序章:業火の中で
やっとこさ第三部の投稿が開始です(´∀`*)新しいサブタイトルが増えてくると新鮮な気持ちですね╰(*´︶`*)╯♡
「火事だー!」
切迫した声と共に、ジャンジャンジャン……ジャンジャンジャンと半鐘の音が里中に鳴り響く。
里には各所に火の見櫓があり、火災などの警報に半鐘を叩きならす。眠りについていた里人は何事だと飛び起きる。
鐘の鳴らし方に火元までの距離をあらわしていることはこの隠れ里での大人達は知っている。火元は近いことが分かり、どこで火の出が上がっているのかと周囲を伺うと一人の里人が声をあげた。
「おい、あそこ煙が上がってないか?」
「うん?…ああ! 真っ赤に染まっている」
その声につられるように気づく人たちも増えていった。
「なあ、あっちは南方院がある方角じゃないか」
うわ言のように話すと「そしたら、ここで喋っている場合じゃねえ」男性の何人かは走り去っていった。
その光景を見ていた一人の男性も火消しの手伝いに行くために自分の準備と一旦家に戻ると、物音で男性の娘が起きてしまった。
「…お父さん、どうしたの?」
「おおっと、起こしてごめんよ。 近くで火事があった見たいで今から火消しの手伝いに言ってくる」
大事であることに寝ぼけていた娘の目は見開く。
「火事…!」
「そう、だからちょっと出かけてくるな」
「う、うん。 行ってらっしゃい」
女の子は急いで父親の無事を願って火打ち石で火花を起こす切火をした。これには身を清めるまじないや、火が魔よけになるというお祓いとしての意味がある。
『お父さん、無事に帰ってきてね』
父親の出ていった姿を見送り扉を閉めようとした瞬間、近所に住む人達の声が聞こえた。
「火元はどうやら南方院の方らしいわよ」
『……え、今なんて』
「院が火事があったの?! 殿や奥方様は無事なの……? それにーー若君は」
「まだ無事かどうか知らせがないから分からないわね」
女性達の会話が聞き取ることができなかった。
『どう…ゆ…こと、南方院が火…事?それに若君の安否が分からないって……そんなっ、だって昨日は会ったばかり』
いきなりの情報量に頭が混乱し、女の子は茫然自失になった。
『嘘だ…、そんなの嘘だ……』
焦燥に駆られた女の子は裏口から家を飛び出し、火元になった南方院に向かった。
『だって、約束したんだもん。 もう一度話がしたいって』
気持ちが溢れるように涙を零しながら無我夢中で走った。
そしてようやくたどり着いたものの、厳かな雰囲気に建っていた立派なお屋敷は火の海と化しており、屋敷の前には大勢の野次馬や里人達が大勢いた。大火に呑まれた家に小さな女の子はただ無力に等しかった。
「そんな…こんなことって」
むせぶ熱風と煙に咳込み震える口元を手で抑えた少女は、周囲を伺っても見当たらなかった。
「ここにもいない……じゃあ、まだ中に?」
女の子は火の海に飛び込もうとした瞬間、里人の女性に止められた。
「ちょっとあんた、何を考えているんだい?! その中に飛び込んだら死んじまうよっ」
「行かせてください! 中に友達がいるんですっ」
女の子の発狂した声に、周りはなんだなんだと興味を抱く。そしてそれを見兼ねた火消しの一人が近づいて少女の首元に手刀を叩き込み彼女の意識を奪った。
女の子は突然のことで対処できず崩れ落ちるように倒れたのをその火消しが受け止めた。意識を失う前に申し訳なさそうな声が聞こえた。
「悪いな嬢ちゃん、もうこれ以上犠牲は出したくないんだ」
『……待って、私はまだ何もできていない。何もできなかった…、ーー私は『あなた』に助けられたのに』
最後のあがきに手を伸ばし女の子が最後に見たのは、未だ業火に焼かれる屋敷を目に焼き付けながら、意識を失った。
ゴールデンウィークに突入ですね(´∀`*)仕事場が休みだったらいいでんすけどね、イライラしているお客さんの相手をしたくないです_:(´ཀ`」 ∠):
少しずつ投稿していきます!次の投稿は3日に投稿します╰(*´︶`*)╯♡新しいキャラが登場します!




