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旅立ちの決意

(……兄弟、よく思い付いたな。そんなの)

(まぁ……切羽詰まったらパッと閃いただけだから)

 再び三人は融合してスライムマンとなり。

 そして再び広場に足を運ぶと、そこには戸惑いながらも喜び合う人間達がいた。

「魔物が引いていったぞ!」「ありがたや、ありがたや……」「何で?」「気にするこたぁねぇ!宴じゃ宴ぇ!」「酒持て酒ぇ!」「おお、エビシさんや、こっちゃ来て飲みましょや」「せやせや!」

 人間達はわあわあと叫びながら警戒を緩めて喜び合っている。

 全く、こんな所で攻めてこられたら……と思うと、人間は暢気な種族だな、と思うが……。


(それが人間の良さなのだろう)

(だな。兄弟)


 まぁ、そんなとこなのだろう。


「全く、勇者なら勇者って言ってくれれば良かったのに」

「ははは……悪い」

 僕達はひとしきり民と歓談した後、武器屋に戻っていた。

 僕は酔いつぶれたオヤジさんを担いで少し重荷ではあったが。

「エビシ、こっち」

「あ、おう」

 僕はアミカに案内されてオヤジさんの部屋へと入ると、彼の部屋のベッドに彼を寝かせた。

「ごめんね、エビシ」

「いや、今更というか……」

「そうね、お陰でお父さん、怠けっぱなし。だけど……エビシが勇者なら……いつか出て行っちゃうんだよね……?」

 アミカはどこか悲しそうな目で言う。

 そうか……勇者ならば……魔王を倒しに出発せねばならないのか……。

「ま……そうなるのかな……?」

 僕は仲間に問いかけるように訊ねると、シーが中で囁いた。

(それが建設的な案だ。いつまでもいたら迷惑ばかりかかる)

(この姉ちゃんに迷惑をかけたくなけりゃ、立ち去るが良いぜ、兄弟)

 ビーも重ねるように言う。

 確かに、その通りではあるのだが……。

(離れがたい、と思うのは仕方ない。だが、我々は元々、スライムだ。どこかで雲隠れも出来る。ここは適当に誤魔化して部屋に戻れ。で、今夜中に抜け出すのがベストだ)

 シーはスラスラと憎いぐらいに淡々と理想的な案を小声で開陳していく。

 それはどれも正しく……僕らの身分からは……そうするのが一番だと思えた。

「じゃあ、僕は寝るから……」

 僕がそう言うと、アミカはどこか寂しそうに、うん、おやすみ、また明日、と囁いた。

 そのまた明日、という言葉に僕は胸が引き裂かれるような痛みを覚えて……。

 しかし、それを顔には出さず、笑顔でその場を立ち去った。


(さぁ、行こうぜ、兄弟)

 深夜、アミカやオヤジさんが寝静まった頃。

 僕がベッドに腰掛けてぐずぐずしていると、ビーが促した。

(もう十分だろ?みんな寝ただろうし)

(ああ、酒場さえ通らなければ大丈夫だ)

 シーも賛同し、そして脚を動かして催促してみせた。

 僕は重い身体を立ち上がらせて、窓の方へと進んでいく。

(……随分、ここが気に入ったんだな。兄弟)

(気に入った……訳ではないのだが……居心地は良かった)

 僕がそう言いながら窓を開け放った。夜風が気持ちいい。酒場の方からか、騒がしい声が聞こえる。

(それが気に入ったって言うんだぜ、兄弟)

 ビーが諭すように言う。思わず僕は苦笑した。

(お前に諭される日が来るとはな)

(へへっ、俺だってそれなりに経験しているんだからよっ!)

 ビーが照れくさそうに言う。それを聞きながら僕は窓枠に手を掛け、部屋を振り返った。


 さらば……アミカ。


 僕はそう口の中で呟くと、パッと窓枠を蹴った。

 僕に宛われた部屋は二階の部屋であったが、着地する事に関しては難はなかった。

 一部を液状化して、ぐしゃっと少し音を立てながら着地すると、そこから颯爽と駆けていく。

(どこから出れば良い?)

(兄弟、そう言えば酒場の裏にちょっと大きめな建物があったな)

(穀物倉だな……よし、そこが良いだろう。少し回り込んで……む!止まれ!)

 シーはそう言いかけて、鋭く叫ぶ。と同時に脚が突っ張った。


 スライムマンは何もない路地で盛大に転けた!


 べしゃっ!

 脚が縛られたことで思いっきり倒れ込み、盛大に身体の半分を液状化させて滑った。

(な、何だよ……)

(敵だ!身体を立て直せ!)

(な……!)

 僕が即座に身体を戻すと、目の前にはスライムがそこに鎮座していた。

 見間違えられない、ノーマルスライムの青や緑のスライムではなく、黄色い色のスライム……間違いなく、ビーやシーではない。

 僕らが下級とすれば、それは中級のスライム。

「……まさか、噂の勇者が貴方達だったなんて……ね」

 嘆息混じりの声。その響きに僕は覚えがあった。

「貴様は……」

「確か……」

 シーとビーは声を漏らして……呟いた。


「誰だっけ」


「ちょっ、ひどくない!?久しぶりの対面なのにっ!?」

 痛恨のボケに黄色スライムは動揺してぷるぷると表面を振るわせた。

「ああ、そうだ、一匹スライムの……」

「ああ、なるほどね」

「そういうことか」

 僕が一つ思い出すと、ビーとシーも思い出し……そして、愕然とした。

「マジかよ……」

 その反応に満足したのか、黄色スライムは胸(どこにあるんだ?)を張って言った。

「フフフ、この私、ディーがお相手するわ」


 スライムDが現れた!

ハヤブサです。


腹減りました……。


コ●ラのマーチでも食っていようかな……?

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