散文詩
掲載日:2025/10/16
満ちた月が放つ、月光
視開かれた夜空の巨大な眼
それが僕たちを視ている
こんな夜は外に出てしまえば、元の姿では居られない
樹々はどろどろに溶け
兎は首だけになって、けたけたと嗤いながら飛び回っている
隣の家のおじさんは煙草を吸おうとして外に出て、家よりも大きな蟲になってしまった
僕は君の腕に抱かれながら、ベッドで震えている
「自分が自分でなくなってしまったら」
「いま考えている事すら、消えてしまうのかな」
僕が涙を溜めて君に尋ねれば、君は髪を撫でながら答える
「月光は、総てのものを本当の姿にしているんだよ」
今夜は月の光が強すぎて
僕たちの家の屋根も、壁も、全部蝶になって飛んでいってしまう
おしまいには、隠れるものすら失って
僕たちは狂った光に照らされる
君の手がねじくれて
僕の手も歪んでいく
歪みながら絡まりあって
僕たちは一つの樹になった
今夜は月が綺麗だね




