこちらに戻ってくる。


「腕。」


「あ?」


「出して。」


言われるがままに俺が左手を差し出すと、つららはその左手に半円の鉄パイプで添え木し、そこに裁断したスカートの裾を巻きつけて固定した。

鉄パイプはひんやりとしてつめたく、熱をもった左手には心地いい感触だった。


「……できた。」


1分ちょっと待てば、見事なギプスが出来上がった。


「あ……ありがとう。」


「どういたしまして。」


つららは無表情のまま、俺の目をじっと見ていた。

少しだけ嬉しそうなニュアンス。

わずかな変化を見逃すと感情を読み取れないような、淡い表情。


……妙な既視感だ。

この表情を、俺は何度も見ている気がする。


そうだ、何故俺はこんなにこいつの無表情から気持ちを読み取れる?

この表情に、妙な覚えがあるのはどうしてだ?


「冷やすのと固定、同時にできるの……。」



それに……なんでお前が俺に親切にするんだ?

いや、この腕の原因はまぎれもなくお前ではあるのだが。


人に向かって殺すと宣言しておいて、ご丁寧に応急処置までするってのはどういうことなんだ。


訳が分からない。俺はギプスに固定された右腕を見つめたまま固まっていた。

何か大事なことを忘れている気がする。


ぼんやりと、思い出せそうで思い出せない何か。過去か、前世か、それとも夢の景色か。

その輪郭の曖昧な記憶が、なんなのかわからない。


捕まれた左手首は、異様に汗ばんでいた。




「あああッ!!」


「うおっ!?」


突然、つららが叫び声をあげた。

こいつの大声は初めて聞いた気がする。あたりの人が、一斉にこっちに視線を向けるほどの大声だった。


「……。」


「ど、どうした?」


つららは口をマヌケに開いたまま硬直してしまっている。

故障でもしたのか、ロボット女。


「おい……? だ、大丈夫、か?」


しばしの沈黙。

10秒ほどの時間が経過し、ようやくつららは戻ってきた。


口が、ゆっくりと動く。


「……おなかが、すいたみたい。」


直後、ぐるるとつららの腹の虫が鳴いた。


「……。」


「……。」


「飯にするか。」


「……。」


俺たちは、周囲の目線を背に受けながら、そそくさとその場を後にすることにした。







それから俺たちは、大通りに沿って適当な飯屋を探すこととなった。

ちょうど飯時だ、どこも混み合っているが、できればあまり待ち時間がない場所がいい。


待ち時間が長いと手持ち無沙汰になってしまう。

この女との待ち時間を有意義に過ごせるほど、俺は無神経ではなかった。


まぁ、幸い日差しも雲が出てきたおかげで弱まっているし、待つのもさっきよりか苦ではないがな。



30分ほど練り歩いた俺とつららは、最終的に大手のイタリアンファミレスに落ち着いた。

運よく空いていたのは助かった。飯時にすいてるファミレスがあったことには驚きだったが、まぁ細かいことは気にしないのが男ってもんだ。


俺とつららが通されたのは、大通りに面した窓際の喫煙席だった。

なかなかに開放的で、気分がいい。


しかし、つららの気分は、現在の天気と同じく曇り空なようだった。


「財布、持ってない……。」


「あ?いいよ、腹減ってんだろ?奢るって。」


そういいながら、冷たい水を喉に流し込む。

夏場の屋内は本当にオアシスだな……冷房がきいてて涼しい。


憎しみも恨みも今は言いっこなしだ。腹が減っては戦はできぬ。

席について左腕が解放されただけでも、さっきまでより格段にマシだ。


「でも……。」


「つべこべ言うなって、ほら。」


俺がメニューを差し出すと、つららは目をそらしてうつむく。


「……。」


「……。」


「ティラミス。」


「は?」


「……ティラミス。」


すっかり縮こまったつららは静かにそうつぶやいていた。

冷房がきいてるのに、頬はやけに赤い。


「……飯を食えよ。」


「何を食べたらいいのか、わからなくて。」


だから一番おいしそうだった物を選んだと?

大した偏食ぶりだな。


「いつもは……レーションばっかりだから。」


レーション?

って、軍用携行食品のことだよな……?

