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魔物の大群が現れた!

「勇者を出せぇ!」

「ぐええええっ!」

「ぎやっぽ、ぎやっぽ!」

「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃっ!」


 魔物達が騒いでいる!


「すごくうるさいね」

「ええ……本当に」

 声から察するに、人魔族、カエル族、鳥獣族、小獣族などか。

 僕は思わず後ずさりしながら、仲間達に問うた。

(ど、どうするんだよ……もはや、勇者を倒してしまった、とは言えないぜ……?)

(うむ……どうするか……)

(どうするもこうするもねえよ、兄弟……)

 ビーもシーも万策尽きたかのようだ。

 僕は必死に頭を働かせる。

(このままだと、魔物が人間の方に攻め込むか、人間側が魔物を討伐に動くかどっちか……だな)

(うむ、恐らく後者の方が先だろう)

 なるほど、辺りを見渡してみると、そこには鎧を着た人間や魔術師らしき格好の人間が集まって話し込んでいる。

(このままでは魔物側に被害が出かねない……!)

(だけどよ、兄弟、人間達を説得しても魔物が攻めてくるぜ!?)

(どうしたものか……?)

「う、ウチの街には勇者様なんていねぇだよ!」

「そ、そこの旅の方!エビシ殿!」

 すると、焦った様子の村長と道具屋のオヤジがこっちに駆けてきた。

「もしや、貴方が勇者殿では……!?」

「う……」

 もし、そうだ。と言ったら僕らは間違いなく、街の外へと放り出される。疑い深く、仲間同士で争い合う種族だから……でも、そうしたら……。

(間違いなく、魔物達に殺されるな)

 シーは冷静な声で僕の思考を読み取って言った。

 そう、そうなのだ……。だけど……。

(今度、勇者でねえって言ったら……状況が変わらず、魔物が死ぬか人間が死ぬかのどちらかだ……な)

 今度はビーがその答えを言う。

 どちらを進んでも……誰かは死ぬ……それぐらいなら……。

 しかし、僕の一存で決めても……?

(構わん、エー)

(兄弟、死ぬまで一緒だぜ!)

 すると、ビーとシーは僕の思いをくみ取って言う。

(え……良いのか?)

(あったり前だろぉ!)

(少々不本意だが……構わない。何故なら、我々で勇者エビシだからだ)

(お前ら……)

 僕が思わず感極まってしまった。

 彼らは並みのスライムより義理堅い。それ故に共に行動することも多かった。

 だが……ここまで、義理堅いとは……!

(そら、さっさと行動を起こせ。兄弟)

 ちょっと照れたような口調でビーはそう言うので、僕は甘んじて言う事にした。


「僕が、勇者です」


「エビシ……!」

 アミカは驚きで目を見開く。

「黙っていて、すみませんでした」

「いや……良いんじゃ。わしらが気付けば良かった……。では……諸君」

 村長はそう言うと、おほん、と咳払いした。


「勇者様を守るぞぉっ!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 村人の間で叫び声が上がる。

(な、何なんだ、これは……!?)

(お、俺達を売らないのか!?)

 ビーとシーは驚いた様子で言う。

 そして僕も同じであった。

 僕は恐る恐る、村長に尋ねた。

「僕が行けば良いのですから、そんな守って頂かなくても……」

「いいんや、勇者さんは守る!この世の希望であるからの!それにエビシさんはこの街でよく働いてくれたからの」

 村長は照れくさそうに言うと、村人達に指示を飛ばし始めた。

「女子供は下がっておれ!男共は石でも槍でも矢でも持って城壁へあがれ!魔物の石頭にお見舞いしてやれ!」

「うおおおおおおおおお!」

 激しい叫び声と共に男達は駆けていく。

 しかし、このままでは……!

「……あ」

 僕はそのとき、頭の中に見事でナイスな妙案を思い付いてしまった。

(ビー、頼みがある!)

(な、何だ!?兄弟!)

(お前、確かこの中で一番、足が速かったよな!?)

(あ……まぁ)

(じゃあ……)

 僕は思い付いた作戦を仲間達に開陳していった。


   ◆◇◆


 その頃、外で街を包囲する魔物達は。

「ぐええぇっ!(小ボス、中が騒がしいです)」

「ぎやっぎやっ!(人間共が攻めてくるのではないですか?)」

 カエルや獣たちが騒ぎ立てていた。

 それを聞く小ボスは手を挙げてどうどう、と言いながら周囲を制した。

 ……どうやって、言語を聞き分けているか気になるが。

「落ち着け、貴様ら。我々はここでのボス、ギガ様麾下として勇者を連れ出さねばならないのだ。ギガ様は勇者が現れたことを感じ取って、マンガやゲーム三昧、食事は一日五食共ポテチだった生活を止め、今、筋トレ地獄にいるのだ!その苦労が報われなければ、我々は……我々は………っ!」


 ……凄まじく怠惰な生活をしていたボスのようだ。

 しかも、一日五食とはどういうことなのだろうか?


 とは言わない魔物達。何故なら、ボスを想って勇者を連れ出そうとしているのだから……。


「我々が筋トレの成果を確かめるため、そして八つ当たりのためのサンドバッグにされてしまうのだ!」


 ……訂正、ボスを想っていなかった。

 ともかく、周囲にいる魔物達はうむうむと頷きを見せている。

「た、大変だぁ!」

 そんなとき、包囲の外側から声が響いた。

「ボス様んとこに勇者が現れたそうだぞおおおおおおっ!」

「何だってぇ!?今の時間帯は『テレビ魔王』の『萌え萌え☆ヴァンパイア』というアニメをギガ様は必死に見ている時間だ!まずい、ここで勇者の不意打ちにあったらギガ様はやられてしまう!全軍、引き返せぇ!」


 ちなみに『テレビ魔王』は魔物の間で配信されているテレビの局である。

 で、『萌え萌え☆ヴァンパイア』は今、魔物の間で人気沸騰中の深夜アニメである。ヴァンパイアの娘が勇者達をぼこぼこにする話で、主に男性に人気である。


「ぎやぁっ!(了解!)」

「ぐえぇっ!(おう!)」

 だが、魔物達はそんな番組をボスが見ていて良いのか!などと突っ込みもせず、従順に命令通り、街から退却を始めた。


   ◆◇◆


「ふぅ……間に合ったぜ、兄弟」

 数分後、街の隅っこでは。

 スライムとスライムマンが話をしていた。

 無論、スライムはビーのことで、スライムマンは僕とシーだ。

「すまないな。ビー」

「良いってことよ!しかし、ボスってあんな趣味していたのか……」

「どうした?」

「ああ、後で話すよ。それより、皆の元に戻らないといけねえんじゃねえか?」

「お、そうだな」

 僕は腕を突き出すと、欠けた部分にビーはくっついて再び一体化した。

(では行こう)

(おう!)

(ああ)

 そして、僕らは一体化して街の中央へと歩き出した。


(……そういや、あいつら多分ボスに大目玉食らうんだろうなぁ……)

(どうした?ビー)

(ああ、いや、今説明するが……)


   ◆◇◆


 その頃、洞窟では。


「ギガ様ああぁっ!ご無事ですかあぁっ!」

「ぐええええっ!(ギガ様!)」

「ぎやぎやっ!(ご無事で!?)」


「き、貴様らぁ……わしのテレビタイムを邪魔しおってえぇえぇ……!」


 洞窟の中で、断末魔のような声が響き渡ったのは言うまでもない。

ハヤブサです。


やば、ボスに凄まじく共感しています……!

自分で作った設定なのに……!

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