愛すべき人々 ~本社忘年会~
その年の忘年会、私は秋田の大館に販売応援に行っていたので
出席出来なかったが、後で後輩のシゲから聞いた様子を書いてみました。
珍しく張り込んでコンパニオンまで呼んで大騒ぎとなったらしいのだが、
社長も帰り、シゲがカラオケで『勝手にしやがれ』を歌っている時に事件は起こった。
コンドー部長がコンパニオンを引っ張り出し、
座敷の真中で踊りだしたのである。
シゲ: (おいおい…勝手にしやがれでチーク踊っっとるでぇ…。)
そのうち、コンドー部長は何を思ったのか、
コンパニオンのねーさんを倒そうと足払いを仕掛けはじめた。
(おっさん、必死やけど空振りしとるがな…。)
(本気でねーちゃん襲う気か?)
3回ほど空振りし、4回目で足が掛かったと思ったとたん、
逆にコンドー部長はねーさんに投げ飛ばされた。
そこへ正義感の強いクロダ部長がコンドー部長を押さえ込みにかかる。
シゲ: (あかん!フォローせんとややこしい事になる!)
シゲはマイクを掴んだままクロダ部長が押さえ込んでいる横へ滑り込み、
シゲ: 「ワン!ツー!スリー!クロダ部長の勝ぃぃ!」
そこでみんなで盛り上げて事無きを得た。
ひとしきり騒いだ後お開きという事になり帰ろうとしたところ、
シゲは不幸にもコンドー部長に捕まってしまった。
コンドー部長: 「おぉ!シゲ!おみゃぁなんで来とるんにゃ?」
(あっちゃぁ!捕まってもた!)
シゲ: 「自分の車で来ました。」
コンドー部長: 「そりゃぁいけん!おみゃぁ、酒飲んどろうが!」
シゲ: 「だいじょうぶですよ!ぜんぜん酔ってませんから…。」
コンドー部長: 「いけん!いけん!わしが送ってっちゃるけぇ、車置いとけ!」
(あんた、べろべろやないか!)
シゲ: 「いや、だいじょうぶです!」
コンドー部長: 「いけんどぉ!こっち乗れぇ!」
コンドー部長は言い出したら聞かない。
シゲは腹をくくった。
部長が指差す先には黒のミラターボが停まっていた。
(軽かよ!!!)
シゲ: 「部長、えらいかわいいの乗ってますねぇ。」
コンドー部長: 「わしのは車検に出しとるけぇ、娘の借りて来たねぇ!」
シゲ: 「部長、大丈夫ですか?」
コンドー部長: 「わしゃぁ、ぜんぜん酔うとりゃせんけぇ。でゃぁじょうぶよ!」
シゲ: 「ほんまですかぁ?」
(おっさん、泥酔やがな!)
コンドー部長: 「しんぴゃぁするにゃ!気がこみゃぁんじゃけぇ!」
シゲ:「はぁ…。」
(軽で事故ったら死ぬがな!)
『ブォン!ブォン!ブォォォォォン!キィ-ッ!』
いきなり、バックで急発進。
もう少しで馬さんを轢きそうになる。
馬さん: 「部長!殺す気ですか!!!」
コンドー部長: 「おぉ!すまん!ミッションは久しぶりじゃけぇ!」
(あかん…こら死ぬかも…。)
なんとか発進し、死のドライブが始まる。
『ガチャガチャガチャ!』
やたら、忙しくミッションをいじくりながら走っている。
シゲは酒には酔ってないが車に酔ってきた。
コンドー部長: 「しかし、あのおねーさん、かわいかったのうや!」
シゲ: 「部長、前向いて運転してください!」
幸い、田舎なもので夜遅いと車はほとんど走っていない。
(なんとか無事にたどり着けますように…。)
シゲは祈るように前後左右を注意深く見ていた。
『キィィィィッ!』
(???)
シゲ: 「部長!どうしました?」
コンドー部長: 「どうしたぁ言うてから、信号が赤じゃろうが!」
前を見ると前方20mぐらい先の信号が赤で点滅していた。
シゲ: 「部長、もうちょっと前に行きましょうよ。」 (左右見えへんがな!)
コンドー部長: 「なにゅう、言ょうるんにゃ!」
シゲ: 「は?」
コンドー部長: 「どこで警察が見ょぉるかわからんのじゃけぇ!」
(道の真中で停まってどうすんねん!)
(こんな運転、警察おったら一発で捕まるちゅうねん!)
コンドー部長: 「ええかぁ?交通ルールは守らにゃぁいけんど!」
(あんたが守れよ!!!)
その後も何度か危ない目にあいながら、何とか無事に帰ったらしい。
家に着くまでの間、シゲは生きた心地がしなかったとの事。
コンドー部長、ホントいい人なんですけど…みんな迷惑してます…。