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第十三話:過保護すぎる幼なじみ


 菊理たちが準備に追われる中、一方花月達の文化祭は3日後と迫っていた。


 1週間前から文化祭の準備することができ、3日前になると放課後にはクラスで残り花月達のクラスで役割分担して買い物をするグループ、クラスの室内を飾りつけするグループに別れている。


 和風甘味喫茶は日本文化である着物で和菓子やお茶を提供することになった。花月、朝日、真澄、桃華はクラスの中の飾り付けを黙々と作っていた。


「あと3日後なんだね、文化祭」


 花月は嬉しそうに言うと桃華は呆れたように呟いた。


「それ、昨日も言っていなかった?」


「昨日は昨日、今日は今日なの ふふ」


 桃華は呆れたように言われても花月はへこたれなかった。最初は漠然と文化祭があるんだなとぐらい思っていたのだが、他のクラスの人たちのやる気に感化させられて、花月も楽しみになってきたのだ。


「そういえば、菊理ちゃん来れないって連絡が来たんだった」


「え、そうなの」


「うん何か忙しいみたいで…」


 残念そうにいう花月に朝日は相槌をうつ。


「そっか、それは残念だね。何か手渡せるものがあればいいんだけど…喫茶のメニューって生物だし」


「うん、菊理ちゃんが忙しくなくなればまたお茶しに行こうって」


「そうなんだ」


 彼女とゲーム内で会ってから数ヶ月が経過したが仲良くなったものである。


「あ、ビニールテープ買うの忘れていた。あのテープ文房具屋さんしかなかったのよね」


 一人の女子生徒が声をあげたのに花月は気づいた。


「それじゃ、私が買いに行こうか?」


「え、でも」


 花月のいきなりの申し出にどうしたものかと女の子は躊躇う。


「あんた今日は部活じゃなかった?」


 他のクラスメートからの指摘に図星をつかれる。


「う、そうだけど、それじゃ頼んでいいかな?」


「うん!頼まれました!」


 申し訳なさそうに言うクラスの女の子に花月にお願いをした。


「ちょっと買い物に言ってくるね」


「私も一緒に」


 朝日は付き添おうとすると、それに花月は首を横に振った。


「テープだけだから大丈夫だよ、近くの文具屋さんで買えるし」


「そう? それじゃ気をつけてね」


「うん、行ってきます」


 花月はそう言って教室を後にした。朝日はこの後10分、15分とチラチラと教室の入り口とかを見て朝日は一言。


「ちょっと遅すぎじゃないかな?」


 不安そうな朝日の呟きに桃華はそれに気づいてため息をついた。


「前から思っていたんだけど…花月に対してちょっと過保護すぎじゃない?」


「え、まあ、その幼馴染だし」


 桃華のいきなりの質問に朝日はたじろぐ。


「幼馴染でももし一人で行動しないといけない時があったらどうするの?」


「それは…」


 朝日はそんな場合になったときのことを考えた。桃華は朝日の表情を見て驚いた。そして何か触れてはいけないものような気がした。桃華は花月と親しくなって数ヶ月、朝日と花月の過ごしきた十年に比べたら微々たるものである。


 桃華は言いたいことを言うが、言いたくないことは誰にでもある。それを分からないほど無神経ではない。桃華が口を開こうとした矢先だった。


「代永さー」


「え、ああ、うん 大丈夫だよ…私やっぱり心配だから。はなちゃんを手伝いに行ってくるね」


「…うん、わかった」


「お気をつけて、朝日さん」


「うん、行ってきます」


 最後まで桃華と朝日の話が噛み合わずに終わったことを真澄は何も言わなかった。



〇〇




 火宮から話をされてから約束の日が来るまでこんなにも心躍る日があっただろうか。

いや、それはあった。こんなに胸踊る気持ちはあの人以来である。



 我慢のできなくなった彼女はあることを閃いたのだ。『別に私がここにいる必要はあるのか』と。


 退屈を持て余していた牡丹はすぐに行動に移した。側近のものを呼び、朝になるませ誰も来ないように言いつけると従順に聞き入れてくれた。




 ーーそして牡丹は忽然と屋敷から姿を消したのだった。




「さてと。どこに行こうかしら」


 牡丹は人間界に出るとそこは人で溢れていた。人は牡丹を認識していなかった。


「随分と変わったわね」


 牡丹は通りすがりの歩いている女の子の服装に目が入った。




「あれ、いいわね」




〇〇




 夕暮れ時になると学生達が帰宅する、仕事帰りのサラリーマンたちが電車で揺られるころ、花月は一人買い忘れていたものを買うために文房具に行き、目的のものを買う帰り道だった。



