4話 治安維持パトロール開始
魔法・経済格差平等改革、フェーズ1が始動する。
王子として街を巡る中で、ディナールはこの国の腐敗を、嫌というほど思い知ることになる。
魔法・経済格差平等改革フェーズ1。
――治安維持。
その第一歩として、俺はタミィと共に街を歩いていた。
今のところ、目立った問題はない。
貴族の姿も見当たらず、街は一見すると平和そのものだった。
(……こんな日常が、続けばいいんだけどな)
淡い希望が胸をよぎる。
だが、それが幻想だと気づくのに、十分もかからなかった。
――助けを求める声。
同時に、嘲るような笑い声が耳に届く。
人混みの奥、路地裏の方角だ。
隠れてやるあたりが、実に陰湿だ。
「タミィ、パトロールを続けてくれ」
「承知しました」
俺は一人、声のする裏道へ走った。
壁際に身を寄せ、様子を窺う。
予想は、最悪の形で当たっていた。
貴族が一人、平民を囲い込み、弄ぶように暴力を振るっている。
――見逃せば、王子を名乗る資格はない。
「おい」
声をかけた瞬間、貴族が振り返った。
「なんだ?」
「何をしている」
男は俺の顔を見るなり、口元を歪めた。
「……ほう。ランソワ家の王子か。今日は運がいい」
「ああ、そうだ」
「一人で来るとは、随分と勇敢だな。いや、馬鹿か?」
怒りが、腹の底で煮え立つ。
「今すぐやめろ。お前に、その人を傷つける資格はない」
「ははっ! 正義ごっこか?
それに――」
男は平民を指さし、吐き捨てる。
「こんなものを“人”扱いするとはな。ランソワ家も落ちたもんだ」
――もう、限界だった。
「……身体神化」
全身に魔力が巡る。
「魔法で勝負か?いいだろう。お前も――」
男が詠唱を始める前に、俺は踏み込んだ。
拳を振るう。
一度では足りない。
怒りのままに、身体を動かす。
殴るたび、何かが壊れていく感触だけが残った。
「……二度と、口を開くな」
振り上げた拳を、止めた。
「何をしているのですか」
背後から、落ち着いた声。
振り返ると、タミィが立っていた。
「なぜここに……?」
「巡回経路を外れました。嫌な予感がしました」
彼女は、倒れ伏す貴族と震える平民を一瞥し、静かに頷いた。
「状況は理解しました」
「……俺は」
「嫌いになりませんよ」
即答だった。
「この場を見れば、理由は明白ですから」
その言葉が、胸に深く沁みた。
俺は、身体神化を解除した。
――そのときだった。
ポケットに手を入れる。
感触が、妙に軽い。
財布を取り出し、中を確認する。
……空だ。
胸の奥が、ひやりと冷えた。
魔法も、正義も。
この国では――金が要る。
正義は、無料じゃない。
どうもMaronです。
ついにはじまりましたね。
スカッとする話になったのでしょうか。
私はスッキリしました。
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では!さよならー!




