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04. 魔法図書館の約束ごと

ʄʄʄ


魔法使いの数も一人当たりの魔力の量も古い時代程多いが、古代の魔法使いは別格に違う。


古代魔法使い(かれら)は無から有を産み出すような、のちの世では再現出来ない魔法を使った。「迷宮」と呼ばれる異空間を創り出せたのも、古代の魔法使いだけだ。


魔法図書館の創造者はそんな古代の魔法使いの中でも傑出していた、「人類史上最強」と謳われる魔法使い、パウセだ。


魔法図書館は図書館自体が超絶魔法の集合体だが、それだけではない。更に驚異的なのは、図書館の職員に不老不死の魔法が掛かることだった。


ただしその魔法が掛かるのはあくまで職員になってからであり、職員になった時に既に高齢だった者が若返る訳ではなかった。パウセは職員を若返らせる必要性を感じていなかっただろうから、それは当然なのだろう。


だがもう一つ、魔法図書館には大きな制約がある。


パウセと言えども神ではない。極端な魔法はなんらかの限界を抱えているものだった。


魔法図書館最大の制約、それは職員が図書館の外に出られないことだ。


もし出ればその時点で魔法は解けて、二度と不老不死には戻れない。


なのに魔法が解けると分かっていても、毎日のように図書館からは職員が去って行く。


不老不死になりたいと言う人間は後を絶たない。職員になりたいと言う人間は世界中からやって来るが、この世から隔絶された食事も睡眠も不要な生活に耐えられず、そのほとんどが百年もたずに職員を辞めて外へと出て行くのだ。



「生きている気がしない」と言って。



「生きている気がしない……」


ほとんど空っぽの自室の本棚を見つめて呟いていた。



ʄ


自分は一体どうしたいというのだろう。


迷いながら、それからも魔法図書館に通った。

毎回リスタを訪ねたが、リスタがそれをいぶかしむことはなかった。「絵本の会」に参加したお蔭で、わたしはリスタに「個人的な知り合い」とみなされるようになっていた。


わたしが探している古い魔法書は大抵見付けるのが大変な場所にあったので、図書館に誰より詳しいリスタの助力が実際、必要でもあった。


リスタはその日も一杯の光の中で本を拡げていた。


リス――――――――――


リスタの居場所はいつも人捜しの魔法で見付けている。彼女が席を取っている大きな机の方へとフロアを横切って近付こうとした時。


「リスタさん!」


明るい声に先を越されて驚いた。


小柄な男性がリスタのすぐ横に立っていた。リスタよりは若そうだったが、もう老齢と言っていい年齢としだと思う。元は茶色だったらしい髪は真っ白に近くなっている。


「まあ。お早かったですね」


リスタが微笑みながら本を閉じるのを見た時、苛っとした。


「朝からもう楽しみで、早く着いてしまいました」

「お役に立てるといいのですが」


胸に本を抱えてリスタが席を立つ。わたしは机のかなり手前で足を止めてしまっていたが、そこで彼女はわたしに気付いた。青い目がはっとみはられる。


「………」


お気になさらず、と言う意味で黙礼する。

申し訳なさそうに彼女も黙礼を返してくれた。


「こちらへどうぞ」

「リスタさんのお話を聞ける日が来るなんて、感激です!」


老人を案内してリスタが去って行く。

察するに、「魔女」の話を聴きたいと言う人物と約束があったのだろう。約束していないわたしが文句を言える立場ではない。


分かってはいるのだが。



明日あすから毎日約束を入れてやろうか。



苛々と思った。


でもそれは出来ない。

必要な時だけ呼ばれる今の仕事は図書館に通うには都合がよかったが、時間を決めて約束を入れられないのだ。


こんな不便があるとは考えていなかった。



何をしにここに来てるんだ―――――――――――



その場から動けずにいる自分を持て余した。


やがて視線は書棚の一つに向いていた。


リスタが座っていた場所のすぐ左にそびえ立っている書棚。立ち去る時に、リスタは読んでいた本をそこに仕舞って行った。


今、魔法書よりもその本の方が気になる。


しばらくの逡巡しゅんじゅんあと、結局わたしはその書棚の前に立っていた。


城壁のようにそびえる書棚に差された、くっきりとした藍色の、分厚い本。

その厚みと色のお蔭で見失わなかった。


「………」


胸より少し低い位置にあったその本を引き出す時、鼓動が速くなった。

つい先刻さっきまで彼女が触れていた本と言うだけで。


左手で本を引き出し、表紙を見る。


魔法書以外の本を手に取るのが本当に久しぶりだったから、慣れない物に触れているような、何か不思議な感覚になった。



小説……?



読んだことはないのだが、著者の名前に記憶があった。数十年前に流行した作家だったと思う。


リスタが読む本のジャンルを問わない人であると、もう知っていた。来館者に対応していない時はリスタはいつも本を読んでいたが、それが歴史書だったり、何かの資料集だったりする。この間見掛けた時なんて、物理の本を読んでいた。

今日の本が一般的な読み物と言える小説だったことが逆に意外だった。


最初の数ページをめくって確認してみると、やはり小説だ。この厚さだと読み終えるのに時間が掛かりそうだが、魔法図書館の本は持ち出しを禁じられている。


だが。



……この本なら書店で買えるかもしれない。


読んで下さった方本当にありがとうございます!


評価等して頂けるととても励みになります。

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