表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

14話 監視

処分は下らなかった。

だが、それは勝ちではない。

“観測”が始まった。

塔の外は、やけに静かだった。

王都中央塔を出た瞬間——

俺は振り返らなかった。

だが、視線は感じていた。

監視だ。

「……追われていますね」

善意貴族が小声で言う。

「ああ」

保留。

処分なし。

それは“泳がせる”という意味だ。

合法的に縛る、と言ったな。

なら奴らは動く。

法で。

制度で。

証拠で。

 

「タミィ」

彼女の歩幅がわずかに乱れている。

右手はまだ袖の中。

「本当に大丈夫か」

「……ええ」

その声が、少し遅れた。

 

人気の少ない回廊に入った瞬間——

 

彼女の膝が崩れた。

 

「タミィ!」

 

抱き止める。

体温が、低い。

 

右袖がずれる。

 

手の甲に、薄い紋様。

淡い五色の線が、皮膚の下で脈打っている。

 

「これは……」

 

「結界を解いた時、少し“逆流”しました」

 

逆流?

 

「どういうことだ」

 

「本来、王都中央塔の結界は“王家の系譜”に反応します」

 

息が止まる。

 

「私は、それを無理やりこじ開けました」

 

つまり。

 

王家の魔力に触れた。

 

俺の。

 

「……俺のせいか」

 

「違います」

即答だった。

 

だが紋様は、確かに俺の神化の光と似ている。

 

五色。

 

無意識に、胸がざわつく。

 

「触れないでください」

 

彼女が小さく言う。

 

「今、あなたの魔力と共鳴しています」

 

共鳴。

 

一歩、離れる。

 

すると脈動が弱まった。

 

「……評議会は、これを知っている可能性があります」

善意貴族の声が低い。

 

「王家の魔力が不安定になっている、と」

 

なるほど。

 

だから縛る。

 

力が暴走する前に。

 

もしくは——利用するために。

 

「タミィ」

 

彼女の目はまだ強い。

 

「今の状態で、戦えるか」

 

「戦えます」

 

即答。

 

だが右手は震えている。

 

その時。

 

回廊の先で、魔力が弾けた。

 

「……来たか」

 

黒衣の影。

三人。

評議会直属の監察術師。

 

「王子殿下」

 

その声は丁寧だ。

 

「安全確認のため、同行を願います」

 

安全確認。

 

拘束の言い換えだ。

 

俺は一歩前に出る。

 

「拒否する」

 

「それは困ります」

 

空気が、張り詰める。

 

タミィの紋様が、強く光る。

 

「動くな」

俺は低く言う。

 

だが——

 

術師の一人が詠唱を始めた瞬間。

 

タミィの右手が、勝手に持ち上がった。

 

五色の光。

 

無詠唱。

 

術式が霧散する。

 

「な……」

 

本人が驚いている。

 

「違……私は……」

 

制御していない。

 

俺の中の力と、彼女の紋様が繋がっている。

 

侵食。

 

俺だけじゃない。

 

「タミィ、下がれ!」

 

俺は魔生成を発動する。

財布が軽くなる。

 

金と引き換えに、剣を生む。

 

今回は俺の意思だ。

 

術師たちが陣を展開する。

 

狭い回廊。

逃げ場はない。

 

「王子を保護する!」

 

その言葉が合図だった。

 

戦いは、始まった。

 

剣と術式が交差する。

 

だが俺の意識の半分は——

 

タミィの右手に向いていた。

 

彼女の紋様が、俺の鼓動と同期している。

 

まるで。

 

分割された同一の回路。

 

もしこれが進めば。

 

俺が暴走した時——

 

巻き込む。

 

「……くそ」

 

剣を振るいながら、理解する。

 

これは評議会との戦いじゃない。

 

もっと内側。

 

王家そのものに仕込まれた、何か。

 

塔の上層で、鐘が鳴る。

 

警報。

 

王都中央塔の結界が、再び揺らいでいる。

 

そして俺は確信する。

 

保留は、時間稼ぎだった。

 

奴らは“観測”している。

 

俺と、タミィの共鳴を。

 

戦いはもう、

秩序の是非ではない。

 

王家の力の正体へ。

 

踏み込んでしまった。

Maronです。

コメントとブックマークお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