第二部序
「軍の改革は進んでいるかね?」
「およそ理想の4割程度でしょう。あの政策をもってしても、軍事投資は十分だとはいえない。国費を支えてくれている同志諸君には申し訳ないが、まだまだ足りませんな」
「ふむ、君が従来から検討しているらしい……なんとかという画期的なドクトリンを実現するには程遠いか」
「……よくご存じですな。あれは根本的な兵装の量と質両面での進化変更が前提のもの。言うなれば、まさに軍事における革命に他ならない。実現すればまず戦場はまるで別のものになってしまうはず」
「はは、実に頼もしいな。資本主義帝国列強の脅威に立ち向かうにはそれくらいでなくては。……では、一つお願いをすることにしよう。なに、そんなに難しいことではない。ある年次における軍事衝突を想定した作戦計画を立案し、それに合わせて軍編成を間に合うよう調整してほしいのだ」
「……? ある年次とは? バルト各国とでも? あるいは、中東国家の攻略を検討でもされているのか?」
「どちらも要検討事項で、もちろん考えていないわけではないが。残念ながら違う。時は1939年」
「6年後。随分と先ですな」
「場所は極東、蒙古平原」
「っ!」
「そこで展開している日本の大陸派遣軍、満州常駐戦力と対峙し、武力衝突が起こる可能性を想定した準備を進めてほしい」
「まさか。いや、なきにしもあらずかもしれませんが」
「君のその……」
縦深戦術理論を完成させるための演習もかねて。