いっつもそんなもんばっか食ってるのか……。


「ってことはお前、軍人かなんかってことか?」


「……。」


つららは少し首をかしげ、きょとんとした。


「……私は軍人じゃない。」


「じゃあなんだったんだ?」


「……ごはん、頼みましょう?」


どうやら誤魔化したい話題のようだ。

つまり、バレてはいけない身分ということ。


一体何者なんだろう。あんな握力、人間には無理なはずだが。


俺は内心で疑問を燻らせながら、呼び鈴のボタンを押した。


少しの間をおいて、テーブルに店員が駆け付ける。



「お待たせしました、ご注文をお伺いいたします。」


俺の頼むものはもう決まっている。メニューを見る前から決めていた。

大体ファミレスなんて割高なところで食事するんだ、頼めるものも限られているからな。


「ミートドリアとドリンクバーで。」


280円。安くて美味いこの店の看板メニュー。

あとドリンクバーも外せない。ここと提携しているドリンク会社がペプシコーラだからだ。


「ミートドリアとドリンクバーがお一つ。」


「……私も、ドリア……。」


つららは遠慮がちな声でぼそっとそれだけ言った。


「あと、ティラミスで。」


「えっ?」


「ミートドリアがおふたつ、ティラミスがおひとつ、ドリンクバーがおひとつですね、以上でよろしいですか?」


「あの―――」


「お願いします。」


「かしこまりました、ドリンクバーのドリンクはご自由にお持ちください。」


「あっ……。」


店員は、つららの困った声に気付かないまま去って行った。



「……どう……して?」


「食いたいっつったのはお前だぜ。」


「……。」


つららが俺をジトリとした目で見ている。

無表情なのに気持ちが分かってしまうって……なんか気味が悪いな。


「お前は何を恥ずかしがってるんだ?」


「……! 恥ずかしくなんか……!」


「顔、赤いぞ?」


「…………。」


「まぁいいけどさ。」


黙り込んでしまったつららをよそに、俺はドリンクバーにコーラを取りに行くことにする。


「どこに行くの?」


「飲み物とってくるだけだ。」


「私も行く。」


「え? いや、いいよ。」


「監視の任務があるから……。」


「……。」


「……ダメ?」


「はぁ……勝手にしろよ。」


「……うん。」



そういうわけで、俺はつららを連れたままドリンクバーへ赴くこととなった。


どうやらつららはレストランにすら来たことがないらしく、ドリンクバーの仕組みにも興味津々であった。

今時レストランに行ったことのない人間がいるとはな……。

一体どういう環境で育ってきたんだろうか。俺にとってはどうでもいい事柄であるが……なんとなく気になる気はする。


つららがドリンク充填機に続いて目にとめたのは、コーラだった。

俺たちがドリンクをついでテーブルに戻ってくるやいなや、開口一番で俺がチョイスしたコーラについての質問をしてきた。


「……その黒い水、何?」


「あ? コーラだよ、ペプシコーラ。」


「飲み物?」


「あぁ、一口だけなら飲んでいいぞ。それ以上は出費がかさむからダメな。」


「うん。」


コーラがなみなみ入ったコップを渡すと、つららは不思議そうにまじまじとコーラを見つめ、それからコーラを両手持ちで少しだけ啜った。

途端に、目つきが変わる。


「……。」


「……どうだ?」


「すごく……おいしい。」


「……そ、そうか……そいつはよかった。」


どうやら気に入ったらしい。

表情は変えていないが、コーラを見る目が心なしか輝いて見える。



「……ドリンクバー、もう一つ追加するか?」


「……ううん……大丈夫。」


つららはそのままコップを俺の方に差し出すと、自分の水を手に持って、今度はそれを飲んだ。


「水も、いつもよりおいしいから、いい。」


「……そうか。」


追加してくれたら俺がそのコップで間接のアレをすることもなくて済んだんだけどな、とは言えない。



「……そういえばそうだ、あれからずっと気になってるんだが。」


「?」


「電車の時の話だよ、なんで電車の中で、その……えっと……あのだな……」


「キスのこと?」


「ぶっ!」


そんなにストレートに言うなバーカ!恥ずかしいわバーカ!バーカ!

