0-0-4.ツイッター掲載分設定資料
作者、乾 隆文の名義のツイッターにて、『遙かなるシアラ・バドヴィアの軌跡』の設定を呟く機会がありました。
せっかくなので、自分で読み返せるよう、という意味も込めて記録しておこうと思います。今後何か増えた場合も、7万字以内であればこのページに追記していく形にしたいと思います。
〇 テーマ別設定資料
・主人公 ティリル・ゼーランド編
片田舎の、更に人里から少し離れた山奥に建つ小屋で生まれ、父子家庭で育つ。母親は1歳の頃に家からいなくなった。詳細不詳。本人も、父親から聞かされなかった。父の本のコレクションが幼少時のおもちゃ。物語をひらすら読み漁って育つ。
3歳くらい(だったと思う!)に、野原ひとつ越えた所に家が建ち、ウェルと母ローザが越してきた。なんだかいろいろ事情があったみたいだけれど幼児に大人の事情はよくわからなかった。本人的にはウェルは、物心ついたときから一緒にいた幼馴染で、幼少時の唯一の遊び友達だった。
基本的な勉学の知識は父ユイスに施された。と言っても家でノートを開いて勉強!みたいな記憶はなく、なんとなくの会話で色々なことを教わった。読み書きだけはほぼ自分で覚えた。
ちなみにウェルも、勉強と剣術をユイスに習っていた。ユイスもウェルのことを、自分の息子同様に扱っていた。
ティリルが10歳になる頃、ユイスは何処へと旅に出てしまう。残されたティリルはウェルの家、ローザの元に預けられ居候する形になる。ローザもティリルのことを実の娘のように扱ってくれたのは本編にも書いた気がする。
ちなみに、ユイスはローザに相当な額の養育費を預けています。
居候してから本編までは特に大きな変化もなく、三人で生活をします。
一応触れておきますと、ティリル的にはウェルを異性として意識したことは、一緒に住んでいた間はないみたい。ウェル君側はちょくちょくドキドキしてたようですが、ティリルが色々意識し始めるのは本編スタート後のようです。
・国際情勢編
第一章の舞台はソルザランド王国。魔法科学を発展の基盤とした、魔法文明大国だ。東に機械科学を文明の基盤としたグランディア王国があり、南には森に囲まれた自然主義国ウェンデが、北には何度となく領土拡大を求め侵攻してきたバルテ帝国がある。
今から1000年前、ソルザランドとグランディアは元々ソラスター王国という一つの国だった。だが、ほぼ同時に成立したハース教とグレイス教という二つの宗教の対立により国民が分裂し、分立統合歴0年、二国の前身である西のハーシア王国、東のグラニア主教国に分裂した。
北のバルテ帝国は、とにかく寒い。とても寒い。
寒いのでしょっちゅう南の国に侵攻してくる。暖かい土地を求めて侵略戦争を仕掛けてくる。作中にも既に登場している、近年終結したエネア戦争も、非常に乱暴に単純化すると侵攻国バルテと被侵攻国ソルザランドとの戦争だった。
いまさらですがエネア大陸には928年現在、全部で14の国があります。
現在全ての国が加盟している「エネア連盟」は、統合歴592年に結成された。結成当時の加盟国は5カ国だったが、913年、最も若いロスタヴィア王国が国家独立と同時に加盟し、全14カ国が席を揃える現在の形が整った。
※ 詳細は、設定0-0-1.世界地図 ncode.syosetu.com/n4484fk/1/ を参照のこと。
・魔法大学院編
学校のことは後で本編にも出てきます。15か16節くらいかな? なのでざっくりと。
ソルザランド王国――、当時はハーシア王国の王都サリアに、元々教育機関はあったが、現在の魔法大学院の規模ではなく、王城の中の研究施設の開放、といった感じで一般市民からしたら非常に敷居が高かった。
