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第五話:花見弁当は緑あふれる中庭で

 中庭に入るとそこには庭園があった。中庭には見るものを、幽玄な世界に誘う桜の木や常緑樹などがあおあおと繁っている。花壇などには、可愛らしい花やいろんな花が植えられている。


 私達以外にも結構他の生徒も来ていて、人気のスポットみたいだ。早めに来たため、あともう少しすればまた増えるだろう。


「中庭とか初めて来たけど綺麗だね」と隣を歩く朝日ちゃんがに私に語りかけた。


「うん。 風も気持ちいいね」と朝日は同意する。


「おっ あそこ良いんじゃない?」


 私と朝日ちゃんの前を歩いていた友希ちゃんの声に反応し、その方向を見ると一本の木がありまだ誰もそこには座っていない。私達は木陰の下で食べることにした。


 布で結ばれていたお重のその結び目を解くと、お重の上に達筆な文字で書かれたお品書きが添えてあった。


 それを見るとーー


【一の重】

 アスパラガスの肉巻き

 タケノコのきんぴら

 カニのかまぼこと菜の花の卵焼き


【二の重】

 鶏の和風ピカタ

 カツオの竜田焼き


【三の重】

 枝豆と鮭フレークのおにぎりと梅おかかのおにぎり


 これを作るのに2人が早く起きて準備してくるたのだと思うと、私は無性に嬉しかった。お重を一の重からとそれぞれ開いた瞬間、3人の歓声が上がった。


 色とりどりのおかずにどれを取るまいとか悩みたいところだが、今は昼休みのため時間は限られている。


 一人1つずつおかずをお重の蓋によそった。


 おにぎりは枝豆と鮭フレークのおにぎりと梅おかかの2種類。

 一口で食べやすいように、コロッとしているの可愛い。花月は手毬寿司みたいなだな〜と思い一つ頬張った。


 少し前は普通の寿司が一般的だったが、今ではスーパーなどで手毬寿司が販売されているのをよく見かける。


 口の中に入れた瞬間、鮭の甘塩っぱさと枝豆の豆独特の旨みで食欲が進む。


 鮭フレークは大体2種類が市販で売られている。鮭の味が本格的に楽しみたい人は鮭の塩味が強い荒くほぐした焼鮭はお茶漬けに合いそうだ。


 子供の頃から慣れ親しんでいるのはそぼろ状になった鮭フレークも捨てがたい。


 私はもう一つのおにぎりも食べた。


 テレビ番組で見たのだが、気温が高くなると夏とかには食中毒になりやすい。梅を入れておけば食中毒にならないと思われがちだがそれは大きな落とし穴だ。


 梅には殺菌効果があるのは事実だがその効果は梅があるところのみで、白い米粒の方が食中毒の原因になるのは寝耳に水だったと記憶に新しい。


 ならどうすればいいかとその後に食中毒を防げられるというレシピがあり私はそれに見入った。


 ようは簡単である。


 梅が一ヶ所ではなく、全体に混ざればいいだけのことだ。梅を潰してそれをご飯に混ぜて白ゴマをを入れたら完成である。


 最近テレビであった健康志向の料理番組にあったから志郎も一緒の番組を見ていたのだろうと花月は思った。


 梅は塩が効いたすっぱい梅とかあるが、これはかつおの風味と甘みが効いたかつお梅という梅干しだ。


 それにかつお節を足したら、かつお梅の旨みが相乗されてより強調される。


 歯の奥で咀嚼すると米粒の柔らかさとは違うゴマの食感がプチプチと小君味良く、白ゴマの香ばしさが鼻に抜ける。



〇〇



 次は一の重に入っていたタケノコのきんぴらを食べた。きんぴらはごま油で炒めて醤油、砂糖、みりんで味付けをする。


 きんぴらはごぼうが主役になることが多いが、今が旬のタケノコの食材を主役にしている。旬と呼ばれる食べ物には、体調を整えてくれるだけではなく、栄養価も高い。


 それだけではなく、お財布的にもスーパーなどの店頭で安く販売されると食費を抑えられる。ごま油風味の人参も甘辛くなっていて、白いご飯が欲しくなった。


 お次は噛めば肉汁が出そうな豚肉にアスパラガスを巻いた肉巻きだ。これは変に味付けしなくても塩胡椒だけでも十分に美味しい。


 肉の旨味とアスパラガスのコリコリとした歯応えと風味がなんとも言えない味わいになっている。


 アスパラガスは硬い根元の部分をピーラーでむき、薄切りの豚肉を巻きつける。両面ともを焼いて、少し蒸し焼きにして焼き加減を見て良さそうだったら完成だ。


 そして、鮮やかな黄色い卵焼きに入っている食材は菜の花とカニ風味かまぼこの卵焼きだ。


 カニ風味のかまぼこは一人暮らしをしている花月にとってよくお世話になっているチルド食品である。サラダに入れてもよし、酢の物にいれても美味しい。


 かまぼこをみじん切りにしたり、縦に割いて麺のように食べるのも良い。

食用の菜の花はあまり食べたことがない食材でクセが強いのが難点な食材と花月は記憶している。


 恐る恐る食べてみると卵焼きとかまぼこの甘みと旨みが菜の花のほのかな苦味を和らげてくれる。


 子供は少し食べにくいが、大人が食べるならこれぐらいのほろ苦さはちょうど良い。


 最後はニの重。

 鶏の和風ピカタ。どこが和風なのか一口食べると食べた瞬間、梅の風味が口いっぱいに広がった。


 鶏肉に纏っている青い粉末はみじん切りにされた大葉だとは私は発見した。


 そぎ切りという肉の切り方によって食感と弾力が格段に違うことを九曜に教えてもらった。


 その時に食べた肉の美味しさと言ったら、その時の感動は今でも覚えている。


 私の母親も料理好きで色々と教えてもらっていたが、肉を切るのはいつも母だった。


 キッチンに立ち、料理を手際よくする母を隣で見ながらいつか教えてもらおうと思っていた私だったが、教えてもらう前に母は亡くなった。


 志郎さんが言うには肉を切るというより繊維を切るというのが正しいみたいで、私が分かるまで丁寧に教えてくれた本当に優しいお兄さんだ。


 最後に食べたのはカツオの竜田揚げならぬ竜田焼きだ。カツオを醤油、みりん、生姜で臭みを取り、漬けこむ。


 水気を取り、片栗粉を満遍なくまぶして少し多めの油をフライパンに垂らして焼いたものだと思う。


 揚げ物も美味しいが、大量の油とか必要なのと揚げる時間とかで手間がかかるので焼いた方が時短にもなる。


 お弁当を食べ終わり、持ってきた水筒をの中には玄米茶が入っている。


 お茶で一息しようとした私と朝日ちゃんだったが、友希ちゃんが近くに置いていた片手に大きなバックを持ち、あぐらをかいた膝の上に載せバックの中をゴソゴソしているのを目にした。


 包装されている袋を破き食べやすいように少し袋を下げて出てきたコッペパンを口いっぱいに頬張る友希ちゃん。


 志郎さんと真澄さんの弁当が決して少なかったわけではない。現に私と朝日ちゃんは満腹でこれ以上は食べることができない。


 その食べっぷりに驚くこともなく、慣れた私はそれを見て笑いがこぼれた。


「…ふふ、相変わらず中学の頃から変わらないね。その食べっぷりは」


「モフファナ(そうかな)?」


 もぐもぐと口いっぱいに詰め込んだ友希ちゃんは上手く発音することができなかった。

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