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リーベリックの街へ

「ほう、合体というのはやれば出来るものだな」

「へへっ、俺達、天才だからな!」

「いや……多分、勇者を倒したことで経験値が大幅に上がってレベルアップしたおかげだと思う……」


 スライムAとスライムBとスライムCは合体して、スライムマンになった!


「これがスライムマンって奴か……?あまり聞いた事はないけど」

 僕は身体を調節して人間に見えるように整えた。

「恐らく、そうだな。ふむ、筋力もしっかり上がっている……」

 スライムCは勝手に腕を動かしながら、感嘆の声を上げた。

「よし、身体を動かす分担を決めるか」

「あ、俺動かしたい!」

 スライムBが声を上げた。

「む、じゃあ動かしてみろ」

「おう!」

 スライムBは張り切って身体の支配権を掌握し、足を動かした。


「……あれ?動かない……?」


「お前、腕動かしている!」

「え、これは腕?あれ、足だと思ったんだけどな……」

 そのまま、スライムBは好き勝手に身体を動かすが、てんでうまく動かせない。

 そもそも、スライムというのは手足というのは存在せず、滑るように動く生き物だ。僕は割と触手を出して歩くなどと遊んでいるから感覚が分かるが、恐らくスライムBはその経験はないのだろう。

「んったく、代われ」

 僕は主導権を奪還すると、スムーズに手足を動かして見せた。

「おお……!さすが兄弟!」

「うむ、我より上手いな」

「そりゃ、どうも。じゃあ行くか!」

 僕は張り切って足を踏み出そうとすると、次の瞬間、不自然に足が硬直してその場でべたんっと倒れ込んだ。

「うぎゃっ!」

「待て待て、貴様、大事なことを忘れているぞ」

 止めたのはスライムCらしい。

 てか、そんな止め方せんでも良いのに……。

「何だよ?」

「人間というのは服を着ないと不自然に思うらしい。なので衣服を着用する必要がある」

「おお、そうか」

 僕は一つ頷いて……首を傾げた。

「どこで服を調達する?」

「この勇者の服で構わないだろう」

 なるほど、確かに。

 僕は頷きを繰り返しながら、勇者の服を剥ぎ取っていく。

 そして、それを身につけていく。

「こんな感じか……?」


 スライムマンは勇者の鎧を前後ろ逆に装備した!

 スライムマンは勇者の靴を手に装備した!

 スライムマンは勇者の冠を腕に引っかけた!

 スライムマンは勇者の盾をかぶった!

 スライムマンは勇者の剣を袋に入れた!

 スライムマンは袋を武器として装備した!


 僕は装備すると、スライムBが訊ねてきた。

「そんな装備で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」

「……一番良い装備を頼む、お前のはダメだ……!」

 スライムCがぷるぷると震えながら勝手に腕を操って僕を殴ろうとしたので僕は慌てて言った。

「わ、分かった、真面目にやるから!」


 僕は装備し直すと、恐る恐る訊ねた。

「こ、こんな装備で大丈夫か?」

「うむ、問題ないだろう」

 (シー)も了承を出す。もはや、スライムCとか言うのが面倒だからシーとかビーとかで良いか。

 シーの許可を貰ったことなので、手足をうまく動かして歩いていく事にした。

「と……そうだ、もう一つ、人間には命名という伝統的な風習があるのを思い出した」

「ん?何だってい?兄弟。メーメー?山羊か何かか?」

 シーの声にビーが聞き返す。

「命名。名前をつけることだ。つまりは名を名乗らねばならない、ということだ」

「んなの、俺達スライム(エー)(ビー)(シー)だからエビシで良いだろう?」

「んじゃ、それで良いか」

「うむ、それで良いか」

 ビーの適当な案で通ってしまった。まぁ、人間の名前も意外と適当だからな。

「えっと……こっから一番近い街はどこだ?」

「ふむ、リーベリックの街が近いだろう。勇者が最初に行くとされている街だ」

 シーの声に頷いて、僕は平坦な道を進んでいく事にした。


 大体、勇者の出現場所から最初の街は近いのが定石だ。

 何故なら、勇者は街で十分な装備を揃える前に死んではいけないからだ。

 うっかり強い魔物に出くわしたらそこでアウトだが。

 まぁ、今回の場合は不運にも僕達に出くわして、僕らの一撃が偶然、急所に当たりまくって倒してしまったのだが。

 南無。

 とにかく、すぐに僕達はリーベリックの街にたどり着いていた。

 さすが、人間の街だけあって城壁で守られており、魔物の侵入を防ぐように出来ている。

「んっと、これって門から入るんだよな……?」

「あったりめえだろ、兄弟。人間はここから入るんだから」

「貴様ら、声を抑えておけ。ここからは人間の領分、我々が魔物だとばれたらおしまいだ」

 僕とビーが話し合っていると、シーが注意した。

 そうだ、もう街に近いんだ。

 ビーは黙り、僕は少し緊張して門に向かった。

 門から入ろうとすると、その門を守っている番人が呼び止めた。

「おい、そこの」

 ぎくっ。

(落ち着け、エー)

 シーが小声で僕を落ち着けさせようとする。

 僕は大丈夫、と呟いてにっこりと笑みを浮かべた。

「は、はい」

「お前、ここらでは見かけないな」

「う……」

 そりゃそうだ、こいつが言いたいのは『お前、ここらでは見かけない[人間だ]な』と言いたいのだ。

 こっちは魔物なんだからな……!