即位817年にさっそく国号をハーシアからソルザランド王国に改めたエルム一世王が、国民の教育の重要さを説き、大規模な国立学府の建設を提唱する。都にはもう場所がないと進言した側近に「無駄な土地は山程ある」と言い捨て王城の三分の二ほどの面積の敷地を学校に建て替えてしまう。
王城よりも広い敷地面積で、都の中央に新しく建てられた大学。設立当初からソルザランド各地方の名士、研究者、魔法使がこぞって入学を希望した。エルム王は優秀な人材の育成に国費を惜しまず、一方で無能な学徒への扱いは厳格だった。
一世王の晩年には、サリア魔法大学院は世界に名を轟かす程だったが、歴史を追うごとに学院の内部は理想を見失い始める。引退した魔法師の晩年の就職先として教員のポストが斡旋され、やる気のない学生が金を積むだけで卒業の名誉を得る。そんなことが横行するようになり始める。
928年現在、エルム六世王の統治の元、国は武力強化に重きを置いていた戦争の時代を終え、教育と技術発展に国力を注ぐようになった。現在のスヴァルト学院長、ネルヴァン教頭は元々、王城内の要職に就き、その手腕を期待されて学院に赴任した。現在彼らが結果を出しているとは言い難い。
・気候風土編
ソルザランド王国は(非常に都合のよいことに)、日本と同様四季の移ろいが豊かな国。ただし春に桜のような目を引く花はなく、最も華やかな季節は紅葉の時期。特にサリアの人々は『愁象の秋』という表現を使い、秋の華やかさと冬へ移る物悲しさを大切にしている。
現在、分立統合歴はエネア連盟加盟14カ国全てで使われており、この暦に従えば1年は365日、12か月。1か月は31日の大の月と30日の小の月が交互に訪れる。1週間は6日間で1年約61週。4年に1度の閏年は、ソルザランドでは宗教上の由来で「聖年」と称される。
一方で、統合歴以外の暦をいまだ捨てていない国が三つある。北のバルテ帝国とアリアネス共和国、そして西の島国ヤースファン国である。特にバルテは季節感も、雪と氷に閉ざされる厳冬期と僅かに日が差す緩冬期のどちらかしかない。そのため暦も季節を数えず、1年は10カ月、1か月は25日と公転周期からかなりずれている。
バルテ帝国を襲う厳寒は北の海から襲う強烈な風が、ソルザランドとの国境に並ぶアケミオス山脈に阻まれるから。一方で、緑豊かな南のウェンデ国よりさらに南東に続くダザリア半島は、植物の少ない荒れた土地。日中は灼熱の陽光に襲われる、広大な砂漠に覆われている。
・宗教編
《ハース教》
ソルザランド王国、ソフィア王国などに広がる。統合紀元前150年程から、宗教家ハース・ウェリアが唱え広めた考え。唯一神リヴァスを信仰し、あらゆる魔法はリヴァスの力を借りて自然を操る聖なる技とする。あらゆるものは地水火風光闇の六元素によって成るとし、6を聖数とする。
元々はハーシア王国の国教であったが、統合歴378年、国王ニムダ二世とハース教皇ラミレス六世が対立する事件があった。この対立は50年近く続いたが、最終的に自体は国民の暴動にまで広がり、ついに教皇庁のあったクリスタニア市が独立。現在のソフィア王国が建つ結果となった。
ちなみに、ハース・ウェリアは世界のあらゆるものを六元素に分解できると定義し、現代に到る魔法論理学でもほぼほぼこの考え方が踏襲されていますが、魔法の仕組み的には間違いです。
まぁ、本編中で主人公がそれとなく口にしてますけどね。
《グレイス教》
グランディア王国、アトラクティア共和国などで支持される。ハース教とほぼ同時期にソラスター王国に現れたグレイス・ロスによって唱えられた。彼は自らクシュエを名乗り、様々な奇跡を行うことでカリスマ性を高め、その上で様々な「神の示した戒律」を唱えた。
その、戒律の中の一番大きなものが「悪魔の業たる魔法を用いること勿れ」。分裂後のグラニア主教国では「魔法禁止令」が王命による法律として定められ、時代によっては魔法使は迫害、駆逐の対象とされた。
