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16話 宣戦布告

守るために削られるなら、

そんな秩序はいらない。

王家の使者は、塔の回廊で待っていた。

白い外套。

胸元には王家紋章。

逃げ場のない位置取り。

「王子殿下」

丁寧だが、目は笑っていない。

「観測結果が出ました」

紙が差し出される。

そこに並ぶのは数値。

魔力量。

共鳴率。

侵食進行度。

そして最後に。

“削減対象候補”

「……削減?」

善意貴族が息を呑む。

「王家の安定を脅かす要素は、事前に調整する。伝統です」

調整。

削減。

排除。

言葉だけが綺麗だ。

タミィが小さく言う。

「対象は……私ですね」

使者は微笑む。

「共鳴因子を持つ外部個体は危険です」

外部個体。

人じゃない。

分類だ。

俺の奥歯が軋む。

「処分方法は?」

俺の声は、思ったより冷静だった。

「魔力回路の封鎖。右腕のみで済みます」

のみ。

タミィの右手が、わずかに震えた。

袖の奥で。

気づいている。

もう感覚が完全ではないこと。

「私のせい、ですよね」

その声は小さい。

強くあろうとする声だ。

「結界を解いたから。あなたと共鳴したから」

違う。

違うと言え。

だが胸の奥に、一瞬だけよぎる。

もし俺が神化を持っていなければ。

もし俺が突き進まなければ。

侵食は起きなかったのではないか。

その迷いを、使者は見逃さない。

「王子は優秀です」

穏やかな声。

「だが、過剰だ。周囲を巻き込む」

「だから削る?」

「秩序のために」

タミィが一歩前に出た。

「分かりました」

やめろ。

「右腕だけなら、問題ありません」

「タミィ」

「私が共鳴しなければ、あなたは安全です」

笑おうとしている。

下手だ。

目が震えている。

「私は……あなたの邪魔になりたくない」

その言葉で、何かが弾けた。

俺は彼女の腕を掴む。

強く。

「勝手に決めるな」

声が荒れる。

初めて、完全に感情が前に出た。

「削られるのが正しいと、誰が決めた」

「でも——」

「でもじゃない」

俺は使者を睨む。

「観測だの、調整だの」

一歩、前に出る。

「人を部品みたいに扱うな」

空気が変わる。

監視の魔力が一斉に動く。

「抵抗は王命違反です」

「王命?」

笑いが漏れた。

乾いた笑いだ。

「王家は“責任を引き受ける者”じゃなかったのか」

塔の上層がざわめく。

観測されている。

分かっている。

それでも止まらない。

タミィが小さく言う。

「……ディナール」

その声には、恐怖が混じっている。

俺が暴走するのを恐れているんじゃない。

俺が、全部背負おうとするのを恐れている。

分かっている。

それでも。

「観測するなら、最後まで見届けろ」

使者を見据える。

そして、塔の上層を。

「俺は削られない」

一歩。

「仲間も削らせない」

さらに一歩。

「秩序の名で人を切り分けるなら——」

息を吸う。

喉が焼ける。

それでも言う。

「俺が、王家を削る」

沈黙。

風が止まったような静寂。

使者の笑みが消える。

「……宣戦布告と受け取ります」

「ああ」

迷いはない。

初めて、はっきり見えた。

敵。

王家の観測制度。

人を数値で決める構造。

「観測するなら最後まで見ていろ」

俺は言う。

「壊れるのが俺か」

拳を握る。

「それとも、王家か」

タミィの指が、俺の袖を掴んだ。

ほんの少し。

震えている。

だが離れない。

「……一人で行かないでください」

その声は、強くなかった。

でも、本音だった。

俺は少しだけ息を吐く。

「一人じゃない」

視線を合わせる。

「削らせないって言っただろ」

涙はこぼれていない。

でも、目は潤んでいた。

ここで守りたいと思った読者がいれば、勝ちだ。

塔の最上階。

水鏡に映る二人。

最年長評議員が呟く。

「王家を削る、か」

隣で、仮面の男が静かに笑う。

「ようやく選んだ」

「何をだ」

「侵食ではなく、意志を」

水鏡が揺れる。

「では、次の段階へ」

塔の外。

風が強まる。

静かな戦争が、始まった。

これはもう改革ではない。

これは——

王家との戦いだ。

Marinです。

びっくりしたでしょう!

まさか3話目が1日に出るとは。

バレンタインサプライズです。

もしも驚いたら

コメント、ブクマお願いします。

Maronでした。

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