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中二病少女  作者: 木下寅丸
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慣れない手つきとソクラテス

10


 病院に着くと、妹はベッドから外の景色を見ていた。側にある机の上には、貸した本が置かれてあり、栞が上に乗っていた。さてはて何ページ読んで止めたことやら。

「面白くなかっただろ?」私はそう言うと、妹は何か考えごとをしながら呟いた。

「神様って結構意地が悪いものなのね」

「どこまで読んだの?」

「全部よ」そう言って、照れくさそうに手を出してきた。

「何、この手?」

「何って、次の本よ。持ってきてないわけ?」

 読み終えていると思っていなかったから、準備はしていなかった。それにしても北欧神話を一日で読み終えるとは思わなかった。結構長いんだけどなー。こうして、妹と本の会話をするようになった。


11


 二冊目はプラトンの本を渡した。私の思い出の本である。

「ソクラテスさんってさ、何がしたかったのかな? 人の揚げ足ばっかとって困らせて」

「それは今の価値観で考えたら理解できないよ。ソクラテスはね、神様からお前が一番賢い人間だ。みたいなことを急に言われたわけ。ソクラテスからみたらさ、そんな訳ないじゃんとは思うけど、神様それは違いますと言うことは出来ないんだ。神様を批判することになってしまうからね。だからさ、人々に賢者とかいわれている人と対話して、やっぱり私が一番ということはないよって照明したかったんだ。けれども、どの人も何でも知っているようなことをいうけれどたいしたことない。知らないということを知っている分、私の方が賢いかもなってなったわけよ。これが、世にいう無知の知ってやつさ」

「ふーん。そういう考え方だったのね」

 本を片手にそう話す妹の姿は、実に絵になっていた。長い黒髪に細い腕。自慢ではないが、妹は美人だ。妹がどうのっていうのは差し置いて。美人な子が、岩波文庫持っているとたまらんよね。実際に見たことはなかったけれど。

 私はこのとき、無性に嬉しかった。本の会話をする人なんて、生きていていなかったし。それが、こんなに身近に出来たものだから。いささか調子に乗っていた。感想が聞けることが嬉しくって嬉しくって、自分の過去を思い出しながら、妹にどんどん本を持って行った。 

 カント、デカルト、キルケゴール、フロイト、ユング。勧めるがまま、妹は読んでいった。「フロイトさんは少しエッチね」なんて、いつも感想はユニークだ。

 このことを今では後悔している。もっとこう普通の。そう、マンガとか雑誌とかにしておけば良かったと。


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