余談だが、ハース教、グレイス教の成立が極めて近い年代にあったことは、単なる偶然ではない、というのが近年の歴史学者の見地である。ソラスター王国内に於ける「魔法」の受け止め方が長く議論され、その結論として「賛成派」「反対派」が宗教の形で成立したのではないかと考えられている。
《アニミア教》
ウェンデ国などで信仰される。
土着の民間伝承を一つにまとめ体系化した多神教。最古の記録としては、紀元前300年頃に現れた宗教学者フェイス・アニアードが編纂した「神書」があるが、体系化「しようとした」記録はそれ以前の遺物からも見受けられる。
現代に於けるアニミア教義については形骸化した部分も大きいが、主なものとしては毎日の日課としての神への祈りの時間を取ること、である。歴史的には厳しい戒律も存在し、破門された者を東の砂漠へ追い遣る「追放令」も存在したが、現在は非常に緩やかなものとなっている。
《クーニア教》
バルテ帝国などで支持される。
選民主義を唱えるクーニア教は、統合歴80年頃に現れたマルコ・バデアが提唱。創造の神イルジュノーや、疾駆の神グレンニドラム、知識の神レナースなど、最高神の元に集う様々な戦神が、いずれ他民族を駆逐する、と教えるのが原理主義。
貧しい土地に封じられ労苦を憂う時代の長かったトリス民族は、この過激な選民宗教の元、何度となく南の諸国に侵略戦争を仕掛けた。
だが、たび重なる戦争に異を唱える者たちもおり、大陸北西のアリアネス共和国やロスタヴィア王国で支持される穏健主義思想も徐々に広まった。
ちなみにバルテ帝国で使われていると前述したバドアス歴では、1年10カ月にそれぞれ10の戦神がついている。1を「生の月」イルジュノー神の月とし、以後、眠・這・立・歩・走・見・知・死の月と続き、10は「回」の月、輪廻を司るフェイ・ルー神の月としている。
・シアラ・バドヴィア編
世界一の魔法使、と謳われる、稀代の天才。
生まれは明確ではなく、ユリの山中に住んでいたルースとクリスの老夫婦に拾われた孤児、というのが一番古い記録である(ちなみに老夫婦の家が、ユイスとティリルの暮らした家でもある)。
世界に名を轟かせた最大の要因は、エネア戦争である。端緒となった戦線を数えれば30年に亘った長い戦争を、ほぼ一人で終戦にまで持ち込んでしまった、という伝説は耳に新しい。だが、戦前には無名の一学生で、戦後すぐに隠居し行方不明となってしまった、謎の人物でもある。
ぶっちゃけこの人の何がすごいかって、この世界の魔法の仕組みはわかっちぇば大陸全てを作り変えることができちゃうくらいの事物の根幹的なシステムでして。それをわかってた、エネア大陸史上たった2人の人物のうちの1人ってことですね。うんもう1人いました。内緒ですが。
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〇 キャラクター紹介
《序章》
ティリル・ゼーランド
女性
16歳
田舎町ユリの外れの山の中出身。
母親死別。父親失踪。幼馴染の母子家庭に預けられる。完全ネグレクトなのに本人気にしてない。顔も覚えてない母親が、世界一の魔法使と聞いて、浮足立ちながら都の学校に入学。基本コミュ障だけど友人運はいいっぽい。
ウェル・オレンジ
18歳
西国グランディア出身。
ティリルの幼馴染。町から外れた山の中で暮らしていたゼーランド親子の家から、のっぱら一つ越えたところに母親に連れられて越してきた。遊び相手は専らティリル。その父ユイスに剣術を教わり、今は南のダザルトで武者修行中。
ローザ・オレンジ
女性
48歳
ユリ市出身。
もう一度言います。ソルザランドの片田舎。ユリの町外れの山の中に、ゼーランド親子が住んでいました。ローザお母さんは小さいウェルを連れて、町から離れた、ゼーランド家から野原ひとつ離れた所に越してきました。何故だ!? 不便だろ!
