03東里市ってどこ? Q08~Q11
Q08:榊たちの住む東里市とは?元になった街があるの?
榊達の住む、東里市は山陰地方のイチ地方都市として、作品の中には描かれている。山陰地方自体は、西日本の中国地方で山口北部・島根・鳥取、近畿地方の兵庫北部・京都北部を指す事が歴史的広義とされ、一般的には鳥取と島根の2県を指す。
東里市は字の通り、「とうり」と読み、鳥取市の事を薄々と指している。作者の捻りの無さでもあるが、鳥取市同様、東の街としては定義としておかしくはない。
舞台の内容設定もほぼほぼ鳥取市と似ている。
――東里市の中心街別名旧市街、元々城下町だった東里市は新旧二つの川によって城下を含めた地域の旧市街と更に裾の地域である新市街に分かれる。平成の町村合併以降行政区画の拡大とともにさらに大きな町にはなったが、住所に書いてある地域は古くからの寺社がひしめき合う場所でもある。住所の指す場所は玄条寺の近所だった。以前郷土史関係の取材で聞いたことのある寺だった。『不動産屋の娘』より
――喫茶店を出た榊と神楽は依頼人のいる大工町へと向かった。この東里市は所々町名に職人名が多い。元々城下町という事と、旧市内と呼ばれるエリアがその名前が色濃く残る。このあたりも大工や左官職人が多く住んでいたという話であるが、戦後の大火によって一部区画が整理されたこともあり、名前だけが残っているパターンだ。『単純そうで複雑な依頼』より
鳥取市も東里市と同様、元々城下町で新旧二つの川によって城下を含めた地域の旧市街と更に裾の地域である新市街に分かれ、戦後の大火によって一部区画が整理されたが、旧市街の町名には職人の名前が残っている。
一部の固有名称は、鳥取市の実際の地名にも重なる所もあったりする。
Q09:高速道路のない東里市、実際に高速道路はなかった?
この内容を描いている2020年時点で鳥取市には山陰自動車道と山陰近畿自動車道、そして、鳥取自動車道の三高速が存在している。
東里市の高速道路事情はどうなのか?
――東里横断道路は山陰地方の東西をつなぐ山陰自動車道の一部区間にあたる道路で東里市内南部を東西に横断する約10キロ程度の区間を指す。県庁所在地でありながら高速道路の整備の遅れが目立つ東里市が進めている計画だ。『同業者の括り 4:同業者の括り』より
――移動が長ったらしいと言わせているこの東里市は、県庁所在地ではあるものの、高速道路の道路インフラに至っては県西部の西米市よりも遅れているところがあり、先の未整備区間の対象とも揶揄されていた。近年になって東里市と隣県を結ぶ道は整備され始めたモノの県内東西を結び更に西の隣県を結ぶ道路網の整備が急ピッチで行われている。
榊が取材した東里横断道路もその道の一環で県管理による建設が始まろうとしていた。
『『記者』と『少女』 2:ミステリーハンター』より
実際この神還師の舞台設定である2010年当時の鳥取県では、山陰自動車道は鳥取市内は未開通、山陰近畿自動車道も鳥取兵庫県境側は未開通で、県全体で当時50%も満たない状況だった。2019年で85%なので、いかに急ピッチで整備されているかがわかる。
第一書のキーワードの一つである東里横断道路、この道路の工事で度々事故が起こるがこれが迷い神の影響だったのでは?という疑問がこの物語を大きく動かしている。
ちなみに気山町などでは高架橋工事という名目で書かれているがそのあたりは架空のもので、実際に舞台になった、気高町の鳥取西道路が開通したのは2019年であり、当面東里市の高速道路事情はまだ変わらないであろう。
Q10:東里市以外にも街の名前が出るけどどのあたりなの?
Q09の高速道路事情でも描いたが、東里市以外の市町村は実際の名前に対して少し書き換えている。東里が鳥取とすれば、
気山町――東里市の西側にある街で、平成の大合併によって東里市に編入された町。鳥取市気高町なんて町名がある。
西米市――県西部の市、山陰横断自動車道の通過市町村。鳥取県西部には米子市がある。鳥取に次ぐ商都で、主要交通の要所でもあり、隣県の島根県ともつながっている。この時代には島根県まで山陰横断自動車道はすでにつながっている。
紙川市――東里市にかつて存在した国鉄東里線で東里市を結んでいた隣県の町。この町についてはQ11にて詳細を書く。
といった感じで各所に分かれている。
Q11:榊と佐山の場所になった鉄道記念館は実在するの?
――約二時間ほどの取材をした後、少し用事があると言って、先にカメラマンを本社に帰した。榊はその足で中心街から離れた東里西町にある鉄道記念館に向かった。東里西町にある鉄道記念館は、東里市にかつて存在した隣県の紙川市
を結ぶ予定だった国鉄東里線上にある記念館である。30年以上前に廃線になって以降、線路は撤去され当時の蒸気機関車と、ディーゼル車のモニュメントを残すのみでそばには当時の駅舎を再現したような小さな建物がある。
榊は建物の扉を開けると電気のスイッチを入れた。休日の入り用は不明だが、平日に至っては管理人もおらず入り口には『見学者は退館時に明かりを消してください』と書かれているだけで誰もいない空間となっている。
佐山と榊が立川の社の迷い神対策を話し合った、東里西町の鉄道記念館は実際に存在しているが、実はこの場所だけ全く別の鉄道記念館をモチーフにしている。
実際鳥取市で廃線になった鉄道線は確認した限りでは存在しない。鳥取県中部から西部にかけてのエリアで存在する廃線がヒントになる。
鳥取県倉吉市にある旧国鉄倉吉線の鉄道記念館がその舞台だ。東里西町と言う名称のため、東里市内の一部とされているが、西倉吉町というと当時の倉吉線西倉吉駅があった場所をもじっている事や、旧打吹駅付近にある鉄道記念館がほぼほぼイメージ通りである。
本編では、国鉄東里線について書かれているが、これは当時の倉吉線に当てはまる。作品の東里線は隣県の紙川市を結ぶ予定だったとしているのも、姫新線の中国勝山駅と倉吉駅の間に計画していた南勝線に伴うもので、旧勝山町の事を指している。
そしてこの鉄道記念館は本編でも書かれているように、入り口には『見学者は退館時に明かりを消してください』という表記と共に、内部照明の電気のスイッチが客を迎え入れる。休日の入り用は不明だが、平日に至っては管理人の姿を見かけない事もあり、そのことが、榊と佐山にとっても使いやすかったのであろう。