13話 理由
封鎖は終わっていない。
形を変えただけだ。
今度は、王子が囲まれる。
王都中央塔。
貴族評議会の間は、やけに静かだった。
重い扉が閉まる。
視線が集まる。
「王子殿下」
最年長の評議員が口を開いた。
「昨夜の越権行為について、説明を」
「越権?」
「王都警備を通さず、結界を破壊。
民衆を扇動し、独断で支援を再開」
扇動、か。
「封鎖は違法だった」
「証拠は?」
善意貴族が一歩出る。
「私が確認しました」
「あなたは当事者だ」
冷たい視線が向けられる。
「改革派を気取るのは結構。だが秩序を乱すなら話は別だ」
空気が締まる。
俺は理解した。
これは“是非”の議論じゃない。
力比べだ。
「では聞こう」
別の評議員が言う。
「王子は今後も、評議会を通さず行動するのか?」
沈黙。
ここで「しない」と言えば、縛られる。
「する」と言えば、対立が確定する。
俺が答える前に——
扉が開いた。
「失礼します」
タミィだった。
「ここは関係者以外——」
「私は、昨夜の当事者です」
足取りは安定している。
だが、右手は袖の中。
「結界を解いたのは私です」
ざわめき。
「許可なく?」
「はい」
視線が集中する。
「理由は?」
「子どもが泣いていたからです」
場が凍る。
あまりに単純な答え。
「感情論で王都を動かすつもりか」
評議員の声が低くなる。
タミィは、逸らさない。
「感情を捨てて守れる秩序なら、
それは誰のための秩序ですか」
一瞬、沈黙が走る。
危うい。
これは火に油だ。
「王子」
最年長が言う。
「部下の教育もできぬか」
その言葉で、何かが切れた。
「彼女は部下ではない」
俺は前に出る。
「仲間だ」
ざわめきが広がる。
「王子としての立場を忘れたか」
「忘れていない」
目を合わせる。
「だが、覚えている。
王族とは、責任を引き受ける者だ」
善意貴族の言葉がよぎる。
「昨夜の決断は、私の責任だ」
「ならば処分を受ける覚悟はあるか」
来た。
ここだ。
俺は頷く。
「ある」
タミィが息を呑む。
「ただし」
視線を巡らせる。
「封鎖を指示した者も、同様に責任を問うべきだ」
空気が変わる。
牽制だ。
評議員の一人が目を細める。
「証拠はあるのか」
「探している」
はったりだ。
だが、怯まない。
沈黙が続く。
やがて最年長が口を開いた。
「……本件は保留とする」
処分は下らない。
だが、勝ちでもない。
「王子。次はない」
会議は終わった。
外に出る。
空気が軽い。
タミィが壁に手をついた。
一瞬、よろめく。
「無茶をするな」
「……言われたくありません」
苦笑。
だが顔色が悪い。
「右手は」
「少し、重いだけです」
嘘だ。
感覚が、さらに鈍っている。
善意貴族が低く言う。
「彼らは本気です。次は合法的にあなたを縛る」
「分かってる」
空を見上げる。
塔が静かにそびえている。
囲まれている。
外ではなく、内側から。
だが——
「それでも進む」
タミィが小さく笑った。
「……はい」
その声は、かすれていた。
戦いはもう、
剣では終わらない。
Maronです。
2話連続投稿2話目どうでしたか。
疲れました。
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Maronでした。おやすみなさい。