ユイス・ノル=ゼーランド
男性
41歳
南のウェンデ出身。
ティリルの父親。父子家庭だったのに、10歳くらいの一人娘を隣家に預けて旅に出た、ミスターネグレクト。旅先から時々娘に手紙を送るだけで父親面してる、ミスターネグレクト。しょうがないね、元盗賊らしいし。
シアラ・ゼーランド(旧姓バドヴィア)
女性
享年約22歳(不詳)
ユリ出身
前々宮廷魔法使ライスワイクの一番弟子にして、エネア戦争を単身終結させた世界一の魔法使。一人娘ティリルを産み落とした後、消息を絶つ。王家の調査でも死亡したとの結果が出たが、没年、死因等不明。
《第一章》
ミストニア・ルーティア
女性
21歳
隣国アリアネスの農家出身。
愛称ミスティ。学生寮でのティリルのルームメイト。5歳差同室ってすごいな。単純に人数調整でずっと一人部屋だったので、久々の可愛い後輩を大事に大事にあれこれしてる。勉強大好きでやる気のない学生が嫌い。どき
ゼル・ヴァーンナイト
男性
22歳
北のバルテ帝国出身。
ミスティの大先輩。在籍何年目かとか、いろいろと素性不詳。一応専攻は魔法論理学だが、行使学=使う方もできないわけじゃないっぽい。ミスティとは腐れ縁だったけど、最近特に会話する機会が増えたって専らの噂。
ヴァニラ・クエイン
女性
19歳
ソルザランドの北の町出身。
子供の頃、都で見た教会の宗教画に憧れ、絵の勉強を始める。積極的かと思いきや引っ込み思案。友達思いかと思いきや保身も強い。要するにすっごく普通の人。小説的にキャラ立ち辛いけど人間臭くて作者は好きです。
ヴェルク・フォルスタ
男性
62歳
ウェイン市出身。
前々宮廷魔法使ライスワイクの二番弟子にして前宮廷魔法使。今はその職を退いて魔法大学院にて自分の研究を進めている。実力と知識は学院最高峰だが、偏屈さと専攻のマイナーさで教員としての人気は皆無。要は我儘し放題。
サクル・ラクナグ
男性
35歳
北の小国ロスタヴィア出身。
実技演習(基礎)の教師。本人的に(基礎)が重要で、応用内容はそれぞれ専門を持つ他教員に押し付ける。曰く、自分は基礎だけしかできない人間だから。ちなみに、キャラのモデルは『赤ずきんチャチャ』のラスカル先生。
ラヴェンナ・アルセステ
女性
17歳
アリアネス共和国フィアス市出身。
大陸北東部から東部一帯を主戦場とするアルセステ通運の一人娘。要は権力持ってる大会社の社長令嬢。わがまま。高飛車。背景はいろいろあるけど、悪役は悪に徹してこそ華。実は彼女にはこういう過去があって~とか一切やる気なし。
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〇 用語紹介
《大学関連・学術用語編》
1.サリア魔法大学院
ソルザランド王国王都サリアに建つ王国最高学府。大陸でも三指に数えられる研究機関である。原則的に予科8年本科3年。さらに狭い門を潜り一部の学生が専門課程に進む。本科生はさらに魔法行使学、論理学それぞれの専攻に分かれる。
2.魔法行使学
いわゆる実技。大学が輩出した魔法使として、全島戦争で活躍したネレーザ・ライスワイクや、現宮廷魔法使のセラード・ネスティロイらが挙げられる。世界最高と名高いシアラ・バドヴィアも、卒業はしていないものの大学院の学徒であった。
3.魔法論理学
実技に対する座学。元来魔法は特定の宗教観に於ける超越的存在の力とされていたが、ガーランドの唱えた精霊説「魔法の根源が精霊という存在であるとする説」、さらにそれを発展させたタナヴィの精霊物質説「精霊を目に見えない微細物質であるとする説」により急速に研究が進められる。
4.精霊説