……と叫びたい衝動に駆られるが、現実では怖くて言えない。


「……そ、それだが、なんで?」


「?」


「いやだから……なんで俺とキスしたんだって聞いているんだよ。」


意識していないのに目が泳ぐ。

恥ずかしいのだ。正直キスなんて言葉を発するだけでも背筋がもぞもぞとこそばゆくなる。


たとえ実の母親を殺した憎き女だろうが、キスはキスに変わりない。

理由や動機が気になるのは、男として自然なことである。


無論、突然の告白みたいなロマンチックな答えは俺も予想していない。

それでも理由を知りたがる知的好奇心は止められないのだ。


結局適当に誤魔化されるのだとしてもな。


お得意のだんまりで通される確率は、ほぼ100%といってもいい。


つららはどうやら言えないことを山ほど抱えているらしいからな。

突然脈絡もストーリーもないキスをかましやがったんだ。あれは絶対にやらなければならない行為だったのだろう。


だとすれば、あれが何かのスイッチになっていることは容易に想像がつく。

ならば言えないはずだ。そうに決まっている。


まさか体内に超小型爆弾を!


……って、ねーな。それは。


なんて妄想を膨らませて楽しんでいた時だった。

つららは、にわかにその口を開くと、俺の目をまっすぐに見つめて、キスの理由を説明し始めたのだ。


「……あれは、注入作業。」


「は?」


「ナノマシンの、注入作業。」


「……?」


その言葉で、俺はめでたく本日2度目の絶句に陥ることとなってしまった。

その瞬間から呼吸することを忘れたほどだ。


突然、SFでしか聞いたことのないような単語を耳にして、理解が追いついてこない。

一体何の話をしているんだ? 現実の話をしているのか?


一瞬で妄想の海はすっからかんの空洞穴と化し、俺の脳内には天文学的な量のクエスチョンマークが浮かんでいた。


やっと言葉らしい言葉を紡げたのは、それから5秒ほど経ってからだ。


「……ナノ……マシン?」


「そう。」


つららは、まるで当たり前のことを話しているような顔つきでそう言うと、水を一口啜る。



「私の体内にある、滅菌及び自己再生用のナノマシンを、唾液と共に君の体内へ送った。」


「……。」


「ナノマシンは君の筋肉が発する電気で稼働し、全身の傷病の自然治癒を高速化し、また抗原物質の無毒化を常時発動する。また同時に注入したナノマシンコロニーによって、体内の鉄分などからナノマシンが毎日一定量生産される。」


「……つまり?」


「簡素に説明すると、当分の間、疾患への耐性と傷の再生速度が著しく上昇する。」


つららは突然におしゃべりになっていた。

教科書をそのまま朗読しているのかというほどに、惑いなく堅苦しい声。


「……。」


「……。」


「……。」


声がどうしても出ない。

知らぬ間に体内に得体のしれない物をブチこまれた?


怒りよりなにより、今すぐ全身を三枚に切り開きたいような衝動を感じる。

いったい俺の体をどうするつもりだ?

モヤモヤとした黒い妄想ばかりが脳裏を埋めていく。


効果を聞いているかぎり悪い影響はないようだ……しかし、ナノマシン?

どこかが実用に耐えうる物の開発に成功したなんて話は聞いたことがないし、そんなものがあるならとっくの昔にノーベル賞だ。

信じがたい……アングラにもほどがある。


それに、確かナノマシンにはグレイ・グー……無限大量発生の危険もあったはずだ。それは解決されているのか?


とにかく、そのナノマシンとやらがなんなのか、もっと詳しく知る必要がある。

何故そんなものを俺の体内に容れる必要があったのかも含めてだ。


幸い俺の体は今のところいたって快調、食欲もゴキゲンである。

質問攻めにできるぐらいの暇はあるはずだ。


俺は不全を騙る声帯を叱咤し、冷静になることを意識しつつ質問を始めることにする。


「それは、体に悪影響とかあるのか?」


「ない。まったくの皆無。」


「バグッて増えるのが止まらなくなったりは?」


「それもない。一日に一度、コロニーは初期化されるようあらかじめ設定されている。グレイ・グー発生確率は限りなく0に近い。」


「じゃあ……ナノマシンの効果で、俺にお前みたいな異常な筋力がついたりするのか?」


「それもありえない。このナノマシンはあくまで免疫、自己修復機能の増強、補完のためのもの。確かに全身の修繕が加速することから、筋力強化へのアドバンテージは多少存在するが、私は全く別の方法でこの力を付与された。」


