5話 決別
街を巡回するディナール。
平民を守るため歩む改革の道。
しかし目の前に横暴な貴族を見つけ、怒りが抑えきれない――
財布の中の金の軽さに気づくほど、理想と現実のギャップに悩む王子の決断とは
ポケットに入れていた財布が、やけに軽い。
気づかないふりをしていたが、もう無視できなかった。
戦闘が終わり、少し経ってから、財布を開けた。
「……金が、ない。」
「え?」
驚いた。
魔生成魔法の代償は魔力だと思っていた。
まさか財布の金を代償に使うとは。
「...まあいい。パトロールを続けるか。」
「よくはなくないですか?」
「ハイ...」
金の世界を改革するために、金を使って魔法を使う。
なんという皮肉なんだろう。
助けた人を病院へ連れて行った後、俺たちはまたパトロールを再開した。
——————とある貴族の噂を聞いた。
そいつは噂では平民をなぶることを趣味としていて、俺はその噂を聞き、腹が立った。
街を歩いている時、その貴族の姿が人混みの中見えた。
話している内容が聞こえた。
「南地区の税金が滞納期間を超えた。そろそろ罰を与えなければならないな。」
(は?)
俺はすぐに拳を強く握り、追いかけようとした。
しかし、俺の体は前に進まなかった。
タミィが、俺の腕を引っ張っていたのだった。
「何をするんだタミィ!あいつは残虐な貴族なんだぞ!」
「それはあくまで噂です!」
「噂でも事実でも関係ないだろ!貴族どもは、平民の人たちを、真面目に働いている人たちを、何もしないくせに上から見下して、なぶっているんだ!」
「今のあなたは改革者というより、残虐な独裁者です!」
何かが切れる感じがした。
タミィへの信頼が、無くなっていく感覚がした。
「お前に何がわかるんだ!」
「お前も見ただろう...さっきの現場を!貴族が平民をなぶる現場を!」
「はい。見ました。でもその上で、私はあなたの行動を止めなければなりません!」
「ふざけるな!」
「見損なったぞ!タミィ!」
俺はタミィの手を振り払った。
すぐに身体神化を使い、貴族を追った。
「お待ち下さい!」
タミィが俺に声をかけた。
俺は振り向かなかった。
聞こえていた。確かに。
————————貴族に追いついた。
「なんだお前。」
「さっき話していた内容。聞こえたぞ。」
「それがどうした。違反ではないだろう。」
「理由も聞かず罰を与えるのは違うだろうが!」
「だからなんだ。税を払わないなら罰を与える。当然の法であろう。」
「どうやら話し合いは無駄なようだな。」
魔法を唱えた。
土魔法「殺地刀」
土の刀が俺の手に現れた。
俺は貴族に刀を振ろうとした。
「おいおい……まさか本気か?」
貴族は、俺の手に現れた土の刀を見て、口角を歪めた。
「何もしていない人間を、王子様が斬り殺すって?
はは……それはそれで面白いな」
「黙れ」
「殺すのは勝手だぞ?
だがな――」
貴族は、わざと一歩前に出た。
「その瞬間、お前は王子ではなくなる。ただの人殺しだ」
「……ッ」
「平民を守るため?
この王国のため?
笑わせるな。結局、力を持った側が気に入らない相手を殺すだけだろ?」
「それを――
俺たち貴族と、何が違う?」
喉の奥が、焼けるように熱くなった。
殺すのは容易い。
だが、この男の言葉は、正確に俺の急所を抉ってきた。
俺が行おうとしていることは、こいつらと同じことなのではないか?
止める仲間はいない。止めてもくれない。
——————俺がその仲間を突き放したのだから。
俺の思考は今すぐ殺せと言っている。でも、俺の意思と体はそれを止めている。
殺せない。
殺地刀を解除した。
タミィの言っていることが、今、わかった気がする。
——そうだ。俺の考えずにすぐに暴力に移る性格は、確かに独裁者と完全に一致している。
ここで殺すと、改革者というものにはもう二度と戻れなくなる。
「チッ...行け。お前の言ってる通りだ。」
「わかってくれたのなら、それでいいのだよ。」
甲高い笑い声をあげ、俺の横を通って貴族はどこかへ行ってしまった。
「そうなんだ…俺は1人じゃダメなんだ。何もできない。」
俺の意思の弱さと、転生前に俺を殴ってきた奴らを今の俺に重ねた。
反吐がでるくらいに酷かった。
俺の行動に後悔した。
火種は、俺が撒いてしまったのだ。
おお!こんなに!
あっどうも!Maronです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
貴族と自分の愚かさを知ったディナールが選ぶ行動と、
撒いた火種とは何なのか。コメントに是非考えを書いてみてください!
コメントとブックマーク、評価は私のモチベーションに繋がります!
どしどししちゃってください!
Maronでした。