統合歴597年、魔法学者ワルミー・ガーランドによって提唱された仮説。魔法を神の力とするハース教、悪魔の力とするグレイス教の考え方が強い中、「自然の力」とするウェンデ国アニミア教の立場に影響を受けたガーランドが、魔法の根源存在として神でも魔でもない「精霊」を仮定した。
5.精霊物質説
統合歴657年、魔法学者ロンダム・タナヴィによって提唱された説。ガーランドの登場以降、両教の凋落もあり注目を集めていた精霊説だが、「精霊とは何なのか」という議論も長らく続いた。タナヴィが「目に見えない微細物質」と仮定したことで、以後の魔法論理学研究は大きく発展する。
6.精霊
ソルザランドに於いては、ガーランドに名付けられタナヴィに定義づけられた魔法の根源物質。ウェンデ国に於いては、古代から連なる民話・神話に登場する妖精の総称。厳密には全く別のものであるが、精霊と聞くと意思ある精神的存在を思い浮かべるソルザランド人も数多い。
7.魔法
意思により自然を操る法。誰にでも使えるものではなく、その能力は血縁による素地の影響が強い。現代魔法論理学によれば、精霊物質が人の意思に反応し、思い描いた現象を実現させる法である。ただしその詳細な原理については、今後の研究が待たれるところである。
8.四大精霊
ガーランドは精霊存在について、先に基種四種の存在を主張している。即ち火の精霊サランディア、水の精霊ウォーディア、風の精霊サイファ、土の精霊ノルミナである。これらはウェンデの民話から取られた名称であるが、その正体を物質としたタナヴィも、名称は継承して用いている。
9.六大精霊
更に晩年、ガーランドは先に挙げた四大精霊に光の精霊レイア、闇の精霊ディルカニアを追加し、基種精霊を六種とした。ただ、これは彼の時代にまだ権力を持っていたハース教による聖六属性へ忖度した結果ではないか、との意見も強い。
10.バドヴィア論
ガーランド、タナヴィを基礎として発展した現代魔法論理学に対し、いくつかの共通点を残すものの、全く新しい観点での魔法論理を残した者が、シアラ・バドヴィアだった。彼女は火水風地に「空」「時」「場」という独自の属性を組み合わせ、更に空と火が水風地に対し上位概念とする。
ただしバドヴィアは自らの研究ないし魔法構造の理解を、文献としてはほとんど残さなかった。唯一現存するのは落書きのような覚書が数枚のみで、これらは現在王城に厳重に保管されている。手掛かりが少ないため研究する者は少なく、いまだ学説としては発展の足がかりが見つからない。
《エネア戦争編》
11.分立統合歴
連盟認定の世界標準暦。エネア大陸全14カ国で用いられているが、例外としてバルテ、アリアネス、ヤースファンに於いては他の暦と併用されている。
ハーシア王国のニムグ一世王の勅命でミラ=ロイドが作成した暦を原型とし、592年に発足したエネア連盟がこれを現在の形にまとめた。
12.エネア連盟
エネア大陸全14カ国をまとめる国際組織。ソルザランド王国を盟主とし、現代では、統合歴922年にバルテ帝国が加盟したことで14すべての国が加盟している形となる。ただし、その発言力は全島戦争での勝敗がいまだ大きく影響しており、バルテ、フィールラストラス等は冷遇されている。
13.全島戦争
統合歴約880年頃にその戦端を伺うことができ、909年に終結した、大陸11カ国を巻き込んだ大戦争。ソルザランドを盟主とするソルト同盟と、バルテ帝国を盟主とするアルヴァ同盟とが交戦したというのが一番大きな見方だが、細かな戦局は各国の思惑が入り混じり、全体を泥沼化させていった。
14.アルヴァ軍事同盟
851年、13の歳で即位したデ・クーニア王国国王ソルジェン一世。国号をバルテ帝国に改めた彼は、フィールラストラス、ヴェスター、ザド、アトラクティア各国と手を結び、大陸全土を支配する目的のためアルヴァ同盟を締結した。ソルザランドを最大の敵国と仮想したもの。