「よし、これでいいよね」


 花月は歩いていると子供の元気な笑い声が聞こえた。


「元気だな」


 ふと家族連れのきている人たちを見て花月は気になった。それは若いお父さんとお母さん、子供が砂で山を作っているところだった。


 父親と思われる男性は一生懸命に穴を掘っていて、母親と思われる女性は仲良く砂山を作っていた。その光景を見ると心臓がキュッとなり、胸が締め付けられる気がした。

考える余裕がなかった花月は気づかなかった。


 二人組の男がじっと花月を見ていたことに。



『お父さん、あんなふうに遊んでくれたな…』


 昔を思い出しながらトボトボと歩いていると声をかけられた。


「あのすみません」


「はい?」


 呼びかけれた花月は反射的に振り返ると二人組の男性が視界に入った。花月の容姿を見た瞬間に男達は気色んだ。


「うわ、近くで見てもめちゃ可愛い」


「ほら、やっぱ俺のいった通りだろ?」


 バシンと隣の男を叩いてはしゃいでいる。花月はどうしたものかと声をかけた。


「あの、なんでしょうか?」


「ああ、ごめんね 今暇かな〜?って思って」


「え、あ ひまではないですね」


 花月は戸惑いながら素直に答えると男達はニコニコしながら笑いかけてくる。


「じゃ、それが終わったら俺たちとどっか遊びに行かない」


 グイグイと詰め寄ってくる男達に花月は後ずさる。


「それは学校に帰らないといけないので」


「え、何か買い出しとか頼まれたの、俺たちが持って行ってあげようか」


 花月が困っているのをいいことに男達は言いたい放題である。


「別に大丈夫ですので」


 逃げようとするが男達が花月を逃そうとはしなかった。花月はこの時誰か助けを呼べないかと周りを見ても家族連れと若いお母さんしかいない。


 その時に桃華の言葉を思い出した。





 それはあのゲームに囚われていた中での出来事。


「傷つけないようにすれにはどうすればいいですかって…?」


 桃華は菊理の修行の見る中で花月の身体能力も見ていてくれていた。


「うん、もしう現実の世界でそうなった時に何か役に立たないかと思って」


 桃華は花月の考えをめぐらした。


「そうね、ゲームの世界だから、簡単に攻撃しても肉体的に相手を攻撃することがないからできることだし、まずは相手の動きから目をそらさないことね」


「動き…」


「次にどんな動きをするか、相手を観察して、一定の距離を保つのよ。よほど強行手段を取られない限りは捕まることはないでしょう。まずは実践ね、私を捕まえてみて」


 桃華の承諾に花月は桃華にジリジリと近寄り、そして捕まえようと一日足を踏み出した瞬間に桃華は素早く横へ移動した。


 先ほどまでいた桃華がいたはずの場所には誰もおらず風をきるだけである。


 たった横にズレる動作だけなのに花月は最後まで桃華を捕まえることができなかったのだ。


〇〇


 今がそれを使う時だと花月は直感した。あの時と違って、一対一ではなく一対二ということだが。そうなると、二人の動きを観察する必要があった。


「すみません、用事がありますので通らしてもらえませんか?」


 花月は言葉に二人の男性はおもしろそうに顔を歪めた。


「いいよ、僕たちに捕まらなかったらね」


「おもしろそう、いいね」


 ジリジリと花月に近寄ってきて、男の一人は花月を捕まえようと突っ込んでしまった。昔の私だったらきっと恐怖で硬直していただろう。それよりも怖い思いをしたことがある花月にとっては何も感じなかった。


 花月は捕まる瞬間ギリギリまでに見て跳躍した。男は驚きの声をあげた。捕まえようと思った瞬間に肩透かしを喰らって一瞬動きが鈍ったのだ。


 それにもう一人の男はおかしそうに笑ったのだ。


「ワハハ、何やっているんだ!? お前」


「うるせえ!? じゃあお前もやれよ」


「ああ、いいぜ」


 相槌を打つ男とやけになる男は今度は二人で詰め寄ってきた。花月はこの時油断していたわけではない。桃華であれば圧倒的な身体能力で二人を制圧できていただろうが、花月はそんな覚悟も経験もない。


 なので一人の男に捕まる瞬間に横に移動してその場にもう一人がいるなんて予想ができなかった。

花月は咄嗟に方向転換して足がよろけてしまい、そのまま転倒してしまった。


ばた


『痛〜〜〜』


 久しぶりの痛みに花月は地面にうずくまる。二人組の男性は花月が転倒したのを見て呑気に大丈夫かと声をかけてきたが、口元が笑っているのが見えて、花月は起きあがろうとするが力が入らない。


「僕が手を貸してあげるから、ほら捕まって」


「ごめんね、本気になりすぎちゃった」


 全然心のこもっていない謝意に花月は顔も見たくなくなった。


「一人の娘に向かって、二人は卑怯ではないか」


 鈴を転がしたような可憐な声があたりに響いた。花月は誰だと思い周りを見ると、目を見開いた。


 


 そこには花月と同じような制服を着た少女がいた。



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