こいつの言葉を信じるならば、かなり安全だし便利なもののようだな……。

少なくとも、俺を殺すためのものではないらしい。


「んじゃあ、お前がその力を手に入れた方法っていうのは?」


「……言えない。」


言えないようなヤバいことっていうことか。



「それじゃあ違う質問にしよう、何故そんなもんを俺の体内に?」


そこが今、俺にとって一番解せないポイントであった。

ナノマシンが無害で、むしろ健康的な代物なのだとすれば、何故それを俺の体内に注入する必要があった?



その問いに対するつららの答えは、俺の思考をさらにかき乱すものとなった。


「……あなたの身の安全を確保するため。」


ピクリ、と、頭の血管が脈打つ感覚。


「……はぁ?」


体の芯の方に抑え込んでいた怒りが、その一言で再燃をはじめた。


この女、今の俺の状況が安全だとでも言いたいのか?

俺は今日一日、一瞬たりとも安全であったことがない。この女のせいだ。


俺の安全を今一番脅かしているこいつが、俺の安全の保障だと?

笑わせるなよ化け物め。


俺は右の拳を強く握りしめた。

痛みはもう、なくなっている。


ナノマシンの効果は如実に現れていた。


「そのナノマシンは私のナノマシンと同期状態にある。あなたの危険を、ナノマシン越しに私が察知できる。」


「……だから何だと? 今、俺の安全を損なってるのはお前だ……。」


「……。」



つららは、少しうつむいた姿勢のまま瞳を閉じた。

しかし、説明する口を休ませる様子はない。



「でも、あの場合、ああすることが最善だった。君と君の母親は、2か月前から命を狙われていたから。」


「……!?」



命を”狙われていた”?



おい、何の冗談だ、俺の命を狙っているのはお前の方じゃあなかったのか?


「君の母親……鈴木 亮子は、あのタイミングでは殺す以外に選択肢が存在しなかった。」


「待て、お前は何を言って――」


「彼女の体内に保管されていた鍵を、彼らに渡すことは許されなかった。」


……鍵……だと?


いよいよ訳が分からなくなってきた。

お前はいったい何を言っているんだ?

内と外との気温差で頭の中でもやられたか?