15.ソルト共闘同盟
アルヴァ同盟の動きに危機感を抱いたソルト民族諸国の代表が、ソフィア王国クリスタス市にて密談を行い、アルヴァ同盟に侵攻された際の同盟関係を約束する。締結された862年時点での加盟国はソルザランド、グランディア、ソフィア。後年886年、ウェンデ国も加盟する。
16.ディヴァウ作戦
904年、アルヴァ同盟を攻略すべくソルト同盟側が展開した作戦。北のバルテ帝国と、北東のフィールラストラス、東のアトラクティアらとは、間にフィリース海がある。その領海を制圧しアルヴァ同盟の連携を分断した。結果的にこの作戦が奏功し、全島戦争第一の転機となった。
17.ランドラルグの戦い
905年、当時バルテに占領されていた、現ソルザランド王国北端都市ウェイン市を奪還すべく、ソルザランドにより展開された戦い。現役は退いていたが、未だ国内最高峰と謳われていた元宮廷魔法使ライスワイク老を、満を持して投入した。しかしソルザランドは敗戦し、老は戦死。
18.カルミオの戦い
906年にソルザランド軍に入隊したバドヴィアの初陣。戦い自体は907年。既にバルテの占領下にあったソフィア王国から、更に南進、グランディア王国をいよいよ陥落しようとしたアルヴァ同盟軍を、カルミオ平原にて待ち受け、見事退けた。
19.シアラ・バドヴィア
ライスワイク老の秘蔵っ子にして世界最高の魔法使。その実力は、泥沼化した全島戦争に颯爽と参戦し、僅か3年で終戦に導いた事で、異を唱える者のない伝説と化している。戦後、バルテ国軍兵士であったユイス・ゼーランドと結婚し、ユリの山奥に隠遁。子を成した後、早逝した。
20.ユイス・ノル=ゼーランド
ウェンデ国出身の元盗賊。両親を事故で失った彼は、剣と魔法を武器に砂漠で生きていく決意をする。優秀な魔法剣士であったがある時からなぜか魔法を封印。以後剣術のみに頼った生き方を選ぶ。全島戦争末期にバルテ国軍に属したが、バドヴィアに敗れ、見初められる。
《地理・歴史編》
21.エネア大陸
物語の舞台である大陸。エネア本島と、北の小島アンジュ島、東のアーグ島、西のハンシア島を主な土地とする。エナ民族、ソルト民族、トリス民族、アグラード民族の四民族を抱え、統合歴に従えば紀元前約5000年から紀元後約1000年まで6000年程度の歴史を紡ぐ。
22.エナ民族
紀元前5000年頃、大陸中央部にエナ文明を拓いたとされる民族。古くから自然と魔法とを敬って生活し、争いごとを嫌ったとされている。トリス、アグラード民族と類似した身体的特徴が多く、三民族が同じ人種と見る説が優勢だが、黒髪黒眼を特徴とするトリス民族を別人種とする説も根強い。
23.トリス民族
北方アンジュ島にティスタ文明を拓いた民族。アンジュ島には今も数多くの遺跡が発見されているが、その多くは雪と氷に埋もれたまま発掘作業が進められず、貧しい土地と厳しい自然環境下にあったトリス文明は、古代の奇跡とされている。黒髪黒眼と好戦的な性格が特徴的とされる。
24.アグラード民族
東方アーグ島にアグラ文明を拓いた民族。後年、民族学的にはアーグ島に残りアルド王国を築いた「フォア系」アグラード族と、大陸に移りフォルタル王国を建てた「レスト系」アグラード族とに分類して語られる。
25.ソルト民族
紀元前1400年頃、大陸北西サルス半島に突如現れた、大陸唯一「土着ではない」民族。歴史家の間では、数十名のソルト族が大陸の外から漂流したのが起源であるとされ、あらゆる歴史教育でもそれが通説とされている。
短期間でその勢力を拡大し、有史以来初の戦争を演じた民族である。