(落ち着け、エー。ここには始めて来た、と振る舞え)

 シーの落ち着いた助言に僕は我を取り戻す。

 そうだ、僕は勇者なんだ、落ち着かなくては。

「ええ、ここには初めて来まして……」

「ほう、なるほど、旅人か。ここはリーベリックの街でな、強固な街だ。魔物が侵入する事は絶対ない。安心し給え。宿は入って広場の左の道を進んでいくとあるはずだ。同じく近くに武器屋や道具屋もある。そこでいろいろと調達し給え」

「ははあ、ありがとうございます」

 僕はその場で一礼すると、門番は満足げに頷いて僕から視線を外した。

 そして僕らは見事に街の中に侵入した。

(ふへへ、あいつ、魔物が侵入する事は絶対ない、と豪語していたのに俺達入れたぞ。兄弟)

 ビーはさも自分の手柄のように自慢げに言う。

(まぁ、それは良いんだが、次はどうしたら良いんだ?)

(うむ、まずは宿だろうな。勇者らしく振る舞うことが大事だ。何時もな)

 シーの落ち着いた声に僕は信頼感を覚えながらも小首を傾げた。

(勇者らしい振る舞いって?)

(そりゃぁあれだ、人間に優しく、でも魔物には容赦ない奴だろ?だからそう演じりゃ良いんだ)

(うーむ、なるほど)

 要は人間を守るヒーローを演じれば良いのか。

 僕らは揃って頷きながら次の目的地の宿へと目指した。

 広場に入って一番、左の道を直進、と。

 僕は慣れた感じで足を動かしていく……と、ほら、見えてきた、宿の印のついた洋風の館だ。

 大きく達筆な字で『宿!』と書かれている。いやいや、こんなに派手に書かなくても分かるだろう、全く……。

 そして、その扉を開けようとすると……。


「きゃああっ!泥棒おぉぉっ!」


 右後ろの方の武器屋から悲鳴が響いてきた。

 僕達は振り返ると、バンッと武器屋の扉が開いて僕達の方へと薄汚れた男が腕一杯に武器を抱えて走ってきた。

「誰かぁ!その男を止めて下さいっ!」

 遅れて扉から売り子らしい娘が出てきて叫んだ。

 だが、回りの人達はまごまごしているうちに男はすり抜けて僕達の方に来る。

(兄弟!)

(分かっている!)


 人間を助けよ、魔物を倒せ。


 それが勇者だ!


 僕らが道の真ん中に立つと、男は舌打ちしながら走ってくる。

 そして、何かを掴むと振りかぶって投げてきた。

「あ、あれはっ!」

 シーは驚いたように大声を出した。


炸裂弾(ファイアボム)!」


 くっ、人間が生み出した魔物討伐用の爆弾だ。なかなか手軽だが、意外に威力があるため、旅人達は常備していることが多い。

 だが、それには弱点もある。

 僕は着火された状態で放物線を描いて飛んでくる爆弾を見ながら叫んだ。

「ビー!」

「合点承知!」

 身体が繋がっている故か、全て、考えを共有出来る。

 僕らの身体の一部……ビーの部分が千切れて、炸裂弾に向かって飛んでいく。

 そして、液体状の身体でビーはそれを包み込むと、鎮火した。

「な……!?」

 実は、コレ、液体状の敵にはかなり効かない。ダメージも喰らうとすれば爆風の分だ。だから、爆発させなければ良い。

「でああああああああ!」

 そして、僕は炸裂弾が効果を失うのを見て唖然とする男に向かって少し小さくなった身体で強引に突進した。

 そのままゴロゴロと地面を転がる、そんな中、僕とシーで男を無我夢中で拘束した。

「ぐえぇ……」

(よ、よし、エー、こんなもんで良い)

 シーの声で我に返ると、僕は反射的に腕で首を絞めていた。

「おっとっと」

 僕は慌てて拘束を解くと、男はがくっとその場で気を失った。


「んまぁ、一件落着、か?」

(で、良いんじゃないか?)

ハヤブサです。


こりゃ、本格的にコメディってるな……(汗)

コメディを書ける自信がない、というか、これ面白いですか?

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