つららはただ、うつむいたまま固まっている。

そこから先の核心の部分については、それ以上何も言おうとはしない。


「……鍵って……なんのことだよ……なんのことだ、そいつは!」


「……言えない。」


「言えない……またそれか……!?」


「……。」


「勝手に人の親殺しておいて、理由の説明すらまともにできないのかお前はッ!?」


「……。」


「なんとか言えよッ!」


俺は怒りのあまり、テーブルに手を叩きつけて叫んだ。

だが、そこまで言って気が付いた。


つららは言えないといいつつも、どこかさびしげな、言ってしまいたいというような顔をしていた。

本当にそう思っているかなんてことは俺には分からないことではある。が、俺は、少なくともつららをこれ以上問いただしても時間の無駄なのだと、その表情で悟ったのだった。


深く溜息をついて、コーラを喉に流し込む。

あぁ……いいよ。耐えてやるさ。

いつか暴いてやるさ。この謎も、モヤモヤも、つららの言う”安全”とやらも。


そんなことを考える俺は、ただ、逃げているだけなのかもしれないけどな。

でも、俺はただ耐えるしかないんだ。


分かってる……逃げてやるさ。自分の気持ちから。

大人になるって、そういうことなんだろ。



「お待たせしました、ミートドリアがお二つになります。」


そうこうしているうちに、ウェイターが注文していたドリアを持ってやってきた。

ウェイターはテーブルの上に運んできた料理を丁寧に並べる。その間も俺とつららは無言だった。


「……。」


「……。」


「あの……何か……トラブルですか?」


「何でもないです。行ってください。」


「は、はぁ……。」


俺がぴしゃりとそう告げると、ウェイターは気まずそうにそそくさと去っていった。

とても緊張しているらしく、足取りが危なっかしい。

多分厄介な客……つまり俺ら……の対応であがったのだろう。新人だろうか……。


なんとなく、つららとの会話気まずくなっていた俺は、気が付けばそのウェイターをなんとなく目で追っていた。目の前のつららの方に視界を割くのが、なんだか嫌だった。


その間、ウェイターは、帰り際に咥えタバコの男にすれ違いざまにぶつかっていた。


「きゃっ!」


「おう?」


咥えタバコの男は、ウェイターの身長より頭一つ抜けるほどの大男だった。

この距離からでも威圧感を感じる。身長180cmはくだらないだろう。


無論、新人のウェイターがビビらないわけもない。

ウェイターは、何度も何度もすいません、すいませんと頭を垂れていた。


そんな景色を何気もなく眺めていると、今までだんまりだったつららが、突如として口を開いた。


「……リヴァー……?」


リヴァー……?

何のことだ。

俺がつららのほうに目をやると、つららも俺と同じくウェイターの方に目をやっていた。



俺はつららの視線を追って、もう一度そちらの方向へ目を見やる。

ウェイターはすでにその場を去っていた。


そこに立っていたのは、咥えタバコのさっきの男だけ。

サングラスをかけ、外国製の紙巻タバコを加えた、ベージュのコートの大男。


その男はこちらに気付くと、にやりと口角を持ち上げて笑みを作った。


「よぉ、つらら。」


男は歩きながら、親しげにつららの名を呼んだ。

どうやら、この男はつららの知り合いらしい。


もしや、つららの仲間か何かだろうか?

俺はこっそりと、つららの顔色をうかがった。


「……何の用?」


つららは相変わらずの無表情でその男を見ている。

……いや、もっと……いつもの無表情ではなく……さらに……さらに何もない、のっぺらとした顔。

全くの無。


真顔そのものという顔だ。


つららとこの男の間柄は、どうやら少し複雑らしい。

二人は何も語りはしないが、言葉ではなくその重苦しすぎる空気圧で、俺はその場の雰囲気をなんとなく感じていた



「―――つれねぇなァ。」


紫煙をくゆらせ近づいてくる大男。



「……。」


「ほんと、つれねぇよ、あんた。」


男の歩みは、俺たちのテーブルの前で止まった。


明らかに周囲の人間とオーラが違う。つららのそれとはまた異質なもの。

俺はスピリチュアルな勘についてはからっきしの部類だが、そんな俺でも肌で感じる血の波動。


やはりこいつはつららと同類の……化け物だ。そんな確信にも似た直感がある。


クソ、なんなんだ、俺を狙っているのが組織だというのは薄々勘ぐってはいたが、こんな連中がこれからもゴロゴロ俺を監視に来るのか?

秘密結社か地下産業か、そういった空想の存在が現実にあるとでも言いたいのか……?


あぁ、こういう想像が簡単にできるあたり、俺は立派な厨二病かもしれん。だが今は、そんなことはどうだっていい。

警察でも特殊部隊でも正義のヒーローでもいい、哀れな一般人でしかない俺がこんな目にあっていていいのか?早く誰か助けに来てくれよ。なぁ。



「……お前がモトクロスか。」


男は、つららとの無言のやりとりを終えると、今度は俺に向けて声を投げてきた。


「……あんたは?」


「名乗るほどのもんじゃあない。ただのしがない殺し屋さ。そこの女と同じでな。」


そういって、男はテーブルの灰皿を引いて、そこにタバコを押し付けた。

……殺し屋……。


男は、にかっと胡散臭い笑みを浮かべながら、左手を俺の方に差し出した。


「そんな顔すんなって。ほら、仲良くしようぜ?」


人のよさそうな、だがどこかキナ臭さを感じさせる笑みを浮かべる男。


信用するには値しないが……少なくともつららよりかは人間的な会話はできる。

とりあえず今は握手の申し出を受け入れたほうがよさそうか?