ちなみにソルト民族については魔法への適応力が非常にアンバランスで、全く魔法の才がない者も多数存在する一方、ソルザランドやソフィアの国民は純ソルト人であっても魔法の才を持つ者が多く、大陸三大魔法使とされるバドヴィア、サランダ、テルディアは全てソルト人女性であるとされる。
26.実践魔法学の祖
現代「行使学」と呼ばれる魔法実技だが、中でも如何に簡単な魔法で大きな成果、複雑な現象を実現させるか、という研究分野を実践魔法学と呼ぶ。728年、ハーシア王国宮廷魔法使に就いた、アリス・テルディアがこの観点を学問として打ち立てたとされ、彼女にはこの二つ名がついた。
27.水の統率者
758年、師匠であるトゥールーンに連れられ、ハーシア王国魔法研究機関に所属した、水魔法の天才。アリアネス共和国ロード市の出身で黒髪が特徴的だったが、血筋的にはトリス族の血を混ぜたソルト族であったとされている。
テルディアと並び稀代の魔法使と称された。
28.大陸の外
専門用語ではないが、概念として。
魔法学、機械工学が発達し、航海術や航空技術の発展が見込まれる現代にあっても、いまだに大陸の外の世界を発見し帰還した者はいない。外の世界を目指して航海に臨んだ船は、須らく嵐や大波に飲まれ、運が良くてもエネア大陸に戻されてしまうのだ。
29.第一次技術革命期
時期的には600年代末期から700年代初頭。繊維工業技術の発達や、製鉄法の革新など、機械技術の躍進的な発展があった。第一次、第二次革新期を経、グランディア、アトラクティア等の諸機械文明国家は、その技術力を飛躍的に向上させ、国力を増強させた。
30.第二次技術革命期
それでも大陸の外に異なる土地があること、ソルト民族が外から漂流してきたことに信憑性を加える出来事として、グランディア王国に登場したカローラ・ダイムの存在がある。外から来たと公言する彼は、800年代初頭、蒸気機関を発明するなど王国に革新的な機械技術をもたらした。
《砂漠編》
31.嫌精石
「ケンセイセキ」と読む。
グランディア王国が秘密裏に開発した、精霊の反応を失わせる石。魔法学院で見られるオーソドックスなものは、個人の範囲から精霊反応を失わせ魔法を一時的に使えなくする大きさのもの。効果に指向性を持たせることもでき、スタディオンで重宝されている。
32.商人同業者組合
商人の町ダザルト国の首都、ハーン市に本部を置く、商人たちの同業者組合。各国からあらゆる形での商人がやってくるこの国だが、真っ当な商売を行うためにはグァルダードへの登録を行い、管理下に置かれる必要がある。逆に言えば、登録すれば誰でも商売ができる国、とも言える。
33.盗賊同業者組合
レアン国の盗賊たちを束ねるため、首都セラムに拠点を置く同業者組合。所属する盗賊たちは、主に商人ら一般市民を襲う「掠奪者」と、契約の元彼らを護る「護衛者」に二分される。
グァルダードは、襲う者と護る者、二者を統べる非常に歪んだ存在として在る。
34.掠奪者
俗称で《ハイエナ》と呼ばれる、砂漠に置いて商人ら「持つ者」から奪うことを生業とする盗賊。ギルドに登録することで生じるメリットが少なく、護衛者と兼任する者でない限り、登録しない例も多数存在する。
35.護衛者
俗称で《番犬》と呼ばれる、砂漠の商人と契約を結び彼らを護ることで契約料をもらうタイプの盗賊。盗むことをしないため「盗賊」の字義からは外れるが、殆どの者が両役兼任であり、盗みを働かない護衛者を選別することは難しい。
36.ラナマーヴェ団
伝説の盗賊バスラ・アールダー=クウェイトが率いる盗賊団。結成は914年頃。最盛期でも所属団員数は20名にも満たなかったが、最盛期はタミア砂漠でも史上最強と謳われるほどの実力と戦果を誇った。現在は殆どの団員が離れ、バスラとその子供が根城に残っているだけ、という。
