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倒しちゃった……

 どうも、スライムAです。

 水色の身体でふよふよしたジェル状の魔物である、スライムです。

 あの、よくいますよね?ド○クエでも勇者が旅立つ時に最初に倒される、あのスライム。

 あのスライム役を担われる、スライムAです。

 何よりも最弱でなければならず、そしてあっさりと倒されなければならない存在。

 ですけど……やっちまったんです。


 勇者を、()っちまったんです……。


   ◆◇◆


「どーすんだよ!これ!」

「え……良いんじゃない?死ぬハメから脱却できたんだし」

「まぁ、それは事実だがな……」


 スライムAとスライムB、スライムCはまごまごしている。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!


「だって、僕達、見つかったらセオリー通り、やられないといけないんじゃないのかよ!」

「んー、誰がそんなセオリーを作ったんだろうね?」

「魔王様だよ!」


 スライムAとスライムBは漫才をしている。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!


「楽観的に考えようぜ、兄弟」

 するとスライムBは真面目に諭すように言った。

「兄弟、死ぬのは回避出来たんだ。だったら生きるべきだ!それに勇者を討ったと魔王様に報告すれば恩賞物だろうな。俺達、とうとう魔王親衛隊の仲間入りを果たせるぜ」

「む、考えてみれば確かに……」

 僕、スライムAはふむ、と考え込んだ。

 確かに、それは得だ。魔王様も手を打って喜ぶに違いない。

「おい、落ち着け、貴様ら」

 と、スライムCが冷静な声で言った。

「何故、このような法則があるのだと思う。それはだな、絶対に魔王が勇者を倒さねばならない、という鉄則があるからだ」

「何だ、それは。初耳だぞ」

「おう、俺もだ」


 スライムAとスライムBは熱心にスライムCの話に聞き込んでいる。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!


「考えてみろ、あの自己顕示欲の高い魔王様だぞ。魔王様が倒す予定であった勇者が地方のボスならまだしも、雑魚ナンバーワンの我々に倒されたと知ってみろ。どう反応するか……?」

 んー、と自己顕示欲の強い魔王様が……。


『何を人の獲物を奪っておるんじゃぁ!貴様らまとめて地獄の釜に放り込んで煮込んでやるわぁ!ぐはははははっ!』


「ひいいいいいいいいいっ!」


 スライムAとスライムBは怯えている。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!


「お、恐ろしいな」

「ど、どうする、兄弟!お、そうだ、確か俺は倒されたときに薬草を落とす係だった。もしかしたら薬草が使えば勇者は復活するかもしれない!」

 スライムBは慌ててその液体状の身体から薬草を取り出して、勇者に恐る恐る近寄った。


 スライムBは勇者に薬草を使った!


 勇者は目覚めなかった!


「うおおおおおっ!どうするんだ!兄弟!」

「ふむ、まずは勇者を隠すのが先決だろうな」

「お、分かった。おい、ビー、そこの茂みに勇者を隠すぞ」

「お、おう、兄弟!」

 ちなみにビーというのはスライムBです。由来はB(ビー)だからです。


 スライム達は勇者を持ち上げた。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!


「よいしょ……ここで良いか」

「うむ、ここなら魔物もあまり探しにこない」

「し、しかしよぉ、兄弟、いつまでも勇者が来なかったら第一のボスが感づいて魔王に知らせるぜ?」

「た、確かに……」

 通常、この世界に勇者が出現するとそれが全体の魔物に伝わる。

 それを受けて、ただぼっとしているだけだった植物の魔物も突然、活発に動き、旅人を襲うようになるし、ゴブリンなどの魔物達も山にひっそりと暮らしているだけだが、街を襲うようになる。

 人間達は暢気なことに『魔物が凶暴化→勇者が来てくれる』という風に都合良く考えるが、実は『勇者が出現→魔物が凶暴化』なのだ。哀れな。

 でまぁ、最初のボスがだらだらと漫画ばかりを読んで過ごしていたが、勇者出現を感じ取って身体を鍛え始めるのだが、それがあまりにも遅ければ当然、そのボスは不審に思って魔王に尋ねる。

 そうしたらアウトだ。魔王は魔物達に勇者の捜索を命じて、この勇者の亡骸が見つかるのは時間の問題である!

「ど、どうしたら良いんだ……!?」

「仕方ない、大人しく自首するか」

 スライムCはすっかり諦めきった様子で項垂れる。

「な、何でだよ!せっかく生き延びれたのに!」

 スライムBは悲しそうに叫んだが、彼も芳しい解決策は思い付かないようだ。


 確かに、勇者が現れなければ絶対に魔王は勇者を捜す。

 ん……?勇者が現れなければ……?


「そうだ!」

「ど、どうした!?兄弟!?」

 突然、大声を出した僕にスライムBが驚きながらも期待するように訊ねてきた。

「妙案を思い付いたぞ、よく聞け……」

 僕は声を潜めながら、その案を開陳した。


「僕達が勇者になれば良いんだ!」


「……はぁ!?」


 スライム達は話し込んでいる。

 勇者の先制攻撃のチャンス!


 しかし、勇者は倒れている!

ハヤブサです。


飽きずに新作を書いています!

よろしくお願いします!

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