17話 王の返答
宣戦の返答は、拒絶ではなかった。
三十日。
守れなければ、削られる。
夜。
塔の鐘が、三度鳴った。
王城からの召喚。
逃げ道はない。
「……来ましたね」
善意貴族が低く言う。
タミィは黙っている。
右手はまだ完全ではない。
それでも隣に立つ。
「一人で行くなって言っただろ」
「言いました」
小さく、笑う。
王城・謁見の間。
重い扉が開く。
玉座の上。
王は、静かにこちらを見ていた。
老いている。
だが目だけが鋭い。
「ディナール」
声は低く、よく通る。
「宣戦布告をしたそうだな」
逃げ場はない。
「はい」
ざわめきが走る。
王は手を上げ、沈黙させる。
「理由を聞こう」
俺は一歩進む。
「観測制度は、人を削ります」
「秩序のためだ」
「秩序の名で切り捨てる」
王の視線が細くなる。
「王家は国を守る。情で揺らぐわけにはいかぬ」
「情を切り捨てて守る国に、意味はあるのか」
空気が凍る。
側近たちが動く。
だが王は止めない。
しばらく、沈黙。
やがて。
「……面白い」
王は言った。
「では証明してみせよ」
「証明?」
「観測制度を否定するなら、それ以上の安定を示せ」
塔の魔力がわずかに震える。
「三十日だ」
謁見の間がざわつく。
「三十日以内に、王都の不安要素を一つ鎮めよ」
「鎮められなければ?」
「その娘の右腕を封じる」
タミィの呼吸が止まる。
俺の中で、何かが静かに燃える。
「期限付き、ですか」
「王は感情で動かぬ。だが賭けは好む」
王の視線が刺さる。
「できるか?」
逃げれば、タミィが削られる。
受ければ、王都全体を敵に回す。
答えは決まっている。
「やります」
即答。
タミィが横を見る。
目が揺れている。
でも止めない。
王は立ち上がる。
「ならば正式に認めよう」
杖が床を打つ。
「王子ディナールに臨時裁量権を与える」
場がどよめく。
「ただし」
その目が冷える。
「失敗すれば、容赦はせぬ」
城を出る。
夜風が強い。
タミィがぽつりと呟く。
「三十日……」
「怖いか」
「少し」
正直だ。
それでいい。
「でも」
俺を見る。
「削られるより、戦う方がいい」
小さな笑み。
ああ。
それでいい。
善意貴族が言う。
「不安要素とは、おそらく“地下魔脈暴走”の件でしょう」
王都下層。
最近、魔力異常が増えている。
観測制度でも抑えきれていない問題。
「つまり」
タミィが言う。
「王家も完全ではない」
ああ。
そこが突破口だ。
遠く、塔の最上階。
仮面の男が水鏡を見つめる。
「三十日」
笑う。
「削るか、証明するか」
映るのは、王子の背中。
「いいでしょう」
指先で水面をなぞる。
「では、少し揺らして差し上げましょう」
水鏡の中。
王都地下の魔脈が、赤く脈動する。
静かな夜。
だが地面の下で、何かが目覚める。
三十日。
王家との賭け。
守るための戦いが、始まる。
Maronです。
投稿遅れました。スミマセン。
昨日は投稿できませんでした。
まじで、スミマセン。
次回は必ず明日投稿します。
Maronでした。
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