序章:暗闇からの手招き
明けましておめでとうございます╰(*´︶`*)╯♡第二部「人魚姫は誰が為に空に歌う」を改めてよろしくお願いします!
青木ヶ原樹海あるいは富士の樹海とも呼ばれている。
山頂から眺めると木々が風になびく様子が海原でうねる波のように見えることから「樹海」と名付けられた説もある。樹海の歴史は約1200年とまだ浅く、若い森である。
「青木ヶ原樹海が自殺の名所」という噂により、他の深い森より自殺者が多く、その遺体が遊歩道からそう遠くない所で見つかることも少なくない。
「青木ヶ原樹海は自殺の名所」というのは、テレビドラマ化もされた小説などで取り上げたために有名になったという説がある。
それは青木ヶ原樹海だけに限ったことだけではなく、深い森ならどこでも同じである。
樹海の奥に人影が立っていた。外灯もない、電気の明かりも付けずにである。
今は黄昏時ーー1日のうちに、日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯である。
またの名を「逢う魔が時」「大禍時」と言われ魔物に遭遇する、あるいは大きな災禍を招きやすい不吉な時間と言われている。
視界が見えているように、その者はつまづきも転びもせずに悠然と歩いている。人は暗闇を怖がる。
けれどこのものは闇を恐れていない。まるで、闇そのものようである。その者がピタリと歩みを止めた。目線を下に手をかざし、初めてここで口を発する。
「応え」
冷たく凍えるような響く声音が周りに広がっていく。
『ーー誰』
それに応えたものがいた。
『ーーここはどこ』
辺りを見回しても何も無い。なんでこんな所にいるのか思い出せない。
一寸の光も無い暗闇の中にいる。こんな所なんて一刻も早く出たいと願っていると、一筋の光が見えた。
神々しいほどの輝きに目が眩む。私は今どこにいるのだろう。
「応え」
またあの恐ろしい声が聞こえる。
『あなたは誰?』
『誰かそこにいるの?』
『誰が私を呼んでいるの?』
私はそう答えた。
その光から白く細い手が出てきた。
「願いを叶えたくはないか?」
こんな所は嫌だ。
私はそれに必死に縋り付いた。
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