15話 削られた王
観測は終わらない。
削られるのは、力か、覚悟か。
術式が砕け散る。
俺の剣が監察術師の陣を切り裂いた。
「拘束対象、危険度上昇!」
廊下に警告音が響く。
やはり最初から“保護”ではない。
測定だ。
タミィの右手がまた光る。
今度は俺の鼓動と完全に同期していた。
ドクン。
五色が脈打つ。
「やめろ、タミィ!」
「止まりません……!」
彼女は歯を食いしばる。
術師が後退しながら水鏡を展開した。
空間に浮かぶ魔力観測式。
数値が跳ね上がる。
「王家魔力反応、二重構造を確認!」
二重?
その瞬間、頭の奥に冷たい感覚が走った。
――分割。
言葉が浮かぶ。
視界の端で、塔の結界が共鳴している。
俺の魔力。
タミィの紋様。
そして塔。
一本の線で繋がったように。
「……切る」
俺は決断した。
財布を取り出す。
魔生成、最大出力。
硬貨が一瞬で灰になる。
生成したのは“断絶の刃”。
魔力干渉を強制遮断する構造。
「王子、何を——」
振り下ろす。
タミィと塔を結ぶ共鳴線を、斬る。
閃光。
衝撃。
静寂。
五色の脈動が、消えた。
タミィの右手から紋様が薄れていく。
同時に——
胸の奥が、空洞になる。
「……っ」
膝が震える。
何かを切った。
だが同時に、
何かを失った感覚。
監察術師が後ずさる。
「共鳴強制切断……そんな術式は記録にない」
善意貴族が低く言う。
「あなたは今、自分の魔力構造を破壊しました」
理解する。
さっきまで確かにあった“第二の流れ”。
それが消えた。
神化の一部。
俺は、自分で削った。
タミィがゆっくり立ち上がる。
「……同期、消えました」
その声は安定している。
だが俺の視界は少し歪んでいた。
監察術師たちは動かない。
観測が目的なら、十分だ。
やがて一人が通信石を握る。
「対象、自己抑制能力を確認」
抑制。
つまり今の行動は、合格か。
「本日はここまでとする」
霧のように撤退していく。
静まり返る回廊。
俺は壁に手をついた。
「……王子」
タミィの声が近い。
「後悔していますか」
少し考える。
神化の流れを切った。
力は弱まっただろう。
だが。
「していない」
即答だった。
「俺の力で、お前が侵食されるなら」
そんな力はいらない。
タミィの目が、わずかに揺れる。
遠くで、塔の鐘が鳴る。
善意貴族が静かに言った。
「評議会は次の段階に進みます」
「分かってる」
今日の観測で、確信したはずだ。
王家の力は異常。
そして俺は、制御できる可能性がある。
利用価値がある。
塔の最上階。
暗い会議室。
水鏡の中に、今の戦闘が映っている。
最年長の評議員が呟く。
「……やはり適合者か」
その隣。
仮面をつけた男が、静かに笑った。
「ええ。侵食を“選択”できる」
「次は?」
「揺さぶります」
水鏡の映像が消える。
「王子ディナール。あなたはどこまで削れるか」
塔は、まだ静かだ。
だが観測は終わっていない。
戦いは、もう実験段階に入った。
Maronです。
バレンタインサプライズ!^_^
2日2話連続投稿!
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Maronでした。




