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今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第三部:旋風に舞う白き翼、目覚めの鬼はから紅に萌ゆる
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【第三部:完】

 今から千年も昔、平安時代から陰陽師は人知れず存在していた。安部家、賀茂家、土御門家は特に多くの陰陽師を輩出した。


 それ以外に陰陽師を輩出している家も数少ないが存在している。蘆屋家もその一つ……陰陽三家に数えられていないがいずれも負けず劣らずの精鋭がいる。祖は蘆屋道満あしやどうまん。


 かつては他家同士争い合っていたが今は昔で、現在は協力的な立場となっている。「検非違使」という組織を作り上げた。検非違使とは治安維持をするために令外官と呼ばれ、陰陽寮でもその存在が認知されていない陰の国家公務員だった。


 協力的と言っているが陰陽寮さえもうかつに手を出すことができない組織で犯罪者を取り締まる警察機構、捕らえたものを裁く司法組織、死体や汚物の処理などの清掃作業、「ケガレの処理」など全てに任されていた。


 ケガレとは古くから死・疫病・月経などを意味する。不浄なものは災いをもたらすものとされてタブーとされてきた。それを専門するものは、蘆屋家がその役目を一任してきた。


 蘆屋家の代々当主は性別関係なく、「椿つばき」という名を付けられる。


 椿は古くからある花で日本最古の歴史書「日本書紀」にも記載されていて、その名前が登場している。


 そして現当主にまだ16歳の年端もいかない少女がなった。当主の椿は世襲制では無く、先代の当主から実力を認められ、襲名で決まる。



 芦屋家は日本にいくつもの日本家屋を構えており、東京に本家がある。その本家本元の茶室には月明かりの中、小慣れた所作で濃茶をたててその味に舌鼓を打っていたものがいた。


 そして彼女は茶碗を二階反時計周りに回して戻した。そして椿はおもむろに近くに置いていた刀を持ち上げた。本来、茶室では帯刀や武器の持ち込みが許されないがこの茶室は当主の所有物のため彼女だけが許される。


 古い油を取るために「椿」は打ち粉をし、ポンポンと優しく付けて紙で拭いた。




「さすがは私の命を奪った、名刀【髭切】ね……今日はまだ一段と綺麗ね、あるいは私の主君が目覚めて喜んでいるのかしら」



「ーーねえ、酒呑童子様、やっと目覚めたのね、 私の中の「鬼・」が恋しがっている」




 酒呑童子にはかつて意気投合した部下がいた。その名は茨木童子いばらきどうじ。


 共に暮らしていたところ頼光四天王によって討伐され、茨木童子に渡辺綱によって髭切で殺され、酒呑童子は首を斬られて行方知れずとなった。


 源家は茨木童子の体を葬るために蘆屋家に処理を任せた。祖先、蘆屋道満は一方的にライバル視をしていた安倍晴明に並ならぬ敵対心を持っていた。


 そして、蘆屋家は隠れて非人道的な人体実験に手を染めた。茨木童子の体は死滅しても魂は残っていた。


 魂はとてつもないエネルギーの塊だった。そこに目をつけた蘆屋道満はどうにか利用できなかいかと考え当主となった椿に継承する事になった。そして同化したものは茨木童子としても生まれ変わる。強い風が彼女に当たり、艶やかな黒髪が舞い踊る。


 夜空に浮かぶ月を見上げながら、赤い唇は弧を描き嬉しそうに笑みを浮かべた。




 〇〇



 事件のあった翌日に花月はいなくなったことを知られてしまい、心配かけたので朝日の家に赴いた。花月が行くのを尻込みしていたので桃華は付き添う事にした。


『そんなに怯える事あるかしら』と桃華は考えていたが、その考えが甘いと気づいた時はすでに遅かった。


 家にいつものように入れられた時は普通だったが、とにかく志郎の笑顔が怖かった。


 笑顔が怖いと思ったことがあっただろうかとまだ怒られていない桃華も生きた心地がしなかった。


「志郎さん、あの…心配をかけてすみませんでした」


「ふ〜、本当に心配しましたよ 嘘はダメですよ。友達と夜に遊びたくなって迷子になっていたなんて」


「うゔ…ごめんなさい」


 どう言い訳をしようか考えた結果、迷子という恥ずかしい理由だが致し方ないと花月は沈黙する。反省している花月をみた志郎は息をつき優しく声をかけた。


「本当に何事もなくてよかったです」


「志郎さん…」


「花月さんが無事に何よりでした」


「真澄さん」


 自分を心配してくれる人たちの言葉に花月は目頭が熱くなり涙が止まらなくなる。


「はなちゃん」


「朝日ちゃん…」


「無事で本当に良かった」


「ごめんね、本当にごめんね 朝日ちゃん」


 涙を拭う花月を見て、朝日は本当は抱きしめたかったがなんとかグッと堪えて握手だけに留めた。ようやく落ち着いて、それから朝日の家でご飯をいただき、お茶をしている時、桃華が口を開いた。


「あっ、そうだ」


「うん?」


「私、明日、寮に帰んないと行けないんだった」


「……え それって」


「さすがに長期間の外泊はまずいからね、寮長から小言を言われるのもちょっと面倒臭いのよね」


「そうなんですか、それはしょうがないですね」


 花月はしょんぼりと下にうつむき、隣にいる朝日は心の中では喜んでいた。


(え、帰るの?!)


 少しでも心労の種を無くしたい朝日は心の中で喜びながら答えた。「それは残念ですね」と相槌をうった。


 そして桃華は寮に帰った翌日に花月は朝日を迎えに行き学校に向かった。教室の中で友希子は花月に挨拶をした。


「おはよう、はな〜」


「…あ、おはよう 友希ちゃん」


 なんだか元気がない友人の様子に友希子は隣にいる朝日に声を忍ばせて聞いた。


「はな、どうしたの? めっちゃ元気がないんだけど」


「あ〜、実はですね……」


「みんな席について」


 朝日が言いかける前に先生が教室の中に入ってきた。いつもより数分早い登場に朝日は少し驚いた。


「今日は転入生を紹介するわね」


「入ってきて」


 先生の掛け声で教室の外で待っていた生徒が入ってきた。


「はい」


 入ってきた人物に朝日と真澄、面識がある友希子そしてどこか気落ちしていた花月はその人物に釘つけになっていた。


「自己紹介をお願いします」


 そう言った彼女は堂々と胸を張り深々とお辞儀をして自己紹介をした。


「私の名前は烏丸桃華と言います、短い間ですがよろしくお願いします」


 そこには先日、別れたはずの桃華が立っており、驚いた花月は喜びの表情をみせ、朝日と真澄は開いた口が塞がらないというなんとも忙しない1日の朝の始まりとなった。

読んでいただいてありがとうございました!

ブックマーク、評価などしていだだけると飛び上がるように喜びます!


別作品に『魔法世界の少年ティルの物語』という作品があります。ファンタジーものが好きな方におすすめです٩( 'ω' )و

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