つららの仲間であるのであれば、俺を殺す気は少なくともないはず。


ならば別に警戒してもしかたがないか……。


そう思った俺は、男が差し出した手に左手を差し出す。





刹那、料理の乗ったテーブルが、衝撃とともに弾け飛んだ。




「―――ッ!?」



爆音と、破裂音と、激しい衝撃波の雨。


気が付けば、色が視界の中で幾重にも重なっていた。


足首をつかまれる感覚。

火薬が炸裂するような音。

ガラスの砕破される音。

悲鳴と騒々しい物音。


落下する感覚の後の、落着したような鈍痛。


何が起こったのか分からない。そこはすでに、俺の理解の範疇を超えていた。



「チィ!」



建物の中をさらに銃声のような音が響く。

阿鼻叫喚があたり一帯を飽和している。


状況が飲み込めない。


何だ、どうした、一体何がどうなった?


俺は今どうなっている? 

もしかして死んだ?


つららは? 男は?


揺らめく視界の中で、俺はあたりを見回す。


俺はさっきまでテーブルがあった場所に倒れていた。

さっきまで料理を乗せていたテーブルは、男が居た方向に横たわっている。

まるで盾になったように。


須臾、つららが視界にフェードインしてきた。


ピントのぼけたつららは、俺の顔を覗き込んでいる。と思うと、つららはそのまま俺の体をヒョイと持ち上げ、小脇に抱え込んでしまった


「なにを――ッ」


次の瞬間に響いたのは、機関銃が連射されるような銃声だった。

それを尻目に、つららは俺を小脇に抱えたまま割れた窓へとダイブする。


直後、鉛の雨が真昼の街中に降り注いだ。



大通りは一斉にパニックの渦と化す。


視界は滅茶苦茶、雑音もひどく、周りの状況はうまく把握できない。それでも悲鳴だけは鮮明に聞こえてくる。



「がッ!」


全身に衝撃。激しい上下動に三半規管が悲鳴をあげている。

どうやらつららが着地したらしい。

腕で固定された下腹部から、押しつぶされたようなうめき声が思わず漏れ出た。



「……チッ。」



銃声が止むと、後方から盛大な舌打ちの音が聞こえた。


「邪魔すんじゃねぇよッ!」


首を捻って声のする方へ視線を向けると、レストランの窓枠の上にさっきの男が立っていた。


右手には物々しい鈍色の機械。俺は詳しく知らないから種別はわからないが、その機械はまぎれもなくマシンガンだった。アサルトライフルなんて生易しいものじゃない。もっと威力も連射速度もある、ベルト給弾式の重機関銃だ。

男の表情を伺うと、さっきと変わらぬ胡散臭い笑みのままだった。しかし、サングラスが外れて露わになった瞳は、異様なほどに冷めきっている。



「……これは、どういうつもり?」



つららはこの状況に至っても平静を崩すことはない。

静かな声で男に問いかけ続ける。



「リヴァー、あなたの仕事は彼の殺害ではない。私の監視のバックアップのはず。」



リヴァー……つららがそう呼称する男は、窓枠から飛び降りると、乱れたコートの襟を合わせながら、その手に携えた機関銃をこちらに向けてきた。


「つららよぉ……わざわざそんな奴を俺たちが監視してる必要なんてねぇ、とか考えたことはねぇか?」


男はなおも冷たい眼で俺の方を見ている。

躊躇もくそったれもない目だ。人を殺すことなど朝飯を作るために卵を割る程度にしか考えていない野郎の目だ。


リヴァーはさらにこう続ける。


「俺はうんざりなんだ。 使うかどうかも分からねぇ人質に、そんな虫ケラなんぞに無駄な労力を割かれている……俺は無駄って言葉が一番嫌いなんだ!」


「独断行動は、重罪対象。」


「上等だ! んな退屈な仕事してるぐらいなら罰でもなんでも受けてやるよ!」


何だ、この男はいったい何を言っている?

人質? 人質と言ったのか? 俺が? 誰の人質なんだ?


「邪魔するってんならテメェも殺すぞ、つららッ!」


男はためらうことなく機関銃の引き金を引き絞った。


刹那、容赦のない凶弾の嵐が、俺たちに向かって突っ込んでくる。


つららは俺を抱えたまま、白いワンピースの裾を翻す。

襲いくる銃弾のシャワーを縫うようにかわし、そのまま細い路地へ、俺を連れて逃げ込んでいく。



「モトクロス、無事?」


「無事もクソもねぇだろッ!なんなんだよあいつはッ!?」


半べそをかきながら、俺は叫んでいた。

事態が一向に飲み込めない。


なんで俺はこんなことに巻き込まれてるんだ? 俺は全くの無関係だ!