37.ドルセス団
819年、当時の盗賊ギルドへの反発心を持った者たちによって結成された盗賊団。長く、盗賊ギルドの組合長の座についていたパミラ団への対抗勢力として、一時期は砂漠最大の規模も誇った盗賊団だったが、現在は古豪のひとつに数えられる程度の勢力に落ち着いてしまっている。
38.パミラ団
716年、砂漠の盗賊を一つにまとめるべく結成された盗賊団。それ以前はヴァルティア団が握っていた外交権を受け継ぎ、また国内の盗賊たちをまとめるべくギルドを結成して、内外を統括するレアン国代表となった。西国ウェンデに追従するような外交に偏り始め、反感を募ってしまった。
39.追放令
102年、ウェンデ国王ハヌア三世王によって施行された法律。
同王が前年に国教と定めたアニミア教義について厳格な戒律が設けられ、教会によって異端とされた者は南方のタミア砂漠に追放、流刑とされることになった。この流刑民たちが、後のレアン国を建国する盗賊の祖となる。
40.エナ戦争
517年、ウェンデと、436年に独立が認められたレアンとの間に起こった戦争。敗北したレアンはその後長い間ウェンデの属国となり、各地に官吏を置くことを義務付けられた。
600年代半ばに発表されたラヴィエルの代表作『風は過ぎ』は、この戦争の傷跡を残すアンテの村を舞台とした。
《アルセステさん周辺編》
41.ソルザランド王国国議会
ソルザランドの国政を担う組織。国王を頂点にして宰相、宮廷魔法使、国議会(6名構成)の三権が意見を出し合う。そのメンバーは6年に一度、国王の選ぶ委員によって選定される。その際過半数が入れ替わらなければならず、一人の連続最大任期も12年と定められている。
42.国議会議員選定委員
国議会議員を選定する権限を持つ委員。
エルム一世王は一介の兵士や町娘、他国からきた商人などにその権限を与えていたが、二世以降の王たちはさすがにそのようなことはせず、現在はそれなりの地位、見識を持った者三名が任ぜられている。
43.アルセステ通運
アリアネス共和国を拠点に、ソルザランド、ロスタヴィア、ソフィア、ウェンデ等西方諸国に商域を広げる大企業。いまだ鉄道の走っていない西国の物流を一手に引き受ける。
近年、代表のアルセステがソルザランドの元貴族パルファディア家の令嬢と結婚し、政治力を握った。
44.『エルム一世王の功績 ~ソルザランド王国建国史~』
ソルザランド王国建国の祖、マイアル・エルミア=ハーグ王の生涯をまとめた研究書。歴史学者ライム・シエヴェルの著作。
過激王エルム一世王は逸話も多く比較的文献が残された人物だが、取分け詳細に記録をまとめた書として評価が高い。
45.クロスボール
ソルザランド王国国技。十二人をひとチームとし、「クロス」と呼ばれるラケットのようなクラブでボールを相手ゴールに入れる、ラクロスに類似したスポーツ。
元々は古代ソラスター王国に起源を置く宗教儀式だったが、今ではその意味合いはほとんどない。
46.サリア・クロスラディア
サリア市の東部を拠点とするクロスボールのクラブチーム。927シーズンまでに国内リーグ戦連覇を成し遂げており、928年夏、三連覇を賭けて更なる選手補強に余念がない。
密かにアリア王太女をファンに持つが、国王家が一つのチームを贔屓にするとか、本当はいけない。
47.ユニア・デ・サリウム
サリア市の西部を拠点とするクロスボールのクラブチーム。長らくクロスラディアの後塵を踏む弱小チームに甘んじてきたが、近年、アルセステ通運をメインスポンサーに置くことで急激に力を付け、王都の覇権を争えるまでに成長した。