妹の決心と地獄の始まり
2
何から話して良いものか。う~んそうだな、私の人生で一番ビックリした日のことからかな?
ある日仕事から帰ってくると、妹がゴスロリになっていた!
玄関で丁寧にお迎えされ、「お帰りなさいまし、お兄様」の一言。正座をし、頭を深く下げていた。
「おやおや、まぁお嬢様。私にこんなゴスロリっ子の知り合いが、はて、いたかしら?」何て適当にふざけてみた。内心?で埋め尽くされている。
「流石お兄様。この姿に動揺すらなされないとは。感服の至りでございます」
「それで、なんだい? その畏まった話し方は」あきれてものを言う。
「乙女の一つの心得でございまするわお兄様。しかし、あれでございますね。流石のお兄様でも、間違えることはあるみたいですね」
「この格好は、甘ロリです!」なんかドヤっていた。
一通り言い終わって満足したのか、二階の部屋に戻って行った。奥の茶の間では、母が途方に暮れていた。
「一体これはどうしたんだい? 学校をしばらく休むとは聞いていたけど、あんな格好になるなんて聞いていなかったよ。おまけに金髪になっているし」
「私も何がなんなのやら。宅配便がやけに来るなと思っていたら、ずっと風呂場に籠っていたし、やっと姿を見せたと思ったらあんな姿になっているし…」
「それで、妹はなんて言っていたんだい?」
「私を見る度に冷たい視線を送ってくるだけで、話すことは出来なかったわ」
「ああそうかいそうかい。見限られたんだね。まぁ自業自得だと思うけど」私はそう言い、いつものナイトルーティンをして寝ることにした。
3
ベッドに入る。ここ数日のことが頭をよぎる。「兄として、何が出来るだろうか?」妹が二階の部屋から飛び降りたのが四日前。そして、ゴスロリになったのが今日。いや、甘ロリって言っていたっけかな? 妹はどうやら先生から虐めを受けていたらしい。両親に打ち明けて、学校にはもう行きたくないってことを伝えていたみたいだ。それを聞いて二人揃って、あろうことか怒ってしまったみたいなんだ。
父の方は、嘘だと高を括り、「そんなこと言ってないで、早く学校に行きなさい」とかなんとか。
母の方は、「虐められたっていうのはさ、そのくらい先生が貴女のことを思っているってことなんじゃないの? 大袈裟なのよ、貴女は」なんて頓珍漢。
両親の言葉を受けて、行き場を失った妹は、そのまま部屋に向かってベランダから身を投げた。幸いたいしたケガではなかったが、妹と両親の溝は深まった。