ケンカやドンパチなら、もっと遠くでやってくれ!


俺に被害のないとこで、気が済むまでやっててくれ!

そしてどっちも死んでしまえばいいんだ!


「今はとにかく逃げるわ。捕まってて。」


つららは全速力で路地を抜けていく。

人一人担いでいるというのに、つららは超人的な速度で走っている。

おそらく70km/hくらいの速度は出ているのではないだろうか。


「逃がさんぞッ!」


後ろからリヴァーと銃の声が聞こえてくる。

声の方向を確認すると、リヴァーもこちらとほぼ同じ速度で走って追ってきていた。


重機関銃を乱射しながらこの速度で走っているって ……はは、こいつら、冗談だろ。



「少し揺れる。」


ふと、つららがポツリとつぶやいた。


「あ? 何?」


答えは帰ってこない。

いや、帰ってくる必要もないほどに、その言葉の意味はすぐに理解できた。


つららは路地の脇のビルの壁に足をかけ、その壁の上を走り始めたのだ。


無論、小脇に抱えられた俺ももれなく離陸する。


走っている中でも高度はみるみるうちにあがり、目下の地表はぐんぐんと遠ざかっている。



「ちょっ……!」


壁の上を走るなんて、いつの時代の漫画だよ……ナンセンスすぎる!


「顎、気を付けて。」


またもやつららがぽつりとつぶやく。

刹那、俺達は鳥になる。



つららはビルの壁を蹴って、向かいのビルへと飛び移ったのだ。

精密かつ力強い跳躍だった。


体重約56kgの俺を抱えたままで、それでいてなお有り余るほどの脚力。

つららと俺は、軽々と向かいの壁までたどり着いてしまった。



「チィッ!」



眼下で微かにリヴァーの舌打ちの音が聞こえる。

重機関銃は取り回しが悪い。この速度で移動する上空の物体をとらえることは不可能といっても過言ではないだろう。

一直線の路地なら軸も合うってものだが、こう3次元に動かれれば、どんなガンマンでも太刀打ちできるはずもない。


まぁ……銃弾なんかに当たらずとも、俺自身がこの衝撃に耐えられなくて死んでしまいそうなんだがな。

激しい上下動に、衝撃や回転は、もはやジェットコースターなどの比ではない恐怖と浮遊感を生み出している。


そんなものに強制連行されているのだから、吐き気を催すのは至極当然と言っておこう。

たとえ絶叫マシンが得意な奴でも、3分あれば余裕で嘔吐できる。俺が保障しよう。



そんなありえないマニューバ飛行を体験した先でも、つららは休ませてはくれない。

ジャンプした先で、またはす向かいのビルへとジャンプ。


まるでサルが木の上を移動するように、ビルの谷間を跳ね回る。


4、5回跳んで、俺たちは少し大きめのビル屋上へたどり着いた。



「つらら……ダメだ俺……もう限界……」


「もう少しだけだから。」


優しさも容赦もなく、つららは再び、ビルの屋上から特大の跳躍を行った。

目の前を高速道路の高架線が通り過ぎていく。全身をびりびりとした恐怖と、もったりとした浮遊感に襲われる。


リヴァーが追いかけてきていることなどもうどうでもいい……。

この吐き気と浮遊感さえなんとかなりさえすれば、もうどうなったって、死んだっていい……。



しかし、次の瞬間、そんな吐き気や気持ち悪さは、一挙として消え去ることとなった。



グチュッ、という不快な音がした。俺を抱えるつららの体が強張る。


視界の隅に、赤黒い液体がかすかに見える。

おそらく、つららの血液だ。


リヴァーの放った銃弾が、つららの体を貫いたのだ。


ここは上空。高架線の真上。


そんな場所だというのに、つららの体には現に銃弾が直撃している。

馬鹿な、ありえない。こんな場所の俺たちをどうしたら捉えられる?


高度は見る間に落ちていく。


つららの歯噛みの音が、風の中わずかに聞こえた。



高架線を超えた先には川があり、その川に隣接して製紙工場がある。

おそらく俺とつららが落着するのはその境にある土手だ。



しかし、俺がその方向に目をやった時、本日3度目の絶句を宣言することとなった。


そこにはすでに、リヴァーの姿があったのだ。

先ほどの重機関銃は持っていない。


持っていたのは拳銃一丁だけだったのだ。

なるほど、重さを捨て、銃を撃つこともやめれば、つららと同等の運動能力があるなら先回りも可能かもしれない。

先回りさえ成功してしまえば、リヴァーは俺たちの落下に射線軸を合わせて狙い撃つことも可能になる。


それにしても拳銃でこの距離を狙撃だと?

あ、ありえない……。


卑しいニヤニヤとした笑いを張り付けた銃士の男は、ただ、嘲るような目でこちらを見ていた。



「ッ! ……リヴァーッ!」


つららが、どこからか取り出したナイフを、リヴァーに向けて投げつける。


正確な投擲。しかし、リヴァーは投じられたナイフを軽々とかわしてしまった。


しかし、そこに一瞬の隙が生まれる。

それを利用した俺たちは、なんとか着地に成功することができた。


「げほっ! ごほっ……おうぇっ……」


「……モトクロス、無事?」


「……気分は……害されまくっちゃいるがな……お前こそ……大丈夫なのか?」


つららの拘束から離れた俺は、まずつららの傷を探した。

白いワンピースの左肩に、真っ赤なシミがある。そこから伸びる細い腕には、おびただしい量の血が伝っていた。


俺も同じ場所がかすかに痛む。

ナノマシンが同期しているって、こういうことか……。


「……大丈夫。」


「いや……大丈夫には見えねぇぞ……。」


明らかに並みの怪我ではない。

銃弾の直撃の痛みを俺は味わったことはないが……見るからに痛々しいその傷から、相当の衝撃であることが計り知れる。



「その傷にしては見事な投刃だったぜ、つららさんよ。」


リヴァーが挑発するような声を向けてくる。

つららはリヴァーへ睨むような視線を投げた。


「……裏切り?」


「裏切り……違うねぇ、俺は別にあんたに恨みはねぇんだよ。ただとっとと仕事終わらせて帰りたいってだけだ。」


リヴァーは拳銃を余裕の表情でカラカラ回す。


「邪魔しなければ何もしないが、邪魔するってんならその可愛いお顔をハチの巣にしてやるぜ?」


川からヘドロ臭い風が上ってくる。

高架線を行き交う車の排気がそれに混じって、肺が腐ってしまいそうだ。


コンクリートの灰色に埋まる景色。


つららの瞳は、それでも曇らない。


「任務は、最後まで遂行する。」


「……つれねぇなァ。」


リヴァーが見下すような視線をつららへ向ける。


つららは、右腕を横へ突き出した。

開かれた手のひらが、かすかに青く発光を始める。


その光が腕を伝って、一瞬のうちに手のひらの上で形を成した。


あっという間に、何もない空間から両刃のナイフの完成である。

刃の真ん中が肉抜きされた、反りのない鋭利なナイフ。つららがことあるごとに取り出していたナイフだ。



「……な……?」


「モトクロス、逃げて。」


「は!?」


「逃げて!」



その言葉と同時に、銃声があたりに響いた。






遅ればせながら、第三話、完成いたしました

半ばなげやりです。今までで一番苦労しました……。


何というんでしょう、ストーリーの制約とかモトクロス君の感情の揺れ動きとか、いろいろ表現しなきゃいけないことがあってもうわぁぁぁってなってました。


なんというんでしょう。自分ほんとに感情の描写が苦手だなと思いました。

でも、とりあえず一応の完成は……できたよね!うん!


つららちゃんの描写が足りないとのことだったのですが、どうでしょう。

多少イメージを盛り込んで解説してみたりしました。

つららちゃんに関してはどうしても外見の描写を避けたかったのですが……そうもいきませんね……


では、こんな稚拙な文章で申し訳ありませんが、これからもお付き合いおねがいいたします。

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